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異世界雑草食堂 〜誰も食べないものを、俺は喰う〜  作者: レモンティー


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4/11

第四幕:雑草食堂、開店

「――無許可営業は規約違反だ」

商業ギルドの男は、冷たく言い放った。

「登録料、月次税、売上報告。すべて義務だ」

「いくらだ?」

「初期登録で銀貨五枚」

高い。

今の俺の全財産――銅貨数枚。

払えるはずがない。

「払えないなら?」

「営業停止、もしくは――排除だ」

空気が一段、重くなる。

村人たちが一歩引いた。

“権力”だ。

「……なあ」

俺は、あえて笑った。

「もし俺がこれで稼げるって証明したら?」

「関係ない」

即答。

「規則は規則だ」

なるほど。

話が通じないタイプか。

「じゃあ逆に聞く」

俺は鍋を指す。

「これ、禁止する理由は?」

「衛生不明、成分不明、危険性不明」

淀みない回答。

「つまり、“責任が取れない”」

筋は通っている。

だからこそ――

「じゃあ、取ればいい」

「……は?」

「責任、俺が取る」

沈黙。

「その代わり――」

俺は一拍置いて続けた。

「“売る権利”をよこせ」

男の目が細くなる。

「面白い」

「だろ?」

「三日だ」

男は言った。

「三日で、安全性と価値を証明しろ」

「できなければ?」

「即、排除」

いいね。分かりやすい。

シンプルでいい。

「乗った」


◆ リナの決断

「……あんた、正気?」

リナが呆れた顔をする。

「三日で証明なんて、無茶よ」

「だからやるんだろ」

「失敗したら終わりよ?」

「成功したら?」

リナは言葉に詰まる。

「……認めるしかないわね」

「じゃあ決まりだ」

「まだよ」

リナは腕を組む。

「私も条件を出す」

「何だ?」

「私を使いなさい」

「……は?」

「薬師として監修する」

まっすぐな目だった。

「危険なものは止める。効果も記録する」

「その代わり――」

「……その代わり?」

「成功したら、私もこの店に入る」

一瞬の間。

「共同経営よ」

俺は笑う。

「いいね。最初の従業員だ」

「違う、“パートナー”」

「はいはい」

こうして――

ツンツン薬師、正式加入。


◆ 看板娘

「……あの」

小さな声。

昨日の少女だった。

「また、食べてもいい?」

「もちろん」

即答する。

「ただし」

「……?」

「働け」

「え?」

「皿洗いでも、呼び込みでもいい」

少女は戸惑う。

「その代わり、飯は出す」

数秒の沈黙。

「……やる」

小さく、しかし確かに。

「よし」

「名前は?」

リナが尋ねる。

「……ミア」

「じゃあミア」

俺は笑った。

「お前、看板娘な」

「……かんばん?」

「店の顔だ」

ミアは少しだけ笑った。


◆ 雑草料理、進化

「時間がないわよ」

リナが草をつまみ上げる。

「三日で証明するなら、これじゃ弱い」

「スープだけじゃダメか」

「当たり前でしょ」

そこから一気に動き出す。


● 焼き草パン

刻んだ草を練り込み、焼き上げる。

「……香ばしいな」

「栄養も残ってる」

ただの主食が“商品”になる。


● 揚げ草チップス

薄切りにして油へ。

「……うまっ」

ミアが目を丸くする。

「塩だけでいけるわね」

リナも頷く。

軽食として完成。


● 乾燥栄養草

選別、乾燥、粉砕。

「これ、保存効くな」

「しかも軽い」

「携帯食ね」

冒険者向けの完成品。


◆ 三日間

一日目:試作

二日目:販売

三日目:評価

村の空気が変わっていく。

「パン、普通に美味い」

「チップス止まらん」

「遠出にちょうどいい」

“草”という概念が崩れ始める。


◆ 判定

三日後。

ギルドの男が現れる。

「……報告しろ」

机の上に並べる。

商品。

売上。

記録。

「安全性、問題なし」

「売上、右肩上がり」

「需要、確認済み」

「――証明は終わりだ」

沈黙。

やがて男が言う。

「……認めよう」

空気が動く。

「条件付きだ」

「来たな」

「ギルド登録を許可する」

「その代わり――」

「“独占は禁止”」

「情報開示か?」

「違う」

男は続ける。

「管理下に置く」

「やっぱりな」

だが――

「断る」

即答。

空気が凍る。

「俺は俺でやる」

「……強気だな」

「勝てるからな」

視線がぶつかる。

数秒後。

男は、わずかに笑った。

「……いいだろう」

「その代わり、潰れても知らんぞ」

「上等」


◆ 開店

木の板に雑な文字。

【雑草食堂】

その下に並ぶ商品。

「焼き草パン」

「草チップス」

「栄養草(保存用)」

リナが呆れる。

「……本当にやるのね」

「もう始まってる」

「ミア、いくぞ」

「……うん!」

小さな声が、村に響く。

「いらっしゃいませ!」

その瞬間――

価値のなかった“草”が。

商品になり、店になり、

そして――文化になり始めた。

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