表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
屋上少女  作者: 悠(はるか)
第二章「黄昏の雨は死神を濡らして」
25/90

10.無情

 今日は珍しく過去の夢を見た。小学一年生。あの時だ。初めて時が止まった時だ。何がきっかけだったのだろうか、全然記憶にはない。ただ、その時のことをたびたび思い出す。

 幼心にあの時は何を感じたのか。今の僕にとってはもうわからない疑問だ。

 あの時は、初めての都会だった。車がいっぱい走っていて、ビルも高くて。何もかもが新鮮だった。車の流れ、見ているだけですごく楽しかった。今まで見たこともない景色だった。そう覚えている。

 その流れが一瞬にして止まる。何の前触れもなく止まる。もちろん何が起きたなんてわかるはずもなかった。あの時の僕は、とりあえず周りを見回したことを覚えている。人の流れも、時の流れも、すべてが止まっている。その中で自由に動けた。その時の高揚感は、小さな僕には計り知れないものだっただろう。そして、そこにいた。車と女性。ハンドルを切り間違えたのか、滑ったのか、何かよくはわからないが歩道へ乗り上げた車の姿。そして、その目の前にいる女性。

 子供ながら考えた僕は、その女性を車の前から頑張って動かした。安全なところ、何分かかっただろうか。動かし切り、彼女に危険はもうなくなった。そう思った瞬間、人が、時が、車が動き出した。彼女は目を瞑り、ずっと動かないで、ただこの世の終わりを待っていたのだろう。

「お姉さん? 大丈夫?」

 僕に声をかけられたその女性は、ゆっくりと目を開けた。アスファルトまみれの地面の上、彼女の目は僕をとらえた。ゆらりゆらり、現生と冥界をさまよっている。生気のない口はゆっくりと開いた。ゆらりゆらり、感謝と驚きをさまよっている。

「じゃあね」

 小さな僕は彼女が何もしなかったことに怒りを感じたか、つまらなさを感じたか、その場をすぐに離れてしまった。

 そのあとの女性は知らない。

 一年か、半年か。ある一定のスパンで時が止まった。もう、慣れてしまったのかもしれない。実際毎回毎回緊張こそするもの、慣れもあるというか。人間、、慣れって怖いものだ。

 しかし、昨日の屋上と、鷲を助けた屋上とスパンも、目的も違う。一週間もない間に二回。しかも二回目の目的は僕を助ける事――最終的には違うことだったのかもしれない。

 考えても無駄だ、そう考え、僕はタイムトリップの魔法を実行した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ