二人の出会い
翌朝
「眠い……」
私は欠伸を噛み殺しながら
駅へ向かっていた。
結局…
昨日はあまり眠れなかった。
なぜなら
変な夢を見たからだ。
真っ白な雪景色で
知らない山
そして
銀色の瞳
夢の内容なんてほとんど覚えていないはず
なのに
胸の奥だけが妙にざわついていた。
「はぁ……」
疲れが取れないけど
今日も仕事だ。
社会人に夢の余韻へ浸る時間などない。
私が駅の改札を抜けた
その時だった。
ふと視線を感じる
私は顔を上げた。
ホームの向こう側
人混みの中に
一人の男が立っていた。
長い銀髪に
黒い和服
それに
整いすぎた顔立ち
昨日見た!
そう思った瞬間…
電車がホームへ滑り込んできた。
人の流れに押され
私は慌てて乗車し
そして窓の外を見る。
だが
もうそこには誰もいなかった。
「……気のせいだよね?」
昨日から変なことばかりだし
疲れているのだろうと
そう思うことにした。
昼休み
会社近くのカフェで
私はスマホを見ながらサンドイッチを齧っていた。
午後の会議に
提出書類
それに沢山の
終わらないメール
はぁ…
考えただけで憂鬱になる。
その時
ガラス越しに外が見えた。
私は何気なく顔を上げ
そして固まった。
いた。
まただ。
道路の向こう側に
昨日の男が立っていて
こちらを見ている。
間違いない。
銀髪に
黒い和服を着ている。
人混みの中でも目立つ姿なのに
周囲の誰も気にしていない。
まるで
そこに存在していないみたいに
「え?……」
思わず立ち上がる。
すると
男の姿が消えた。
人混みの中へ紛れたのか?
それとも最初からいなかったのか
分からない。
背筋が少し寒くなる。
「何やってるの…私……」
自分でも笑ってしまう。
二十四歳にもなって
知らない男に怯えているなんて…
だが…
胸騒ぎは消えなかった。
その日の夜
残業を終えて会社を出ると
時刻は午後八時を過ぎていた。
街にはネオンが灯っている。
私は疲れた足で駅へ向かった。
すると
再び冷たい風が吹いた。
六月とは思えない冷気を感じ
思わず立ち止まる。
そして
視界の端に銀色が映り
「っ!」
反射的に振り返ると
いた。
ほんの数メートル先で
今度は近い
街灯の下に
銀髪の青年が立っていた。
逃げることも
隠れることもせず
ただ静かにこちらを見ている。
私の心臓が大きく鳴った。
怖いはずなのに
何故だろう
少しだけ
泣きたくなるほど懐かしい。
青年はゆっくりと口を開いた。
そして
二百七十三年間
探し続けた声で静かに告げる。
「……紬」
その瞬間
私の時間が止まった。
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知らない
知らないはずなのに
どうしてその呼び方が
こんなにも胸を締め付けるのだろう…
六月の夜風が吹くけれど
私の周囲だけ
雪が降りそうなほど冷たかった。




