5.無情
わからない。彼女がわからない。部屋の中の布団に篭り考える。思い返すと、誰か人についてこんなに考えるのは初めてかもしれない。それも女についてとなるともはや一生関らないとさえ思っていたときすらあったんだ。そんな僕が、こう、頭を悩ませている。
何から整理しようか。そう考えたら、一つポイントを思い出した。彼女は自ら命を絶とうと思っていた。もし僕が止めていなくてもそうそう消えることは無かった命だが。
「何でだろう……」
彼女が言っていた『病気』とか言うやつと関係があるのだろうか……? というか、彼女の言う『病気』って多分病院で直すような病気じゃないんだろうな。彼女の発するイントネーションが違うというか。
「はぁ、昨日の今日で分かるかよって話だな」
僕は頭の中で話題を切り替える。
「後は生徒会か」
もう新学生会というのが面倒なので生徒会と勝手に決めた。
小春が会長なのはかなり不安だが、割と彼女は彼女らしく運営してる。学生会の人たちとも交流を取ってるなら問題は起きないだろうし、僕も少しは役に立たないとな。一応役員とか言う肩書きをもらってるんだし。そう考えると片隅に、また一人。
「泉、ねぇ。面白そうなやつだが」
ドS精神だそうで。絡みたくないやつなのに絡んでくる第二号認定かも知れない。一号はもちろん……。ポケットの中で何かが揺れる。携帯か。小春か、たしか掛川にも携帯の番号とメアドは教えたはずだが。
「一号のほうか」
そう呟き電話に出る。
「何か用っすかね?」
「あの、かけちゃだめだったっすかねぇ……」
僕のわざと出した不機嫌そうな答えに彼は少しおびえてる様子だった。
「今電話をかけてこられるってことははクラブでDJが音楽をかけるようなもんだから」
「ほう……ってめちゃくちゃ乗り気じゃねぇか!」
すぅ。息を吸う。
「で、何か用?」
「いや、あの、明日の時間割教えてくれね? プリント持ち帰るの忘れて引き出しの中にいれっぱだったから」
「構わないけど、どうせプリント持ってるんだろ?」
「え!?」
結構分かりやすいやつらしい。
「お前の引き出しの中空っぽなの放課後見たからな」
「おま、寝てるからしらないと思ったのに……」
「で、何を聞くつもり?」
用もないのに電話することなんて無いだろうと踏んだ上で、電話口でも分かるぐらい威圧的なつもりで言った。
「なんか鷲と一緒にいるな、と思ってさ。うらやましくて……っと今のは聞かなかったことにしてくれ」
「ほう。鷲にほれてるのか? お前が」
「すっげぇ極論だな。しらねぇけどさ。好きになったって、彼女は応えてれないからさ」
「お得意のナンパ術でいいだろ」
「俺はガールハンティングだけが得意なんだ。ナンパと同じにしないでくれ」
……逆に聞くが違うものなのか? とは聞けなかった。すごく真面目な話をしてるのと、何かしらのプライドを持ってるようだ。
「ほう。で、何が言いたい?」
「いや、彼女はいつも、俺は去年も同じクラスだったんだ。彼女とな。それでわかる。何かに怯えながら、何かに捕らわれながら生きてるんだなって。俺はこんな性格だから助言なんてできやしないが、お前なら出来そうだからな」
「買いかぶりだ」
怯える、捕らわれる。多分『病気』……?
「ひとつきになるのがさ、彼女バスケやってないんだよね。いや一年の時は唯一の娯楽といってもいいんじゃないかな、楽しそうにやってたんだけど、一年の後半になってからは放課後バスケ部にいないんだよね。どうしたんだろうか」
「僕が知るわけないだろ、それこそ本人に聞けよ」
「さすがにデリケートな問題に踏み込みそうなことぐらい分かるぜ」
「ならその話はやめってことにしておけ」
「はぁ……その、頼んだぜ」
「だからしらねぇって。って切れてるし!」
軽く舌打ちする。一体何のことなんだか。
「もう疲れた」
電気を消すと、そこには静寂が広がっていた。




