2.無情
「なーに浮かばれない顔してるの?」
顔を見上げると、小春と泉が並んでいた。
「正直に言うとお前ら二人の方が、テストで点が取れなかったって顔してるぞ」
そういうと、小春は「あはは……」と愛想笑いにも満たない笑みを返す。図星だったようだ。
「私は、まぁ……いつも通りだと信じたい」
珍しく泉が弱気であった。写真にでも収めたいぐらい珍しいと思う。
活気も消えた校舎内で、いつものように友生会の定例会議は行われた。テスト後というのもあって、少し浮かれ気味だったにもかかわらず、何人かは地獄に落ちたような目をしていたのも事実だ。
「そんなに三年のテストはやばかったのか?」
「そうでもないと思うなぁ……はぁ」
「正直者が馬鹿を見るテストは許せない」
……これ以上彼女たちに聞くのはやめよう。
というか、二人は僕に「浮かばれない顔してる」といった。そんな一目でわかるような顔でもしてるのか。
「どうせ鷲ちゃんと喧嘩でもしたんでしょ?」
泉はほぼ正解だった。しかし、喧嘩なのかどうかも分からなければ、第一原因はわかってるのに、なぜこんな状況に陥ってるのか、僕がわからないのだ。はっきりとした答えは鷲しか持ってない状況だ。だから確実に正解とは言えない。
「半分正解、半分間違いってとこだな」
「け、喧嘩? 鷲ちゃんと、國定君が?」
「喧嘩ってわけじゃないんだがな……。単純に言えばそんなようなもんなんだろうけど、僕にもよくわからないんだよな」
泉が少し見下したような目でこちらを見る。
「わからないって……アホなの?」
「僕だってわかりてぇよ……一方的に関係を切られてるようだからな」
泉は僕を見つめる。
「何が……あったの?」
助け舟のように小春は僕に話を振ってくる。しかし、今の僕にはそれを説明するすべもない。
僕は少し俯く。
「簡単に言えば、というか僕の口から言えるのは、僕は彼女の知ってはいけない秘密を知ったってことかな」
言ってよかったのか。言わなければよかった。言った瞬間に後悔が襲う。でも、この二人ならしっかりと受け止めてくれるだろう。
「へぇ……」
泉は興味なさそうに言う。たぶん興味がないんじゃなくて言い返す言葉がなかったんだと思う。小春は黙ったまま、たぶん次の言葉を考えている。かくいう僕も、下がりだした首は止まらず、次の言葉も出やしなかった。
「僕は、どうすりゃいいんだよ。どうすれば!」
いきなり大声を出してしまい、二人は驚くような表情を見せる。「ごめん」と僕は一言言う。
「まぁ、そのことに関して一番わかるのは言わずもがな國定君なんだから、私たちにできることは一部かもしれないけど、國定君のためなら協力するから」
「とか何とか言っても、どうせやれることなんて私たちにはないわよ。あんたの行動次第で、この先の未来は変わるんだし、私たちは叱咤激励ぐらいしかできないわ」
この二人の言葉は、お互いの性格が表れているようだった。小春は誰にでも協力を惜しまない。口だけじゃない、行動をする。泉は、あまりそういうことはしない。だけど彼女の論だけで、彼女は人を動かす。なかなかにこのコンビはバランスがいいコンビだなぁ、と現実逃避をしていた。
「ま、助言ぐらいはするし、あんたと鷲ちゃんの話は聞いてて楽しいし、何かあったらいつでも言って」
最近、というか話せば話すほど泉のキャラがだんだんとぶれていく。S的なキャラだよな……多分。
「まずは普段通りの関係を築くところからだよ! そこから始まる恋愛ロード! あぁ、胸が高まる……」
小春はいつも通りで安心したよ。
「頑張る、なんてここでつぶやいても何も変わらないしな。行動で見せてやるよ」
「その意気込みだよ!」
5時のチャイムが虚しく響いた。




