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屋上少女  作者: 悠(はるか)
第五章「絆創膏で直せない傷の理由」
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3.参上

「進捗どうですか!?」

 曇天の朝。教室に入るなり僕に向けてそんなことを話すのは、掛川だ。

「進捗って……何の進捗だよ」

「そりゃもう、これよ」

 掛川は僕の右側の机をぽんぽんと叩く。ニッと笑った顔はどことなくまじめに見えた。

「お前は何処まで知ってるんだ?」

「何処までって……うーん。ほとんど知らないってのが正解かな」

「お前は一体何のために生きてるんだよ……」

 掛川がほとんど知らないとなると鷲は結構物事を隠すタイプの人なのだろうか。僕には縁というか、打ち明けられるだけの理由があるということなのだろうか。

「まぁ、お前にはいえないが、何個か秘密は手に入れたぞ」

「なんだ、俺よか結果は出てるじゃん。俺は苦手だなぁ、こういうこと」

 掛川が苦手なのはどういうことなのだろうか? ちょっと理解はできなかった。

「でも、傍から見ればお二人さんはいい感じの二人組みだと思うぜ」

「あんまり教室じゃ絡んでる気はしないけど」

「そうか? まぁ絡みの数は少ないけど、その質が濃いというか……。これは俺だけじゃないぜ、結構クラスでも噂レベルだが広まってるんだぜ。お前と鷲が付き合ってるんじゃないかって」

「そんなことにまでねぇ……」

 僕は彼を凝視する。まっすぐに僕を見る瞳は、かえって凝視した僕に罪悪感を覚えさせた。

 彼の話が本当なら、結構僕と鷲の距離は近づいているという点には喜べる。しかしもしかしたら道に邪魔が入る可能性も出てきたし、まず公に何かするとなると、ちょっと無理も出始める気がする。

「まぁできるだけ俺も善処はするけどさ。すべてはお前にかかってるんだから」

「なぁ、掛川は何でそこまで鷲にこだわるんだ?」

 彼は少し僕から目を背ける。

「なんだろうな。そんな理由なんてとっくに忘れた」

 彼にしてはやけに不明瞭な回答だった。しかし僕はそれ以上首を突っ込む気もなかった。

 鷲は長い付き合いであるはずの掛川にすらほとんど自身を打ち明けてない。掛川は幾度となくそう証言している。多分僕が彼女について知ってることの中で、掛川も既知であるものはかなり少ないといえるはずだ。

「でもまぁすげぇなぁ。失礼だけど最初は國定が誰かを知ろうとなんて思わない、いうなら孤高の狼的なキャラだと思ってたのに、長い間鷲を知ろうと思った俺よりお前のほうが、今にしてみればだけど、彼女のことをよく知ってるんだよな」

「世界は退屈に回ってるだけじゃないからな。時には想像もしないようなこともおきることだってあるんだからな」

「は?」

「ま、人知を超えたことは、身近にあるのかもな」

 掛川は僕の言葉にぽかんとしている。まぁ当たり前だろうな。

「二人とも何話してるの?」

 いきなり声をかけられて、僕はもちろん、掛川もやけにびっくりしていた。

「え、あ、あぁ。多分、昨日の夢の話だ」

「お前自分で話してるのに多分って頭おかしいのか?」

 話しかけたのは鷲だった。まぁ、掛川が鷲の席の机を尻に敷いていたから鷲も多分話しかけたのだろう。

「あぁ、悪い、席どくよ」

「ありがとう」

 僕の知ってる鷲とは違う、物静かで棘のある薔薇が一輪、僕の隣に座った。

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