8.感情
「ねぇ小春のことどう思ってるの」
そう話しかけられたのは友生会が終わり、僕も流れに乗じて帰ろうと思っていた矢先だった。
「逆にどう見える?」
僕に話しかけたのは意外なことに泉だった。こういう話には興味がないと思っていたのだが。
「そうね、恋人同士……には見えないわねまず」
一旦口を止めたところで僕はなぜかヒヤッとした。
「なら何で聞いた?」
彼女は少しにやっと口元を伸ばす。
「いや、私に接してるみたいな感じと、小春と接してるときではちょっと態度が違うからさ」
僕も彼女のように口をニッと伸ばす。
「よく見てるな」
「か、勘違いしないでよね」
「絶対にしないし、キモいぞ。なれないことやってたら」
「あぁら、ばれちゃった。今ので何か反応したら面白かったのに」
「大丈夫、似たような奴が僕のクラスにもいるから」
望月の顔を思い浮かべながら。あまり喋ってはいないのだが、毎日どこかで望月の顔を思い出している気がする。
「まぁ、でもその考えは間違ってないかな。僕はあいつに泉が想像してるよりも多大な尊敬をしてるからな」
「尊敬ね。小春に友情は芽生えても尊敬が芽生えるとは思わないわ」
僕は笑った。
「まぁ普通はそう考えるだろうが、お前も事故ってみればわかるさ。誰にでも平等に心配をかけるなんて常人にはできねぇよ。常に周りを見て、悟って、考えて行動してるんだから」
「事故らなくてもわかるわよそんなの」
ちょっとだけ悲しそうな目を一瞬した。
「ま、だから出会って二ヶ月のお前とは態度が違うというわけだ」
「悲しいわね、私はあなたの存在は一年も前に知っていたのに」
「僕のこと尊敬してるか?」
「いえ? 全然。むしろ下に見てるわね」
「尊敬されてても虫唾が走るだけだから、別に構いはしないが」
二人とも無言になる。見渡せば僕たち以外の影はなく、赤やけも伸びに伸びた友生会のせいで非常に濃くなっている。
「そうだ、泉の家って何処なんだ?」
「何? 夜にでも襲いに来るつもり?」
「襲うって意味は殺しにかかるって方の意味でだが正解だ」
「なら教えないほうがいいわね」
お互いが似たような性格なので、むしろ話が進む。望月はちょっと違うが、似たもの同士は話しやすいのかもしれない。真逆同士も同様かもしれないが。
「でも、あなたと話してると妙に心地いいのよね」
「急に告白か? こまるなぁ」
考え事の最中だったので、ちょっとしゃべるまで間が空いてしまった。
「そんなこといったら、せっかくの褒め言葉が台無しだわね」
「今のが褒め言葉だったのか」
「悪かったわね、褒め言葉に聞こえなくて」
前言撤回。似たもの同士はお互いに食いかかるから話が進んでいるように見えるだけだ。
「まぁ、ほら似たもの同士だから話も合うってことじゃないか?」
「あなたと似たものなんて、なかなか貴方も貶す言葉がうまいわね」
「そうか、褒め言葉だったんだがな?」
僕がこういう風に自分を上げているときは、大体こういうふざけた時しかない。自分が特別すごい人間じゃないと思っているんだ。だから努力しているんだ、誰にも負けないように。
「でも確かに似たもの同士なのかもね。でも不思議だわね、磁石だって同じもの同士反発するのにね。人間はこうもくっついてる」
「目に見えない反発は起こしてるんじゃないか? 嫉妬とか」
「貴方いいこと言うわね」
彼女は心のそこから驚いた、といわんばかりに目を見張る。
「少しはわかってくれたか?」
「自惚れんじゃないわよ」
外の景色は黒くなるに連れ、僕たちの話は盛り上がっていた。




