古城と僕
中は外から見た通りボロかった。いや、外よりボロかった。
床は、もちろん木ではないが……床の構造は知らないけど、何故か恐ろしく頼りなさそうな石の床となっていた。
「た、頼むからぐらぐらしないでくれよぉ」
ちょっと情けない抗議の声を上げたが床が聞いてくれる訳でもなし。
もし地下が広大に広がってたりしちゃって、もし床が抜けたら死んじゃうよなぁ……。
ぐらぐら床(←勝手に命名)をしばらく頑張って進むと直に床は安定してきた。多分今エントランスを通って来たのだろう。あんまりな床に気を取られていて階段も、いつの間にか通り過ぎてしまったらしい。まぁ上に登るかは決めてなかったから別に良いんだけどねぇ。
さて。どうするかなー。ドラゴンって普通どこにいるものだろうか?
いちー、城のてっぺんっぽいとこ。
にー、暗い暗い地下室。
さーん、玉座の間的な偉そうな場所。
……さてどこだ? うーん、と考えてみた。
結局次に階段を見つけるまでは保留にすることとした。
地下への階段があれば地下へ。上にしか上がれないならてっぺんへ。玉座の間っぽいとこはなんとなくで〜……とにかく歩こうか。
にしても静かだな、ここ。隙間風の通る音くらいしか聞こえてこない。本当にドラゴンなんているのだろうか?
そうしてかなり歩き回った頃、僕は扉を見つけた。
それは開ききった状態でしっかりと蔦で固定されてしまっているが、今まで見たこの城の扉のどれよりも豪華だったことが、今でも判る立派な扉だった。多分ここは、かつて王様がふんぞり返っていたであろう部屋。
さて入ってみよう。と僕は遠慮なく踏み込んだ。
室内はかなり広く暗い。まぁ城に着いた頃から日は大分傾いていたから、もう夜だ。だからカンテラを引っ提げ歩いて来たが、その光も奥までは届かず、カンテラがあってもなくても変わらないんじゃないか、なんてことを思ってしまう。
ドラゴンいるかなー、と思いつつ闇へとどんどん踏み込む。ふと、奥の方でオレンジ色の光が灯った。へ? と戸惑う僕に構わずその光は強く大きくなり……放たれた。
ドラゴンの息吹だ!
「わわわっ」
と慌てて右の方に避ける。
炎の息吹も横にずれる。
僕を狙っているんだ。ああもうこうなったらやけくそだ。ここに来たのはドラゴンを見るため。ならばドラゴンの方へ行こう!
即行で方向転換。
僕は全力でドラゴンの方へ駆けていった。すると、不意に炎が止まった。好都合なのでそのまま走る。
そして、見えた。
その体躯は巨大で、城よりも荘厳だと思った。溶岩のような皮膚に、立派な尾。めちゃくちゃなサイズの爪が良く見える手足……それから威厳を感じさせる紅い眼。
「これが、ドラゴンかぁ」
こりゃ来たかいあるな、凄い。
ぽかんと見上げる僕をドラゴンは見下ろす。ちょっと失礼かな? えっと……。
「やっぱり凄いね、ドラゴンは。見れて良かったと心底思うよ。攻撃しないでくれてありがとう」
にかー、と笑う僕。
ドラゴンの返事はない。
もしかしてこのドラゴン、話せないのかな、と思った時。
「お前は一体何をしに来たんだ?」
呆れた風にドラゴンは言った。良かった、喋れるみたいだ。僕は安心しながらもちょっと困って問い返す。
「何って……何しに来たように見える?」
「……死にに来たようにしか、見えんが。剣も何も持っていない。なのに俺がいることは知っていたような口振りだ」
「別に死にに来た訳じゃないけど……まぁ似たような感じだね。ねぇ君、男なのかい?」
「そんな感じだが」
「そっか、そうなんだ。へぇー。あ、僕は君を見に来ただけだよ。まだ居て良いなら話でもする?」
「お前、馬鹿か?」
本気で心配するような声で尋ねられてしまった。だから僕は精一杯の反抗であるいつもの台詞を返す。
「皆に言われるけど自分で認めたらおしまいだと思うから、頑張って否定させてもらうけどー。馬鹿じゃないよ、僕は」
何故か答えはドラゴンの盛大な溜め息だった。どうして皆そういう呆れたような顔をするんだよ? ひどいなー。




