3.手錠
帰る途中の商店街で、ナンパを失敗していた掛川を見た。女の子二人グループに話しかけて、近くのチェーンファストフード店でお茶でもしようという魂胆の話を吹っかけたのだろう。
「よう、ガールハンティングは今日も不成功ですか」
毎度思うが、こいつは多分相手の心理を表情の変化一つ一つに着目して、そこから完全解答を導き出している。なので、こういうことに関しては得意というか、割とうまく行くとは僕は思ってるんだが。
「今日の商店街も賑わってるなぁ」
「話をすり替えるんじゃねぇよ」
この商店街は、鄙びたこの町の唯一の活気である。大体こういう話だと、近くに大型ショッピングモールができ、だんだんとこの商店街のシャッターが降りていく、そんな感じのことが小説や漫画の中だと多いと思うが、全然そういうことはない。むしろ昨日より今日、今日より明日と活気が満ちていくように見える。
「もうお前でいいからそこでお茶してかね、おごりでいいからさ」
「それはもうボーイハンティングだ」
「お前を女だと思う。多分その手の恰好したらまともに女だと間違えると思う、俺はそんな自信がある。ポテト賭けよう」
「無駄な自身はいらねぇよ……まぁ、おごってもらえるなら少しぐらいは付き合うわ」
僕はストレートティーと100円のポテトを頼み二人席へと座る。店の中は多少帰り際の高校生たちでにぎわっているが、見たことあるような人もちらほらといるので大半が鹿波校生だろう。この近くにはほとんど学校はないし。
「春なのにあちぃなぁ……」
「ここの気候は不思議だから。8月のお盆の前後は途端に秋ぐらい涼しくなるし」
「だな、われながら変な気候のところに住んでるな」
「そういや、最近お前いろんな奴といるところ見るの多くなったな」
途端に話を変えてきた掛川。僕はストレートティーを少し口に含むと、冷えた口から言葉を返した。
「なんだ、僕がいなくてお前も寂しいか」
「おう、そうだな」
「ま、大方テストで一位を取ったことが原因だろうな。僕もあんまりコミュニケーション取れるような輩じゃないし、あんまりばんばん話しかけないでほしいなぁ……2位の鷲でもいいとは思うけど」
「せっかく流れに乗ったのにぶちぎるなよ……。でもまぁ、所詮一位と二位じゃ、月とすっぽんか」
割といいことを言った後の掛川は、なぜか得意げである。
「でも鷲は鷲で、結構話してるんだぜ。女子同志とかでさ。でも決まってどこかへ遊びに行く話になるとどっか行っちゃうんだよな」
「遊びに行けない事情でもあるのかな?」
「大方そう考えていいと思うぞ」
僕は軽く考える。一つ引っかかりのある部分を挙げるとしたら、両親との関係か。ただ、そこへ深く突っ込むわけにはいかないだろう。何しろ部活のことにすら間接的な言葉で、あの態度である。まともに聞けるわけがない。
「にしても、掛川はよく見てるな。探偵でもしてみれば意外に儲かるんじゃないか?」
「こそこそしたことはあんまり好きじゃないんだよなぁ」
「まぁ、確かに」
もったいないとは思うが。
「最近、お前と鷲はどうよ」
「どうもこうも、仲こそよくなっても、それでも全然目的は達成されてないんだよな」
「仲良くなるだけでもいいんじゃないかな。俺は結構アタックしたけど、全然仲良くなってないし」
「それは結構アタックしたから仲良くなってないんじゃないのか?」
「それを言ったら俺の取り柄がすべて報われなくなるわ……」
掛川は段々と小さくなっていく。こいつは萎縮しすぎてもう全然大きく感じなくなってきた。
「お前がうらやましいよ」
「うらやましがられても困るわ」
出会いが出会いであるもの。という言葉は飲み込んだ。




