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屋上少女  作者: 悠(はるか)
第三章「動き出した歯車、止まる歯車、壊れた歯車」
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5.日常

 平和、日常。そんな言葉を考えていた。平和とは何か。笑いあって、泣きあって、お互いが好きであって時に喧嘩して、仲直りして。日常とは何か。みんなとくだらないこと話して、時にはふざけて、それでも変わらない同じような川の流れに沿って。

 今の僕の姿を見て、だれが何を思うか。小春ですら多分救いの手を出してくれないだろう。

 ざわざわとざわつく校庭。僕みたいなネタ枠はいるが、僕以上に注目を浴びている人はいないだろう。

 頭についているカチューシャはホワイトブリムと呼ばれるらしい。しかし僕にとってはどちらかというとかつらというかウィッグというか、肩甲骨あたりまで伸びた髪の毛のほうが気持ち悪い。

 靴は走りやすいようにスニーカーだが、初めて履いたニーソックス。ニーソというよりかはスポーツの時につけるサポーター的な役目を果たしている気もする。そこまできつくはないが。

 服は走りやすいようにミニスカートだ。中にはスパッツも履き、防御態勢はばっちりだ。ふわふわのフリルがついた、どちらかというか秋葉あたりで流行っている方のメイド服を着ている。

 そして、今日無理やり着けられたのは、ネコミミだ。もう、なんだろうか。

 今までのおさらいをしてみよう。頭にはネコミミとヘッドドレス、服は電波系のメイド服、しかもミニスカ。靴はスニーカーだが、ニーソ付。そして髪の毛はもともとの僕の髪の1.5倍以上長くなっている。そう、僕は、國定悠馬は、メイドコスプレ、しかもどぎついのを強いられているんだ。

 事の始まりは、クラスマッチのリレー選手決めだった。

「リレー選手はとりあえずクラスで一番早いやつだろ」

「そうなると、市川か」

「まぁ、体育で測ったのをそのまま使えばいいだろ」

 体育での体力テスト、50mの記録測定を行った。そう、僕は6.1秒とかいう好記録をだし、なんかそいやそいやとクラスのリレー代表へとなってしまった。そこまではいい、そう、別に困ることなど一つもない。

「どうせなら、コスプレしてもらうか」

 高校生の一時のノリ……そう考えていた僕が甘かった。無駄に結束力が高いのか、あらよあらよとメイド國定が出来上がってしまった。僕の反論が聞き入れられなかったのは、この状況に陥ってることが何よりの証拠だろ。

 スカートというのはここまでスースーするのか。今日は少し風がある。ミニスカートだが、風がミニスカートの中に吹き込むような感じがある。非常に気持ち悪いのだ。

「おい、リレーに女子が出てるぞ?」

「しかも完成度高いメイドだなおい」

 風に乗って聞こえてきた言葉だ。僕のことを女だと思っている人がいるらしい。そこで泉と初めて話した時のことを思い出した。

「最初は女だと思った」

 彼女はそんな風なことを言っていた。なるほど、つまりもう僕は女に見える人も多いわけだ。……もうどうにでもなっちまえ。

「國定ガンバー」

「お前なら大丈夫だ」

 笑いながら応援されても、熱意が全然伝わってこないのだ。

 ちなみにリレーの走順はくじ引きで決まる。僕は運がいいのか悪いのかアンカーである。そして、あと一周したら僕の出番である。アンカーだけ少し走る距離が長いので、すなわちこの姿がさらされる時間が長いのである。なんというくじ運。

 向こうから僕にバトンを渡す人が走るのが見える。身構える僕は、外から見たら非常に滑稽であろう。現在の順位は3位だ。しかし四チームが横一線と言っていいほどの接戦だ。もう一チームは無駄に大きく、蒸し暑そうな着ぐるみを着ているので、かなりと言っていいほど遅れてる。

 僕は前へと少し走り出す。その間に横の二人が先に走り出した。そしてバトンを受ける。そこからスタートダッシュを思いっきりかけ、一気に最高速へと加速する。この感覚は50m走の時に掴んだ。自己最高タイムレベルのスピードでコーナーを抜ける。もう1位2位のチームは目前である。恰好が格好だが、特段走りづらいわけではない。僕は二人を抜く勢いで直線を抜ける。

 クラスマッチに関する新聞の見出しは『激走、謎の美少女メイド逆転勝利!!』で飾られることになったのは言うまでもない。


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