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屋上少女  作者: 悠(はるか)
第二章「黄昏の雨は死神を濡らして」
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6.上々

 目が覚める。非常に寝覚めが良かった。昨日は風邪をひいていた身分だというのに。ベッドの上の時計を眺めると「6:08」の表示。カーテンを開けると多少薄暗い景色が目の前を覆う。

「はぁ」

 ため息をつくが、その理由は疲れなどではない。むしろ風邪は治り、寝覚めもいい僕にとってはため息をつく理由など寸分もないに等しいが。

「学校行こうかな」

 呟きながら僕は特に何の用意もせずに昨日の本の続きを読む。頭痛も治り快適に読めそうだ。薬学大学に通う主人公とその講師との、なんというだろう、推理もののような本であるか。そういえば小説と言えば小春は小説部に入ってると言っていた気がしたが、これぐらいのものを書くのだろうか。噂では三年生の中では一番うまいとは聞いたけども。あの泉ってやつも小説部らしいし、何より生徒会長が小説部。この学校は小説部に支配されてはいませんかね。そういえば小春との出会いに何か小説が関係していた気がするんだが……事故前の記憶はちょっとあやふやだな。

 本を読むのにも飽き、部屋のいたるところをうろうろとする。めぼしいものがあれば触れ、すぐに飽き、触れては飽き。その繰り返しであった。時計をふと見ると長針と短針が重なっていた。さっきから全然30分程度しか時間がたっていない。

 僕は階段を下りお母さんがいるだろうリビングへと向かった。

「あら風邪は?」

 予想通りの声が聞こえる。

「なんか治ったみたいだわ」

「だったら学校でも行く?」

「今日は面倒くさい」

 そう、端的に言い切って僕は外へと足を踏み出した。

 多少多少明るくなった町。活気は感じられないが、その分幻想的な何かが感じられる、そういった町だ。

 商店街のそばに植えられた桜。ちらほらと咲きはじめ、来週中には満開にでもなるだろうか。ここら辺の気候は周りと比べ比較的暖かいので桜もその分早く咲く。

 商店街へと進む。朝早くの商店街は夕方と180度違う。まったく別の場所のように感じられる。シャッターに囲まれた寂れたように見える商店街を歩いているのは、犬の散歩をしている人ぐらいであろうか。そう思っていると、目の前の女の人のポケットからハンカチのようなものが落ちるのが見えた。拾い上げ彼女に渡す。

「ありがとうございます」

「いえ」

 台本に書かれたようなセリフを言い合い、お互いが先ほどと同じような気持ちで同じ方向へと歩き出す。と、思っていた矢先のことであった。

「君、小春ちゃんの同級生?」

 こう話しかけられた。いろいろ察した僕は、とりあえず最善解をすぐに求めた。

「一年留年してますけどね」

「じゃあ、あれか、國定君か」

 彼女は僕の名前を知っているようだ。多分小春あたりが彼女と知り合いで僕の名前をこぼしたのだろうか。名前が独り歩きするのはあまり好きではないのだがなぁ。

「そうですけど……小春の知り合いですか?」

「小説部の先輩だし、同じ学生会のメンバー。4年の御坂って言うわ」

「2年の國定です。で、先輩がいったい何用で?」

「いや怖いなぁ……特に理由はないけど、見かけたような顔がいただけだから。気を害したようならごめんね」

「特にそんなことはないですけど……」

 こちとら初対面の人に怖がられてしまうのは、先輩だからという理由抜きでも残念である。

「あ、ごめんね。特に何もないからじゃあね」

「いえ、こちらこそ」

 そういって今度こそ先ほどと同じ道をたどる。

 山はいつの間にか太陽に照らされ、多少この身にも照り返す。家に戻ると大体七時を過ぎていた。

「おかえり」

「ただいま」

 暇つぶしに散歩へ出て行ったが、特に収穫もなく帰ってきてしまった。

 それから昼飯までずっと本を読んでいたのは仕方がないことであった。

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