二人の新しく始まる恋
神社へ続く石段を、
美琴はゆっくりと登っていた。
春になり
境内の藤棚には紫色の花が咲いている。
あの日から数か月が過ぎているけど
蓮命との約束は続いていた。
彼は相変わらず神社にいて
美琴は時間がある時に訪れる。
ただそれだけ
それだけのはずだった。
けれど
「美琴」
聞き慣れた声がして
振り向くと、
蓮命が立っていた。
「来てくれたんだね」
その言葉に美琴は少し笑う。
「来るって言ったでしょ?」
「うん」
蓮命も笑う
けれど
その表情はどこか嬉しそうだった。
何百年も待った神にとって
数日の別れですら長く感じるのかもしれない。
「今日は何してたの?」
美琴が尋ねる。
「待ってた」
即答だった。
「またそれ?」
思わず笑う。
「だって本当だよ」
蓮命は真顔だった。
「朝からずっと
美琴が来るかもしれないと思って
参道ばかり見てた」
「重いって…」
「ひどいなぁ」
そう言いながらも蓮命は嬉しそうだった。
昔なら
その執着はきっと誰かを傷つけていた。
自分も
相手も
けれど今は違う。
彼は待つことを覚えたし
信じることも覚えた。
それは長い時間を経て
ようやく手に入れた変化だった。
風が吹き
藤の花が揺れる。
蓮命はふと美琴を見た。
「ねぇ」
「ん?」
「もし次に生まれ変わったらさ」
美琴は少し考え
そして笑った。
「その時はちゃんと見つけてよ?」
蓮命は目を丸くする。
「僕が?」
「だって毎回私ばっかり探すの大変だもん!
そんなの無理だよ?」
即答だった。
「何百年でも探す
何回生まれ変わっても」
「絶対に見つけるよ!」
「うわぁ……」
美琴は苦笑する。
「相変わらず重いなぁ…もう」
「好きだからね」
あまりにも自然に言われて
美琴の顔が赤くなる。
蓮命は不思議そうに首を傾げた。
「どうしたの?」
「なんでもない!」
その反応に蓮命は少し笑う。
そして
本当に幸せそうな顔をした。
かつて数百年の孤独を抱えていた神とは
思えないほど穏やかに。
境内には鈴の音が響く中
空は青く晴れていた。
もう雨は降っていない。
長い長い待ち時間は終わった。
そして今
神と人間の物語は
ようやく穏やかな未来へと続いていくのだった。




