第096話 festival:57≠父よ子よ子らに祝福を24
第095話 festival:56≠父よ子よ子らに祝福を24
「おいおい、向こうも面倒そうな感じになっているぞ」
「いや、彼らならば問題ない、俺達は目の前の事を片付ける。《破壊卿》気づいたか?」
「はい」
「何故私を除け者にするんですの?心外ですわ」
グーストが片目を閉じて別な場所を見ているようで《墓守》も頷きエリュエルはコーデルリングの後ろに控えている子ども達の更に奥の魔人を見ていた。
カーデュナルはやや不満そうだが、奥にいる気弱そうな魔人からは特に何も感じられない。
「話しはもういい、子を渡せといっても渡さないだろう」
「ならば力づくで来ますか?貴方怪我をしていますしね。それで話し合いや回りくどい事をして戦闘を極力避けているといった所ですね」
「魔人が怪我?」
「そうなのか?治療するか?」
コーデルリングは見下ろし様子を伺っていた蒐集家が嗤いながらそう告げる…チリン…、《墓守》は疑問を抱きグーストは万能薬ならあるとコーデルリングに声を掛ける。
「だからなんだと言うのだ」
「っ!っぐ」
コーデルリングは眉1つ動かさず無表情に手を宙に伸ばしアドゥリスが守る赤子が入った箱の地面に土の棘を生み出し箱を奪おうとしアドゥリスが身を挺してそれを阻む。
「今の貴方では我々から奪うのは難しいですね、まだやりますか?」
「ああ、キリスタ。出せ」
「は、はい、わ、わかりました」
「蒐集家様ならばあの魔人が何者か分かりますか?」
「……そのうち分かるでしょう、愉快な魔法具…いえ、魔術道具を使い正体を隠しているようですね」
後ろに控えていた魔人キリスタがびくびくしながら懐から出したナイフで空間を裂く、エリュエルが蒐集家にキリスタの正体を訊ね蒐集家は愉快そうにしている、傍らで身体を土の棘で貫かれたアドゥリスに万能薬を飲ませながらキリスタに注視する。
「魔人だな、仲間か」
「でも、様子がおかしいですわね」
「………不味いな」
「あれは…」
裂いた空間から押し出されるように出て来たのは2名の魔人、だが口には猿轡をされ手には黒い縄のような物が巻かれ目は虚ろな魔人達に《墓守》とエリュエルは表情を曇らせる。
「キリスタ」
「は、はい」
キリスタがナイフで3名の魔人を拘束する黒い縄を切り彼らと共に室内へと転移し、アドゥリスの目の前にコーデルリングが現れ風圧で壁へ吹き飛ばす。
「っく」
「此処に来たところで赤子は渡しませんよ?」
「そうか」
「あ、あ、おいしそ」
「おなかすいた……」
「ごはん」
「さ、さ、みなさんごはんのお時間です、さ、どうぞ、今日のごはんは彼です」
箱に指を伸ばすコーデルリングの指先を蒐集家の背から出した蔦がそれを阻む、キリスタがごはんの時間だと魔人たちに伝えると猿轡を自分の手で解き、ぼたりと地面に染みを作る程の唾液を垂らしながら一斉にアドゥリスに襲い掛かる。
「な、よせ!」
「いったい何が」
「私たちはブロッカさんを」
「ええ、蒐集家様、箱の赤ちゃんはお願いしますわ」
「……これは…」
アドゥリスに向って口を大きく開ける魔人達をグーストと《墓守》が止め、エリュエルとカーデュナルが眠るブロッカの元へ身を挺して前に立つ。
蒐集家は魔人達を見て首を傾げる、普通に彼らの行動に疑問を抱くがコーデルリングの手から容易く箱を守る、やはりこちらも本調子ではなさそうだ、ならばと蒐集家は嗤った…チリン…。
「そうですか、貴方の怪我、傷は彼らに喰われたからですか。痛いですよね、同族に喰われたのならば。並みの魔人なら発狂しているでしょう、流石は最上位」
「私を見下し嘲笑するな、帝。そいつらは最上位にのみ食欲を生み出す、新たな進化を獲得した下位の魔人《共食い》共だ」
「それはそれは、弱い下位の魔人の逃げ道ですね。なるほど素晴らしいです、虐げられる側狩られる側が虐げる側狩る側ですか。とても面白いですね、そう思いませんかフゥさん」
アドゥリスもすぐに体勢を立て直し此方へ来ようとするが目を血走らせアドゥリスを喰らおうとする魔人達が阻み狼狽えている、蒐集家はその光景とコーデルリングの話しに増々嗤い、そしてキリスタの方を向き嘗てメンルェトの育ての親であり《ナイジアナ皇国》の貧民街で暗躍していたフゥの名を呼んだ。
「へ、え」
「キリスタの事を知っているのか?」
「ええ、演技が中々お上手ですね。ですが私の前では無意味ですよ?貴方からフゥさんの匂いがしますから、さあ、そろそろこの下らない茶番劇に幕を降ろしたいので正体を現して下さい」
キリスタは狼狽えコーデルリングに助けを求めるような視線を送るがコーデルリングはそれを無視し蒐集家に訊ねる、だが、グースト達はそれどころでは無かった。
「お、おい、これどうしたらいいんだ」
「帝、彼らを傷つけたくはない。眠らせる事は出来るのか?」
「ごはん」
「おなかすいた」
「おいしそう」
「う……そこを通して……なんだ……彼らを見ていると……なんだこの気分は」
「それは恐怖という物ですね」
鞘を付けたままの剣で怪我をさせないようにとこれ以上アドゥリスに近づくのを防ぐ、アドゥリスはひたすら食べたいと言う魔人たちに足元から厭な背筋がぞわりとするような感覚に狼狽える。
蒐集家はそれは恐怖だと告げ、素早く収納空間から針を出し魔人たちの首筋に打ち込んだ。
「ごはん!」
「よこせえええ!」
「め!め!」
「ふざけんな!酷くなったぞ」
「足を斬り落として動きを封じる、すまない、手荒な事はしたくはないが」
「おかしいですね、異界の魔人にも効く鎮静剤と眠り薬を塗った針だったんですが。それ以上にアドゥリスさんを喰らいたいと言う意思が強いのでしょうね、なるほど」
だが大人しくなる筈が余計興奮し、グーストから抗議の声が上がり《墓守》から手段は選ばず動きを止めようと手元の剣を骨剣へと変えた……。




