終章:裏方の席
◆ 王都・雑草供給局
「次の承認は?」
「もう通ってる」
「誰が?」
「……現場判断だ」
官僚は書類を見ながら肩をすくめる。
「またか」
でも誰も止めない。
止める理由がない。
◆ 名前のない日常
配給所。
列は整っている。
記録もある。
だが――
その中央にいたはずの“発案者”の名前は、どこにもない。
誰も探さない。
必要がないからだ。
◆ ミアの現在
「次、ここね!」
ミアは地図を広げる。
もう少女ではない。
現場を回す側になっていた。
「この区画、昨日少なかったから優先ね」
周りは自然に従う。
彼女は“仕組みの一部”として動いている。
◆ リナの位置
「全部うまく回ってるわよ」
リナは帳簿を閉じる。
「逆に怖いくらい」
「何が」
「誰も“中心”を気にしてない」
「それが正常だろ」
「ええ。正常すぎるのが問題なの」
◆ 裏方の席
その日。
王都の片隅。
小さな作業場。
誰も注目しない場所。
そこに俺はいる。
鍋の前。
草を選別しているだけ。
◆ 誰も気づかない不在
「最近、あの人見ないね」
「そういえば」
「まあ、どこかでやってるだろ」
それだけ。
会話は終わる。
◆ 主人公の現在
「なあ」
ミアがたまに来る。
「まだやってるの?」
「やってるよ」
「ずっと?」
「まあな」
それだけの会話。
◆ 役割の変化
かつて:
・発案者
・中心人物
・責任者
今:
・現場の一人
・調整の補助
・名前のない役割
◆ 世界の状態
雑草供給網は安定している。
拡張もされている。
争いは減った。
飢えは縮んだ。
そして――
誰もそれを“誰かの功績”とは呼ばない。
◆ リナの最後の言葉
「ねえ」
「結局さ」
「あなた、どこ行ったの?」
俺は笑う。
「ここにいるだろ」
「それが問題なのよ」
◆ ミアの理解
「でもさ」
「いないと困るよね」
リナは少し間を置いて答える。
「いるのよ」
「でも“見えない形”でね」
◆ 最後の仕事
その日も鍋をかき混ぜる。
草を干す。
仕分ける。
誰も見ていない。
でも誰かの明日の食事になる。
それだけで十分だった。
◆ 世界の扱い
・英雄 → いない
・中心 → いない
・名前 → ない
それでも回る。
◆ エンディング
夕方。
配給所の明かり。
列の向こうでミアが手を振る。
リナが帳簿を閉じる。
誰かが笑っている。
その全部の外側で――
俺はただ、鍋の火を見ている。
◆ 最後の一文
「世界は、誰かが回している」
「でも、その誰かは、もう必要とされないくらいでちょうどいい」




