第107話 festival:68待つ/ 第02話《××××××》偏 みんなの在り方・選択・邂逅・他者の在り方ⅰ
第106話 festival:67待つ
最上位の魔人達の件が一応落ち着いた中、《療養街》のオフィスビルの燈火によって再生された自室でアドゥリスはベッドで眠るブロッカの頬を撫でる。
すぐ側にはまだ生まれて来ない双子の弟が眠り、ブロッカの胎の中には産まれ出るその日を待つ兄がいる。
家族は皆アドゥリスのすぐ手の届く所にいるが、3名は眠っている状態でアドゥリスは不安を掻き立てられていた。
「………」
ブロッカに牙を立てられた肩にが疼く、蒐集家が治療してくれ傷は無いが突き立てられた牙の感触が忘れられずアドゥリスは強く目を閉じた。
蒐集家が言うにはブロッカは子を産むのに栄養が全く足りていない状態だったのをアドゥリスの血肉で満たされ、産むのに必要な栄養を摂り後+は産むのを待つだけ……数日中には産み落とすだろうという見解だった。
「大丈夫…大丈夫だからなブロッカ、きっとお前は俺を喰ったのを気にしてしまうだろう。子どもの為に必要だったんだ。むしろ俺の血肉でブロッカが満たされるなら良いな。ブロッカ起きたら名前を贈ろう、2人で考えよう」
アドゥリスが優しく言葉を掛け冷えたブロッカの手に手を重ねる、ブロッカは眠りながらその声を聞き一筋の涙を流した……。
「双子の弟は魔神、兄は……聖者の上に白色ですか。《聖者の魔人》メルフェゴール・ジュピトナー…あの偽善者以来といった所ですね。基本魔人は聖者になる場合もありますが生まれた瞬間から聖者とは数奇な物ですねぇ。これがまた転機になって変わっていくんですか…まあ、どうでもいいか」
《療養街》から遠く離れた大木の上で覗き視る、喉の奥で哂いながらふらりとその場から姿を消した……。
第02話《××××××》偏 みんなの在り方・選択・邂逅・他者の在り方
「暑くもなく寒くもなく居心地が良いってわけでもない、虫もいない……」
「なんか、触っても本物っていうかフェイクグリーンぽい質感」
「鑑定は植物と出ます……」
「植物だけど、これプラスチックに近い感じ。不変的」
蒼夜、懐記、外神、佳月が転移した森の中を散策し、森の中で自然と不自然さを感じていた。
地面と草花に木々、至って普通の森、それは遠目から見ればの話しだ。
近づけば近づく程、見れば見る程不自然さを違和感を感じてしまう。
「変な芸術家が描く森みたいな」
「この花、花の中に花が咲いてる。おもしろ」
「こちらの木の洞の中には花が詰まってます」
蒼夜は舌を出し、懐記は咲いている花を見ると花びらに花が咲いている、外神は木の洞の中を伺うとぎっしりと小さな花が詰まっていた。
「歩いていても足音がしない、土の跡も付かない」
「わ、佳月食べるなよ。知らん世界の植物なんか」
「……味ない無味無臭」
「そうかも、花の匂いもしないわ」
佳月が地面を踏みしめても柔らかな土には足跡が付かない、適当に摘まんだ葉を口に入れて噛み蒼夜が慌てるが口から吐き出し味が無いと酒を収納空間から出し口直しに煽る。
懐記も周辺には匂いが無いと言い、居心地が良い世界ではないなと思いながら散策すると外神が何かを見つけ足を止めた。
「空から見た時に佳月さんが気にしていた何かがこの先にあると思います、認識阻害や隠蔽魔法を掛けているみたいです」
「第一森人発見かな?行ってみよう」
外神が言い蒼夜が挨拶も兼ねて行ってみようと転移で向かった……が、何故か狙った場所に転移出来なかった。
「空間を捻じ曲げて魔法やスキルで近づくと着かないようにしているみたいです」
「じゃ、あるこ」
外神が冷静に判断し、じゃ足で歩けばいいじゃんと懐記が率先して歩いて向かった…。
「来ましたか」
「おはようございます、オーナー」
「おはようございます、継士さん。これからですね」
「はい、もう時間ですね。今日は何をしようかなって採取もいいですけどキーホルダー作りもいいかなー売り切れになったハーバリウムもいいかなって、それか新しいことしてもいいかなー」
現在の時刻朝06時50分日本、雑多な店の中のカウンターで黒い手袋と派手な植物柄のシャツから覗く肌には植物のタトゥーが見える年齢不詳の男と2階から降りて来た少年が挨拶を交わす。
「そうですね、今日は忙しいかもしれませんし忙しくないかもしれません」
「わ、出た。オーナーの予言、当たるんですよねー」
何処か気軽に行ける山かハイキングに行くような軽装をした少年継士がうわとやや嫌そうな顔をする、オーナーと呼ばれた怪しげな男はカウンターでごそごそと何かを取り出す。
「なんですか?この黒い?なにこれ?」
「最近の若い子は黒電話も見た事がないんですか、時代の流れは残酷ですね」
「へ、くろでんわ?え、これ電話?」
「そうですよ、これが受話器でこれを取ってこのダイヤルを回して電話を掛けるんです」
「?電話だけですか?」
「はい、電話だけですよ。掛ける事も出る事も出来ます」
「それしか出来ないのにこんなに場所を取るんですか?」
「そうですよ、それだけ出来れば充分でしょう」
「ええーそうかなー」
「それはそれとして、緊急で連絡を取りたい場合はこれを使って掛けて下さい。この店の番号は継士さんのスマートフォンに入ってますから」
「分かりました」
オーナーが黒電話の受話器を取ってダイヤルを回すと使い方を教えてくれる、このオーナーとの付き合いも2年以上になるから何を言われても突っ込まず貰える物は貰う、オーナーが言う事や出してくる物は必ずその通りになるし使う時が来る。
「あ、時間だ行ってきます」
「はい、行ってらっしゃい」
壁に掛けられた星と月と太陽のなんとなく見づらい時計が7時を指す、手短に挨拶を交わし黒電話を黒い巾着に入れるとちょうど継士の姿が目の前からすうと消えていく、オーナーにもいつもの光景のようで軽く手を振り見送った。
「これから忙しくなりますね、そろそろ向こうの様子も気になっていたからちょうど良いですね」
オーナーはくすりと嗤う、それは何処かの誰かによく似た笑みだった……。




