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異類婚姻譚 愛執堂  作者: 黒薔薇
第一章 姦姦蛇螺♂の執着
3/42

姦姦蛇螺♂との再会

「それとも――もう思い出しましたか?」


店主がそう告げた瞬間に


――ずるり


と背後で何かが這う音がした。


また


――ずるり


と聞こえて

私は凍りついた。


嫌な予感がする。

これは振り返ってはいけない気がする…


本能がそう警告していた。

それなのに

ゆっくりと振り返ってしまった…


そして……

息が止まりかけた…


そこにいたのは…

六本の腕を持ち

人間ではない巨大な身体に

長く伸びる蛇の下半身が見えた。


それに私を貫くように

黄金色の瞳がこっちを見ていた。


その視線は最初から最後まで

私だけを見ていた。


まるで世界に私しか存在しないかのようにね…


「やっと――見つけた」


低い声が響いた

その瞬間……

ぞくりと背筋が震えた。


そしたら

姦姦蛇螺はゆっくりと笑った


壊れそうなほど嬉しそうに

泣き出しそうなほど幸せそうに


「澪」


私は驚いて目を見開いた…


「え……」


「澪」


また呼ばれる。


「見つけたよ…澪」


優しく

とても愛おしそうに…


何百回も呼び続けた名前のように…


「やっと見つけた」


姦姦蛇螺の声が震えていた…


「澪」


「ホントに…澪だよな?」


「やっぱり澪だ!」


まるで確かめるように…


失ったものを取り戻すように…


何度も…

何度も…


私の名前を呼んでいる


「違う……」


思わず後退る。


「私はあなたなんて知らな――」


「知ってる」


即座に返ってきた。


その声に鳥肌が立つ。


姦姦蛇螺は微笑んでいる。


なのに目だけが笑っていない。


「輪廻転生したから澪は覚えてないだけだよ?

俺は全部覚えてるよ♪」


「全部ね…」


六本の腕が僅かに震える。


「雨の日も


泣いてた顔も


笑った顔も


俺の服を見てくれた時も


最後に俺を呼んだ声も…全部ね♡」


一歩

また一歩と向こうから近づいてくる

距離がどんどん縮まってくる。


私は逃げようとするが

怖くて震えて

足が思うように動かない


「ずっと探してたんだ」


姦姦蛇螺は私を見て笑う


嬉しそうに

狂ったように


「何回生まれ変わっても


何十年経っても


何百年経っても


理解してくれるのは澪だけだった」


黄金の瞳が細くなる


「俺の最高傑作であり

俺の運命の番」


「俺だけの澪なんだから♡」


その言葉を聞いて息が詰まる。


店主はこちらを黙って見ていた。

まるで最初から決まっていた出来事を見るように。


「ねぇ澪」


姦姦蛇螺は優しく問いかける。


「どうしてまた俺の前からいなくなったの?」


その声は穏やかだった。


けれど…

底知れない恐怖が滲んでいた。


「俺ね

澪がいなくなった後も服を作ってたんだ」


「澪のために」

ずっと

前世で亡くなってからもずっと

転生するまでずっと待ち続けながらね?」


笑顔のまま姦姦蛇螺は話を続ける。


「でもね


どれだけ作っても

どれだけ待っても


やっぱり澪じゃなきゃ駄目だったよ…」


六本の腕がゆっくり広がる。


「誰も似合わなかった


完璧に完成させてくれなかった


澪じゃななきゃダメだった」


声が少し震える…


愛情で

執着で

狂気で


「だから探したんだ


血縁辿って探したり

好きそうな場所で会えるかもと思って探したり

前世の墓石の場所思い出して探したり

君が転生してそうな職業をして探したり

心当たりある所全部探して

ココ…愛執堂を知って

やっと見つけたんだよ!」


黄金の瞳から目が離せない

その視線は獲物を見る目ではない。


もっと恐ろしいものだった

絶対に手放さない宝物を見る目をしているのだった。


「澪」


また私の名前を呼ぶ。


「もう大丈夫

もう絶対独りにしない

俺が逃がさない

死ぬまで一緒だよ!」


心の底から幸せそうに

優しく微笑む


「今度こそ帰ろう?」


姦姦蛇螺は手を差し出した。


「俺たちの家へ」


「なぁ、澪

今度はずっと一緒だよね?」


その問いかけは…

お願いではなかった。


まるで何百年も前から決まっていた運命を

確認するような声音だった。


店の外では雨が降り続いている。


まるで私…

雨宮澪を二度と帰さないようにしている感じだ。


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