10.無情
今日は珍しく過去の夢を見た。小学一年生。あの時だ。初めて時が止まった時だ。何がきっかけだったのだろうか、全然記憶にはない。ただ、その時のことをたびたび思い出す。
幼心にあの時は何を感じたのか。今の僕にとってはもうわからない疑問だ。
あの時は、初めての都会だった。車がいっぱい走っていて、ビルも高くて。何もかもが新鮮だった。車の流れ、見ているだけですごく楽しかった。今まで見たこともない景色だった。そう覚えている。
その流れが一瞬にして止まる。何の前触れもなく止まる。もちろん何が起きたなんてわかるはずもなかった。あの時の僕は、とりあえず周りを見回したことを覚えている。人の流れも、時の流れも、すべてが止まっている。その中で自由に動けた。その時の高揚感は、小さな僕には計り知れないものだっただろう。そして、そこにいた。車と女性。ハンドルを切り間違えたのか、滑ったのか、何かよくはわからないが歩道へ乗り上げた車の姿。そして、その目の前にいる女性。
子供ながら考えた僕は、その女性を車の前から頑張って動かした。安全なところ、何分かかっただろうか。動かし切り、彼女に危険はもうなくなった。そう思った瞬間、人が、時が、車が動き出した。彼女は目を瞑り、ずっと動かないで、ただこの世の終わりを待っていたのだろう。
「お姉さん? 大丈夫?」
僕に声をかけられたその女性は、ゆっくりと目を開けた。アスファルトまみれの地面の上、彼女の目は僕をとらえた。ゆらりゆらり、現生と冥界をさまよっている。生気のない口はゆっくりと開いた。ゆらりゆらり、感謝と驚きをさまよっている。
「じゃあね」
小さな僕は彼女が何もしなかったことに怒りを感じたか、つまらなさを感じたか、その場をすぐに離れてしまった。
そのあとの女性は知らない。
一年か、半年か。ある一定のスパンで時が止まった。もう、慣れてしまったのかもしれない。実際毎回毎回緊張こそするもの、慣れもあるというか。人間、、慣れって怖いものだ。
しかし、昨日の屋上と、鷲を助けた屋上とスパンも、目的も違う。一週間もない間に二回。しかも二回目の目的は僕を助ける事――最終的には違うことだったのかもしれない。
考えても無駄だ、そう考え、僕はタイムトリップの魔法を実行した。




