8.氷上
先ほどから約40分。3時を少し回るところだった。また同じ、家のチャイムが鳴った。無機質に響くチャイムの音は今度は小春だろうか、それとも関係ない人だろうか? そんな考えを抱かせた。特に期待しないまま僕はまた階段をゆっくりと降りる。
「小春ちゃんが来たわよー」
また予想通りだった。そしてまた半分予想から外れていた。ドアを開けると女子が三人。今日家に来た7人の中で6人が女性である。われながら謎である。
「体調は……大丈夫みたいね」
小春、これは予想通りである。しかし、後ろには意外&意外な人たちだった。逆に予想できたといえば予想できたかもしれない。泉、そして鷲。泉は多少不機嫌な顔をしてるあたり、無理やりにでも連れてこられたのか。
「なんだ、平気そうな顔してるわね。サボりかしら?」
「まったくと言っていいほど図星だ」
「え!? サボりなの! 國定君真面目だったのになぁ」
「過去は遡るもんじゃないよ……」
小春は遠い目をしている。泉はそれを呆れの目で見ている。
「でも、昨日は風邪ひいてたのは本当だから」
「それはもう大丈夫なんですか?」
お前のせいで、と言いたかったが、多分知らないだろうからのどの奥にしまっておいた。
「んな心配する程でもないな。起きたらピンピンだったし」
少し汗が出るほど熱い春の日。アスファルトに照りつける太陽の光を見ながら
「どうせ来たならお茶ぐらい出すけど?」
と、唐突に始める。せめて鷲だけでも釣れてくれ。
「何それ、ナンパのつもりかな?」
泉は突っかかってくる。
「あ、ごめん、これ渡すだけに来たから。用事あるしこれぐらいにするよ」
小春は本当か、それとも上手い断りか、残念そうに言う。
鷲は何も答えなかった。
小春は何か紙を渡す。
「今日の生徒会……ってか友生会って名前になったんだけどさ、それの配布資料」
「そっか前回決めなかったのか。ま、後でじっくり見るわ」
僕は紙を受け取る。モノクロの文章、何が書かれてるかはパッと見ただけではわからない。
「じゃ、これだけだから」
「大事そうでよかった。体に気をつけてね」
泉は不愛想に、小春は何とも小春らしい挨拶をした。
と、僕はさっきから「山の如し」である鷲が、だんだんとうつむくのが見えた。
「おい、小春たちは帰ったぞ? 鷲は帰らなくていいのか?」
「あ、あの、お茶ごちそうになっていいですか?」
「は?」
意外な返答だった。




