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屋上少女  作者: 悠(はるか)
第五章「絆創膏で直せない傷の理由」
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1.白状

 ある雨の日の昼下がり。昼休みを珍しく、いや初めて新聞屋と二人っきりで飯を食べていた。というのも、新聞屋が二人でご飯を食べたいといってきたからだ。何を聞かれるか、僕はそればっかりが心配で学食のイートインスペースに向かう足取りが重くなる。

 学食は基本的に近くのテラスや教室などへ持っていって食べるような軽食が多く売られ、テイクアウトのように食べられることが多いので、学食に付属している食事用のテーブルスペースは人が少なく、昼飯時に先生が座っているか、テスト前に勉強で使われることぐらいでしか使われない。そのため人々はよくここをイートインスペースといっている。逆に言えば、人が少ないので話をするときとかには使われることも多い。

「来て貰ったのは悪いから、飲み物ぐらいなら奢るよ」

 挨拶もなしに新聞屋は僕に話しかける。

「じゃあアイスティー頼む。どうせ買ってくるならついでにチーズバーガーとハンバーガー頼む。お釣りはお前にやるよ」

 僕は250円を新聞屋に渡す。おつりは10円になるはずだ。

 新聞屋が向かっているのは主にテイクアウトして食べられる軽食やカップラーメン、アイスやお菓子、それに文房具なども売っている。食べ物は安いが、文房具は専門外なのか、通常よりも高い。昼時になれば非常に混む。

 もうひとつラーメン、うどん、定食などを頼むスペースもあり、ここも割りと繁盛するが、なぜかこの通称イートインスペースで食べる人はいない。学食のちょうど上にあるゼミ室で食べられることが多い。ここで食べれば器もすぐに返せるし便利だとは思うのだが。この学校七不思議のひとつである。

「お待たせ」

 僕の頼んだ二つのものと紅茶のペットボトル。そして自分の分の食べ物だろうか、カップめんをひとつ持っている。

「ありがとう」

 僕は受け取り、早速ペットボトルのふたを開ける。

「で、話ってなんだよ」

「聞きたいことがあってさ」

 逆に新聞屋は聞きたいことがない人間を呼び出すのだろうか。いや、絶対にしないだろう。

「私の情報網から仕込んだんだけど、最近鷲ちゃんとよく商店街に出没してるみたいだね。私が言ったときは鷲ちゃんは確か友生会? の会長さんと一緒に歩いてたけど」

 僕はハンバーガーを食べながら彼女の話を聞く。手作り感のあるこのハンバーガーはとても美味しい。

「で、何が聞きたい」

「まぁ、まずはそれが本当かうそか。本当だったら何のためかってところかな」

「お前の場合だからそんなことは書かないだろうが、一応いっておこう。べつに付き合ってるわけじゃないぞ。で、商店街でたびたび目撃したのは、幻覚でも蜃気楼でもなく、真実だな」

「じゃあなんで?」

「僕は料理下手でさ。で、多分望月も知ってると思うけど、僕の親は一ヶ月海外旅行いっててさ。これを機に、僕も料理をしようと思ったけどさ、料理教室とか通う気はないし身近な人で料理できる人いないかなって思ったら、鷲が自分からやるって言ってくれて。で、商店街へはそれの材料集めに一緒に行った時だ。多分だが、望月が見た小春と鷲の姿もそれに関係する」

「へぇ。そんなことしてたんですか。で、何処で料理教室やってるんですか」

「僕の家だ」

「……ほう?」

 きらりと輝いた目が僕を捕らえる。今までになかった何か恐怖を感じた。

「これはまぁ彼女の提案だが……といい始めると話が長くなるな。望月は口が堅いか?」

「はい!」

「嘘だな」

「えぇ!?」

 僕はまたハンバーガーを一口かじる。

「ほかの人だったらまだしも、國定君が誰にも喋るなって言ったら誰にも喋りませんよ」

「なんでだ?」

「國定君自体が大スクープなので逃がしたくないからです!」

 さらっと本音をいわれた気がする。そうか、僕が大スクープか。

「鷲はさ、多分だが親と上手くいってないと思う。それで、奴はいつも一人でご飯を食べてると僕は推測してるんだ。彼女と色々話した中での推測だ。彼女は教えることが好きだといった。それはいいだろう。だからといって僕の家で作るのはよくわからない、が、彼女は僕の家で作ったものを一緒に食べたんだよ」

「ほう……」

 新聞屋はいつもとは違い、僕の話に真剣に耳を傾け、メモ帳などをいじっていない。

「彼女にとっては一人で食べるご飯より、誰かと食べるご飯のほうがいいんだろうな」

「なるほど。最後に聞いておきますが、本当ですよね?」

「あぁ」

 僕はチーズバーガーをかじり、紅茶を一気に飲んだ。なぜかのどが渇いた。

「私も、手伝いたいですね」

「は?」

 彼女は突然つぶやいた。

「國定君はきっと、その性格ですしその親と仲の悪い原因とか、探ってるんですよね」

「僕の周りは心が読める奴しかいないのか!」 

 掛川といい、こいつといい、侮れない。

「その手助けをしますよ。もちろんお代はいりません」

「そうか。それは助かるな。でもただでとはこっちも悪いからな。……文化祭までに何かネタを揚げたら、僕はあのメイド姿を文化祭で披露しよう」

「!? 断然モえてきました」

 モえるは、燃えるか、萌えるか。まぁいいや。熱が入ったのは間違いないだろう。

 心強い味方が手に入り、僕は一歩前進した気がした。何か失った気もするけど。

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