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ドラゴンと僕

 なんだかんだでお話しする流れとなった。


「ねぇ。僕の聞いた噂だと、最近この城に住むドラゴンが人を喰ってるらしいけど?」

「俺は基本人は喰わん。人以外の生き物だって喰わん」

「ダイエット?」

「ダイエットではない! ドラゴンのダイエットなんて聞いたことないぞ!? そうではなく、ドラゴンは基本寝てれば栄養はいらん」

「え? 食べなくても平気なの!?」

「ああ、動かなければな。なのに最近人間が良く来る。ただ入って来るだけなら関係ないが、わざわざここまで来て勝負を仕掛けてくる面倒なやつが多くてな。多分その噂のせいだろう」

「で、結局その人達喰ってるの?」


 さっきの先制攻撃を思い浮かべて言ってみる。ドラゴンはどこか決まりが悪そうな顔をして、目を合わせずに答えた。


「……直ぐに逃げれば良いものを、俺が説明しても逃げろと言っても聞かない馬鹿共は、な。腹を減らしたのはそっちなのだから」

「ふーん」

「……良いのか? 仲間が俺に殺されたというのに」

「知らない人だから仲間ってのはなんか違うけど……でも君の言うこと、聞かなかったんでしょ? 自業自得だとも思う。あまり気持ちの良い話ではないけどねー」

「そう、か……そうだな」


 ドラゴンは僕の答えに納得したのか二三度頷き返した。それが落ち着くと今度は真っ直ぐにその紅玉の目を僕に向けて大きな口を開いた。


「……で、お前は?」

「へ?」

「ここへ来た理由は聞いたが……お前は元から死んでもどうでも良い、と考える人間でもなさそうだ。だがわざわざ人喰いと噂されるドラゴンに会いに来た……自暴自棄になっているようだが何故だ?」

「うーあー」


 意味のない呻き声のようなものを発しながら、ドラゴンをちらりと見る。

 が、誤魔化される気はない様子。


「俺の話も聞いたんだ。お前も話せ」


 ごもっともな御言葉で。はぁー、と大きなため息を一つ吐く。


「判った。話すよぉ。あのね……カッコ悪い話なんだけどー、あのー」

「良いから話せ」


 ピシャリと言われてしまったので、腹をくくって話すことにした。


「き、きき、き、らいって」

「言われたのか?彼女に」

「ぬぁあああ! なんで先取りしちゃうのぉ!?」

「嫌いって言われたのか、彼女に」


 今度のは尋ねるというより確認だった。


「そ、そうだよ。ねぇ君、本当にドラゴン? やけに人間のこと、詳しくない?」

「良いから続き話せ」

「うぅ……そうだよ、嫌いって言われたんだよ! それも、それも!」

「それも?」

「それも大っ嫌いってぇ! 大嫌いって言われたんだよぉ」


 もはや半ば泣くように、やけくそのように叫ぶ僕。


「ふぅん。どうして?」

「うぅ、冷静に促さないでよ……」

「悪い悪い。で何でだ?」


 このドラゴン、絶対に氷のような血が流れてるよ!

 でも頑張って話す。


「あのね、3日前。彼女とちょっと街まで出掛けたんだ」

「ははーん、デートだな?」

「君、ほんとにドラゴン?」

「良いから続けろ、元彼氏さん」

「傷付くなぁ。と、とにかく街へ行ったんだ。で服選びを手伝ってたんだけど……」

「だけど?」

「彼女が持って来た青い服、彼女には赤の方が似合うと思ったから反対したんだ。だけど彼女が青にこだわって……」

「ケンカになったのか?」

「……うん、そうなんだ。あんまりにも青にこだわるから、ついむきになって………そしたら」

「大っ嫌い! って言われちまったんだな」

「そうなんだよぉおお」

「泣くな泣くな。判ったから泣くな」

「いま、今までだって一緒にいれば嫌いって言われることもあったよ、でもだい、だ、だいっ」

「大っ嫌いって言われたのは初めてでダメージがでかかった、と」


 うまく言えない僕をドラゴンがフォローした。


「……うん」

「もしかして大っ嫌いの後会ってない?」

「……あの後、気まずいけど家には送らないとって、思ったから、送った、けど結局何も、話せなく、て……」

「でも家までは送ったんだな。偉い、偉いけど馬鹿だな」

「ば、馬鹿って何が!」

「もう一度会って来いよ。別にフラれた訳じゃないんだろう?」

「でも……」

「大嫌いって言っただけでお別れは普通ないと思うが」

「無理だよぅ」

「とにかくもう一度会えって。別にお前が彼女のこと、嫌いになった訳じゃないんだろう?」

「そりゃそうだよ。す、す、好き、だよ」

「どもり過ぎだ馬鹿」

「あんまり馬鹿馬鹿言わないでおくれよぉ〜。本当に自分が馬鹿だと思ってしまうよ」

「十分馬鹿だと思うけどな。ほら、こんなとこにいないで彼女の前でさっきの言葉言ってやれよ」

「で、でも、でも!」

「ん?」

「へ?」


 突然ドラゴンが変な反応をした。僕の言葉に返した訳ではなさそう。


「どうしたの?」

「誰か来たようだ」

「誰かって誰?」

「もうすぐ、来る」

「え、えっ!」


 来るってやっぱりドラゴンを退治しようとか考えてる人、かな。ど、どうしよう……もしそうなら、僕が説得しないといけないのかなぁ。

 そんなことを考えている内に足音が聞こえてきた。近い。


「君、見えてる?」


 ドラゴンの眼なら暗闇でも見えてるんじゃないか、と期待しての問い。

 でも返事がない。


「ドラゴン?」

「お前の勇者様がご到着だよ」

「へ? 僕の?」


 何が何だか判らず、ドラゴンも話す気がなさそうなのでじっと暗闇を見つめる。段々闇に目が慣れて来た。

 見えて来たのは……。


「彼を食べてなんかないわよね、ドラゴン!」

「なんとも凛々しい彼女さんだね」


 そこにいたのは、長かった黒髪をバッサリ切り、旅人の衣装を身に纏い、腰に細身とはいえ立派な剣を差した少女。


「き、君!? どどどうしてこんなところに!?」

「え?」


 彼女は今ようやく僕の存在に気付いたようだった。


「い、居た! やっと見付けたぁ!」

「一体どうなってんだぁ?」

「それはこっちのセリフよ!」

「愉快なことになって良かったな」


 混沌として来たよぉー。

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