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異類婚姻譚 愛執堂  作者: 黒薔薇
第一章 姦姦蛇螺♂の執着
6/50

その後…二人は……

気が付くと

雨宮澪は見知らぬ部屋のベッドの上にいた。


窓の外には深い森

空は曇り

鳥の声すら聞こえない


まるで世界から切り離された場所だった。


「……ここどこ?」


と小さく呟くと

返事をするように扉が開いた。


「起きた?」


聞き慣れた声がした。


姦姦蛇螺だった。


六本の腕に大量の布を抱えながら、

嬉しそうに笑っている。


「澪」


それだけで幸せそうだった。


「お腹空いてない?」


「家に……帰して」


澪は震える声で言った。


すると姦姦蛇螺の笑顔が少しだけ止まる。

けれど怒らない。


ただ悲しそうに微笑むだけだった。


「まだ言うんだね」


そしてベッドの横へ腰を下ろす。


「大丈夫」


「そのうち言わなくなるよ」


優しい声だった。

だからこそ怖かった。


---


季節が過ぎる


春が終わり

夏が来る。


秋が過ぎて

冬が来る。


けれど澪は外へ出られない。


森へ逃げようとしたこともあったし

窓を割ろうとしたこともあった。


何度も


何度もやった


何度もと…

そのたびに姦姦蛇螺は迎えに来たが

彼は怒らない。


それに叱らない

ただ抱き締めるだけ。


そしてこう言うんだ。


「心配した」


「いなくなると思った」


「怖かった」


まるで被害者のように…


---


年月が流れ

部屋は少しずつ広くなった。


本棚が増え

ドレスも増えた。


花も増えた。


澪の好きだと言った色のものが増えた。

姦姦蛇螺は本当に覚えていた。


好きな花も

好きな本も

好きな紅茶も


全部覚えていた

全部知っていた

全部分かっていた


だから余計に恐ろしかった。


---


ある日

澪は鏡を見ていた


その横には姦姦蛇螺がいる。

相変わらず嬉しそうに。


幸せそうに

彼女を見ている。


「澪」


「なに?」


自然に返事が出た。


姦姦蛇螺は嬉しそうに目を細める。


それを見て

澪はふと気付いた。


もう何年も

誰とも話していないことに


外の世界の記憶が薄れていることに


家族の顔が思い出せなくなっていることに


---


怖かった


本当に怖かった


なのに

隣にいる姦姦蛇螺だけは

毎日変わらずそこにいた。


朝も

昼も

夜も


何年経っても

ずっとそばにいてくれた


---


「澪」


また名前を呼ばれる


昔は嫌だった名前だけど…

今では一日に何度も聞く声。


「澪」


振り返ると

姦姦蛇螺が笑っている。


「今日も綺麗だね」


その言葉に

澪は思わず笑った。


ほんの少しだけ

自然に笑えた


---


姦姦蛇螺は目を見開いた。


信じられないものを見るように。


そして

泣きそうなほど嬉しそうに笑った。


---


その瞬間

澪は理解した。


もう帰れないんだと…


いや…

違う


帰る場所が分からなくなってしまったのだ。


---


窓の外では雨が降っている。


あの日と同じように。

静かに


静かに

終わることなく降り続けている


---


姦姦蛇螺は隣で微笑む


「澪」


「うん」


「ずっと一緒だよね?」


長い沈黙。


そして

澪は窓の外を見ながら小さく答えた。


「……そうだね」


姦姦蛇螺は幸せそうに目を閉じた。


まるで長い悪夢から救われた人のように


---


こうして

怪物は愛する人を手に入れた。


少女は自由を失った


けれど

二人は離れない

二人とも笑っている


だからきっと

これは二人にとっての幸福な結末なのだろう


たとえ誰かがそれを――


**共依存**と言ったとしても


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