その後…二人は……
気が付くと
雨宮澪は見知らぬ部屋のベッドの上にいた。
窓の外には深い森
空は曇り
鳥の声すら聞こえない
まるで世界から切り離された場所だった。
「……ここどこ?」
と小さく呟くと
返事をするように扉が開いた。
「起きた?」
聞き慣れた声がした。
姦姦蛇螺だった。
六本の腕に大量の布を抱えながら、
嬉しそうに笑っている。
「澪」
それだけで幸せそうだった。
「お腹空いてない?」
「家に……帰して」
澪は震える声で言った。
すると姦姦蛇螺の笑顔が少しだけ止まる。
けれど怒らない。
ただ悲しそうに微笑むだけだった。
「まだ言うんだね」
そしてベッドの横へ腰を下ろす。
「大丈夫」
「そのうち言わなくなるよ」
優しい声だった。
だからこそ怖かった。
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季節が過ぎる
春が終わり
夏が来る。
秋が過ぎて
冬が来る。
けれど澪は外へ出られない。
森へ逃げようとしたこともあったし
窓を割ろうとしたこともあった。
何度も
何度もやった
何度もと…
そのたびに姦姦蛇螺は迎えに来たが
彼は怒らない。
それに叱らない
ただ抱き締めるだけ。
そしてこう言うんだ。
「心配した」
「いなくなると思った」
「怖かった」
まるで被害者のように…
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年月が流れ
部屋は少しずつ広くなった。
本棚が増え
ドレスも増えた。
花も増えた。
澪の好きだと言った色のものが増えた。
姦姦蛇螺は本当に覚えていた。
好きな花も
好きな本も
好きな紅茶も
全部覚えていた
全部知っていた
全部分かっていた
だから余計に恐ろしかった。
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ある日
澪は鏡を見ていた
その横には姦姦蛇螺がいる。
相変わらず嬉しそうに。
幸せそうに
彼女を見ている。
「澪」
「なに?」
自然に返事が出た。
姦姦蛇螺は嬉しそうに目を細める。
それを見て
澪はふと気付いた。
もう何年も
誰とも話していないことに
外の世界の記憶が薄れていることに
家族の顔が思い出せなくなっていることに
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怖かった
本当に怖かった
なのに
隣にいる姦姦蛇螺だけは
毎日変わらずそこにいた。
朝も
昼も
夜も
何年経っても
ずっとそばにいてくれた
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「澪」
また名前を呼ばれる
昔は嫌だった名前だけど…
今では一日に何度も聞く声。
「澪」
振り返ると
姦姦蛇螺が笑っている。
「今日も綺麗だね」
その言葉に
澪は思わず笑った。
ほんの少しだけ
自然に笑えた
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姦姦蛇螺は目を見開いた。
信じられないものを見るように。
そして
泣きそうなほど嬉しそうに笑った。
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その瞬間
澪は理解した。
もう帰れないんだと…
いや…
違う
帰る場所が分からなくなってしまったのだ。
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窓の外では雨が降っている。
あの日と同じように。
静かに
静かに
終わることなく降り続けている
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姦姦蛇螺は隣で微笑む
「澪」
「うん」
「ずっと一緒だよね?」
長い沈黙。
そして
澪は窓の外を見ながら小さく答えた。
「……そうだね」
姦姦蛇螺は幸せそうに目を閉じた。
まるで長い悪夢から救われた人のように
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こうして
怪物は愛する人を手に入れた。
少女は自由を失った
けれど
二人は離れない
二人とも笑っている
だからきっと
これは二人にとっての幸福な結末なのだろう
たとえ誰かがそれを――
**共依存**と言ったとしても




