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屋上少女  作者: 悠(はるか)
第四章「深まる傷、消えない傷、見えない傷」
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1.雨情

 屋上で傘をさす。馬鹿らしい行動だと自分で思っている。しかししょうがないのだ。

「暇ニャぁ……」

 一ヶ月程度あっていなかったにゃんこは、代わり映えもなくただつぶやく。鷲と同じ姿をしているのが非常にむかつくのだが。

「だったら鷲にでも戻れ」

「それも面倒ニャ。國定くんとぉ、一緒にぃ、いたいしぃ」

「……語尾忘れてる上にうぜぇなおい」

「あ、語尾はキャラ付けニャ」

 キャラ付けとか言っちゃった。いや、ただでさえキャラが強いのに、そのキャラ付けはもはやコーンポタージュの上にかけられるイタリアンパセリだよ。見えないことはないけどほとんど存在感がねぇよ。

「なんでちょっと得意げな顔してるニャ?」

「うまい言い回しを思いついたからな。おしえないが」

 雨は嫌いだった。活気をなくした商店街、熱気をなくした校庭。今はそこに正気をなくした鷲が追加された。

「そうだ、どうせ暇ニャんだから、ちょっと鷲ちゃんのこと教えちゃうよぉ」

「語尾はもうどうでもいいんだな」

 僕は少々面倒でござる。

「鷲ちゃんが厄病神だって理由わかったかニャ?」

「わかんない」

「そっか……長い間"症状が"出てないのニャ」

「"症状"?」

 妙に引っかかった。鷲が行っていた"病気"とにゃんこの言っている"症状"のイントネーションがどうも違うようには思えなくて。

「そう、彼女が知らないうちに彼女には災害が降りかかる。それが、一緒にいる人にも降りかかる。だから、私は悠馬にこの子に近づくなっていったんだ……ニャ」

 最後……完璧に語尾忘れてたな。まぁいいや、触れないでおいてやろう。

「でも、僕は君のテストに無事合格したわけだ」

「テストじゃニャいんだがニャ……まぁ、いうニャればそういうことニャ。悠馬はほかの人とは違う力も、違う感性も持っている。だから、私も悠馬ニャら推薦できるニャ」

 もうこいつの語尾のことについて触れるのはよしておこう。突っ込むだけ疲れる。

 どこかから吹奏楽の音が聞こえるが、それよりも雨の音が強い。かすれかすれ聞こえる吹奏楽の音色からは、どんな曲かすらわからなかった。

「今年の夏は暑いニャ」

「今日は雨降ってるからそこまで暑くないけどな」

「私は雨のときにしか出てこれニャいんだから、雨のときの気温しかわからニャいニャ」

「雪の日はどうなんだ?」

「寒いからでてこニャいニャ」

「……風邪とか引かないんじゃないのか?」

「寒がりニャの」

 そういって鷲の顔をしたニャンコは僕に擦り寄ってくる。鷲の顔をしたっていうのが非常に重要な点である。

「……さっき暑いって言ってただろうが」

 思いっきり蹴り飛ばす。「グフォ」っと低い声とともに地べたに這いつくばる。勢いあまって強くけってしまった。中身はにゃんこでも外見は鷲なのだ。

「……悪い」

「謝るニャら蹴るニャ!」

「いや、鷲に謝った」

「……私への謝罪は」

「微塵もニャい」

「キャラ被せかニャ……」

「好き好んでこんなキャラ作ってるお前もすげぇな」

「……やめてよ」

 いじめてる気はなかったのだが、彼女が段々としゅんとしてしまった。雨にぬれて段々と下を向く葉っぱみたいに、首が下がっていく。多分、相当このキャラ恥ずかしいのだろうか。少し悪いことしてしまったか? いや恥ずかしいなら第一やらないだろう。

「鷲もわからないが、それ以上にお前もわからないな」

「何を考えてるかわからないミステリアスな少女なんて素敵ニャ?」

 ちょっと悪いことしたとか、反省したことをひどく後悔した。


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