2.屋上
僕は初めて雨の降る屋上で傘をささずにいられた。にゃんこと一緒に、多分制御室のような一応屋根のあるところにいるからだ。
「ひまだにゃ」
「そうだな」
もう慣れ親しんだ関係というか、三度目の会話とは思えないほど自然で、それで友人のような感覚の会話が続く。
「にゃんこは暇なときとか何やってたんだ今まで?」
「うーんとネ。雨宿りしてる猫と戯れてることが多かったかニャ?」
「やっぱりというか猫は好きなのか」
「そりゃそうニャ! だてにこの口調やってニャいからニャ」
……うざったいからやめて欲しいんだが。
「キャラ付けならもういいからそのふざけた口調をやめてくれ……」
「ふざけたとはニャんニャのニャ!」
はぁ、と僕は一息ため息を吐く。
「僕と絡むのと猫と戯れるのどっちがいいんだ?」
「そりゃもちろん悠馬と絡んでるほうが楽しいに決まってるニャ」
やっぱりこいつは鷲の姿かたちをしてるのが一番の問題だよな。聞いた自分が恥ずかしい。
「うれしいこったわ」
「それよりさぁ」
いきなりにゃんこは話を変えてきた。
「『症状』の意味は分かったかニャ?」
「あぁ、やっと。なんとなくだけどな」
「なら、貴方の存在も必要だって、わかったでしょ?」
「時を止めて、彼女を救うってことか……?」
「正解……ニャ」
自ら忘れるキャラ付けならもはや付ける意味ってなんですかね。
「なぁ、にゃんこはあいつのことに関してどんなこと知ってるんだ?」
「唐突に何ニャ? 全部知ってると言いたいけどニャ、残念ながら同じ体なのにあんまり知ってることは無いニャ。実は」
分身だかなんだかとか言ってた気もしたが、特に接点は無いのか、こいつと鷲には。
「でも彼女の親が嫌いだって言う思いは私に伝わるぐらい強い。自由になりたい、普通の暮らしがしたい、って言う思いは私に伝わる……ニャ」
「そうか」
予想通りだった、という点で僕の中では納得のいく回答だったが「普通の暮らしがしたい」という点が僕の中では引っかかった。じゃあ今は普通の暮らしじゃないというのか。学校生活では、まぁ確かにこの屋上に来ること自体は普通ではないが、そんな程度の問題じゃないだろう。学校生活以外では普通じゃないということか?
「なんか険しい表情してるネ。初めて深く知ろうと思った人だもんネ。しょうがニャいニャー」
にゃんこは僕が黙ったのがいやなのか煽りだしてくる。とりあえず無視して考えを張り巡らす。
僕の結論のひとつの、彼女は一人でご飯を食べているという点から、多分彼女は親と接する期間は短いということなのだろう。彼女の想像の普通の生活はなんなのか知らないが、普通に親と接して、親が作ったご飯を美味しく食べる生活ということなのだろうか。情報が少ない中での結論だが、正解は近いのだろう。もしくは、これよりもっと深い。
「ねぇ悠馬ぁ、からんでよぉ」
「僕達はバカップルか」
ツッコミの如く、頭をぺチンと叩く。
「やっぱり悠馬はじっくり考える姿よりも、こうやって誰かと絡んでるほうがより自然な姿だニャ」
彼女は何を言っているのか。到底僕には理解できなかった。




