4.満場
週に一回のホームルーム。今回も先生がクラスのことについて話しているようだ。
「確か去年は一人づつにしたが、大変だって意見も聞いたから今年は二人づつにするか、日直」
どうやら日直の話のようだ。一年も前のことなので特にやることを覚えてないし、先生が違えばやることも多少なれど変わるだろう。
「名簿番号にするか……っとそこで話してる森本と渡辺にやってもらおう、明日からな」
二つの不満と、多数の笑い声が上がる。
「そうだな、お前ら隣同士だし、隣で当番やるか。後ろのほうからだんだんと前へ進んでく感じで。明日までにやることまとめておくから、しっかり日直の仕事するんだぞー」
頭が段々と眠くなり、うとうとしていたのでほとんど先生の話を聞いていなかった。三回あったホームルームはすべてこうだ。
「っとこれ以外に決めることは……前回決めちゃったし時間余ったな。帰るか」
帰りたい、僕の心はそうつぶやいていた。しかし誰かが
「どうせなら綺秋祭でやること決めようぜ」
と言ってしまったので、また長引いてしまった。というか、先々週だか先週だか、僕と鷲は実行委員会に選ばれてしまった。
「そうだな、実行委員は……っと、國定と鷲か。二人前へ出て司会進行してくれないか? このことに関しては俺が口出しすることはないようだし」
なんだか適当な先生だなぁ……。というかどうせ面倒くさいだけなんだろうけど。表情で文句を言いながら二人で前に出る。
「うぅん……」
何を言おうか迷っているところ、
「じゃっ、綺秋祭で何やるかから決めたいと思います」
と元気はつらつ娘な感じで、と言ってもよくわからないが、鷲が話し始めた。僕は僕が見たことのない彼女に驚き、かすかに引いていた。割と陰気と言っては悪いが、あまりこういうことには乗り気であるとは思っていなかったためである。クラスは多少ざわついているが、彼女がこういうことについての言葉は聞こえてこないあたり、クラスではこんな調子なのだろう。二、三週間いるが、初めて知ったことだ。
「ここはもうコスプレ喫茶一択だろ!」
そんな発言が聞こえてきて、なんか心がヒヤッとした。
「いや食べ物はさすがに扱えねぇよ」
僕が心の底から反論する。少なくとも二年前は扱えなかった。
「そうか……残念だ」
今発言したやつを仮に少年Bとすると、そいつは言葉とは裏腹に違う策を考えている、いわゆる悪い顔をしている。
「ならば、コスプレ撮影会にしよう」
「…………」
人というのは人知の中でしか反論できない。自分の持っている知識の中でしか反論ができないのだ。僕は今彼の言葉に反論ができない。これは僕の常識を超えたということだ。敗北だ。ただ、なぜか彼が勝ち誇ってる顔をしているのが非常にむかつくんだ。なぜだろう。
「それはねぇ……」
「いいんじゃね?」
賛同の声が聞こえたのは無視したい。が、なぜか蔓延した。特に男子。いやいやコスプレ=女子とは限らないんですよ。男子の可能性もあるんですよ。むしろ僕がこれに賛同したお前ら全員を後悔させるコスプレをさせてやろうか? もしこれが決まったらだけど。
隣の鷲と目を見合わせる。お互いがアイコンタクトで何かがわかるほど意思疎通が図れるような仲には進展していないが、なぜかお互いの言いたいことが瞬時でわかる、そんな目をしていた。僕も、彼女も。
「いやーそれは面白そうだなぁ」
女子の中にも異端児がいるが、その中の一人が望月である。今の文章を英語にすれば"Mochizuki is fool"といったところだ。
「ほ、ほかに意見は……」
ダメ元で聞いてみた。
「逆にあると思う?」
掛川から至極当然のご指導を受けた。
「せ、先生はこれで大丈夫だと思いますかね?」
ダメ元で聞いてみた。
「あ、クラスマッチのチーム決めなきゃ」
もはや聞いてすらいなかった。
「……ふはははは」
クラス全員が僕をみて頭に!?を浮かべていた。
「ならば、これでいいわな。ほとんどが賛成だし」
僕は人差し指を立てる。
「一つだけ言おう。絶対後悔するなよ?」
鷲だけが苦笑いをしてくれた。




