十
「失礼。つまり、二つ目の『バグ』だったな……そう、そして女の身体へ転生したが、いつもの通り殺された」
……ん?なんだこの違和感は??
ああ、そういうことか。俺はこれまで「殺されて」きたのか?!
いやまて、そんなはずは……ただ、あまりにも不自然な死に方をしたような記憶はある。思えば誰かに突き飛ばされたり、放火されていたりしていたのかもしれんな。待て待て、落ち着け。そんなわけないだろう?毎度殺人の被害者だなんて。
……いやバカか?さっき言ってたじゃないか!「全ての殺された人の記憶に、その直前の記憶が残らないように」ってな。研究がどうのこうのに流されてしまったが、確かにそう言っていたじゃないか。
(クソっ、なにがどうなってるんだ?!)
(ねえ、私は殺されたの?!さっきこの人が言ってことが本当なら、私は殺される予定で、しかもその直前にあなたが私の身体にやってきたってことに……)
(……ああ、そうなるな)
(じゃあ私、もしかしたらあなたにとてもひどいことを言っていたのね……本当にごめんなさい!本当に、本当にごめん……)
(いやいいんだよ。そんなに謝らないで。俺だって、それまで殺されてきたはずで、その記憶を持っていて……それでも『殺されて』きたことに気づけなかったんだ。もし気づけていれば、いくらでもやりようがあったかもしれないじゃないか)
(いいえ、そんなことないわ。あなたが私の身体にやってきたのは私に起こる死を代わりに体験してもらうため。どのみち死ぬ運命だったってことよ。だから私は大丈夫。お願いだからそのことで気を病まないで)
この言葉にどれほど救われたか。俺のマインドが保てなくなるところだった。この娘には、さっきから感謝してもしきれない。
「……大丈夫か?まあ落ち着くんだ。それが最も良い解決法だからな」
「はい、もう問題ありません。どうぞ、続けてください」
「分かった。そして、死んだ後にまた『魂の地』へ行った。そこからが問題だ。君も分かるだろう。通常、『魂』は各『魂』ごとに『魂の地』を持っており、それらには関連性や接続性は一切ない。他人の『魂の地』に干渉もできない……はずだったのだが」
「俺の『魂の地』にはある女の『魂』があったということですね」
「そうだ。そして、その『女』の『魂』は何の偶然か、あるいは必然か、その前に転生した女のものだった」
「……そうですね」
「君は、その情報をどうやって知った?」
「……会話をしました。喋った……というか『テレパシー』みたいな感じで」
「なるほど、情報の伝達があったというわけか。興味深い……まあいい、しかしこれに留まらないのが恐ろしいことだ。コイツからたった今情報が入ってな……どうやら今の君の中には二人の『魂』が存在しているらしいじゃないか」
(……やっぱりこれもおかしなことだったのね……でも、一体どうすればいいのよ?)
(さあな、それを今から聞かなきゃならんのじゃないか?)
(そうね、じゃあ質問をお願いするわ)
(ああ、分かった)
「あの、質問をしてもいいですか?」
「ああ、構わない」
「なんで、口調がいきなり変わったんです?最初会ったときは敬体だったのに、この和室へ来てお話を始めた途端、常体になって。なんかあったんですか?」
(え?そっち?確かに言われればそうかもしれないけど……聞く必要ある?)
(いやまあ、ちょっと聞いてみたくて……まあいいだろう?)
(そう、勝手にしなさいよ)
「あーそうきたか……変だったか?我々の思考を無理矢理言語に落とし込むのは結構大変なことでね、常に最善の変換を心掛けてはいるのだが、すまないね。そうか、敬体と常体……以後気を付けよう。とりあえず、常体を引き続き用いる。それでいいな?」
そうそう、こういうところからコイツらは不気味なんだよな。さっきは「様々な世界の眺望者」だって言ったっけ?俺らとはそもそもが違うもんな。
「はい、まあこれはちょっとした前座、本題はですね……つまり、俺と彼女はこれからどうすればいい?ってことです」
「なるほど、確かにそうだな。『バグ』によって引き起こされた現象だ。早急な事態の解消が求められる」
全く、一体どこに出るのか分からない、長く暗いトンネルの中にいつまでもいるような気分だ。




