7.素性
「なぁひとつ聞くけどさ、何でしれっと僕の家で飯を食べようとしてるんだ?」
さも当然のごとく僕の前に座る彼女。
「え? 駄目?」
「いや別に強くだめとは言えないが、家かえって自分の飯作ったほうがいろんな意味でよくないか?」
言った後で少し後悔した。彼女は多分いつも一人でご飯食べてるんだと僕は予想している。多分間違いではないはずだ。
「えっと、その。迷惑だったら帰りますけど……」
「悪い、迷惑じゃない」
彼女は少し笑顔になる。このときの笑顔は何よりも嬉しそうなことが、僕の中での疑問点のひとつである。
食卓に着き、僕はご飯をよそう。僕の初めて作った料理とともに、商店街でついでに買ってきたコロッケも机の上に並んでいる。
「初めて作った料理だから、なんか食べるだけなのに緊張するな」
「どんなものでも最初はそうだよ」
僕は恐る恐る箸でキャベツとお肉を共につかむ。一呼吸おいて、えいやと口に入れる。
「これが焼肉のたれの力か……」
「こういうたれはお肉本来のこくとかをしっかりと生かすように考えて作ってあるからね。でも、それでもこれを作ったのは國定君なんだよ! こんな美味しいものを作ったんだよ!」
「そっか」
僕は思わず笑った。恥ずかしさとうれしさと。彼女は励ますように、称えるように美味しいといってくれる。うれしかったのだ。
「どうでもいいけどさ、僕も変わったな」
「というと」
僕はふっと息を吐くように嘲笑する。
「いやさ、数年前、中学校のときは女子と絡みたくないというか、女子の存在自体が嫌いだったんだ。もちろん悪気はない人たちだし、そんな僕のことを心のそこから心配してくれた人も一人はいたかもしれない」
「あぁ、女子と絡みたくないこともあったって言ってたね」
「工業系のこの学校なら女子は少ないだろうって入ったんだ。高専は遠かったし、この街で学びたかったから。最初は女子が多くて驚いたんだ。工業系なのにね」
「確かに、この学校はいっぱい女の子がいるね。私もそこを基準にして入ったようなものだけど」
「でさ、気づいたらいつものように教室の端っこにいた。そこに手を伸ばしたのが小春だ。きっかけはなんだっけな、よく覚えてないけど。小春はみんな同じように平等に扱っていたんだ。そして取り巻きの中でいつの間にか僕もクラスの輪に入れてたんだ。あいつは馬鹿みたいに、いや馬鹿だけど、誰も持ってない何かを持ってるよな」
鷲はコロッケをかじりながら何かを考えているように目をどこかへとやっていた。
「だから、あいつにはああだこうだと言ってるけど、みんなついてきてるし、僕もあいつに協力できればしたいと思ってるんだ」
「だから友生会に入ったの?」
「あぁそうだ。もしお前……鷲から誘われてたら絶対にいってなかったな。今だったら考える程度のことはするかもしれないけど」
「……少しは國定君の考えの中で私はプラスになったって考えるわ」
「料理を教えてもらってるお礼ぐらいに考えてくれ」
僕はいつもの様に冷たく笑う。彼女もつられたのか笑っていた。
食べ終わった皿を一人で洗う。自然と鼻歌がこぼれていたことは、一人家にいる自分にもわからなかった。




