コーデルリング・ノールデルメール
コーデルリング・ノールデルメールは外見はそれはそれは美しい少年の外見をしている、深すぎる濃い青い少々くせ毛な髪、ほぼ黒のような蒼い瞳が印象深く見た常人はその姿から目が離せなくなる程だった。
だが、内面は意外に堅実的に割と普通の思考の少年だった…。
「金を稼ぐと言うのは存外面倒な事だ、それにこの外見」
コーデルリングがいる国はとても貧しく常に小さな小競り合いを行い続け疲弊し続けている、子どもが独りでいれば……。
「んだぁ、こんなところに小奇麗なガキが1人でいるぞー」
「なんだー随分身形がいいな、まさか貴族のガキか?」
「なんでもいいじゃねえか、とっとと捕まえて売り払っちまえ」
独り森の中に佇む少年等明らかにおかしいだろう、薄汚い盗賊が舌なめずりをしながら得物を手にコーデルリングの前にニヤついた顔で寄ってくる、コーデルリングは無表情に手に何も持たず立っている、無防備過ぎて通常なら盗賊を見た子供がする態度ではないと気付くだろうが、盗賊共は金になる美しい少年を前に思考は鈍くなっている。
「あがぁ」
「うが」
「ぎゃあ」
「貴様らが大した物を持っていないのは明白、貴様らの拠点を吐いてから死ぬが良い」
盗賊共はその場で地面から現れた土の槍に貫かれその場で虫の息と化す、コーデルリングは冷ややかな視線で息も絶え絶えの盗賊共にアジトの場所を吐かせた。
「人は脆いな、すぐに転生するからこんな脆い肉体なのだろうな。私達と違い魂は廻り続ける、おかしな物だ、何故こうも《アタラクシア》は違う物を生み出していくのか」
盗賊共は息絶え死骸はそのまま地面に捨て置かれ、土の槍は消え踵を返し盗賊共のアジトへ向かった。
「期待などしていないが、こんな物か」
森の中の洞窟、薄暗く蝋燭によって不安定に灯された周囲はコーデルリングの急襲により一瞬で血の海と化した。
そこに残す命は何もない、彼は魔人だから、無慈悲に奪うだけだ。
「金と宝石、後はいらん」
コーデルリングはアジトの中で偉そうにしていた頭の男の懐から革袋に入れた金と宝石だけを抜き取る、後は売るのも持ち帰るのも面倒だ、収納空間を持たないコーデルリングは余計な荷物を持つのが嫌いだった。
魔人とは言え腹は減る、こんな国、名前すら覚える気も無いくだらない国、人が作った物売っている物は食べる気がしない、自身で狩りをして捌き調理する……そんな面倒な事などしたくもない。
だからコーデルリングが取った選択肢はその辺の草、土等を食べる事だった。
「腹が満たされればいい、これらはどこにでもいくらでもある」
毒なども効かない魔人だ、コーデルリングは適当に森の中の草を掴んで根と土が付いたまま咀嚼した。
町のような村のような場所に歩いて戻る、辛気臭い陰気な場所、活気は死に人々はなんとか生きているだけだった。
戦で男は連れて行かれ女や子供は売られて行き残っているのはいつ死んでもおかしくない老人達、彼らは成長しない美しいが不気味な少年をいない物のように扱う、コーデルリングはその腫物を扱うような見てはいけない物を懸命に見ないようにしているこの街の朽ちて打ち捨てられた城を根城にしていた。
かつては王国だったらしいがそうでなくなって百年以上の年月が経つ城、歴史の長い王国ではあったらしいが最後の国王が愚王で勝ち目のない戦を仕掛けた結果がこうだ。
何処か陰湿で昏く赤い城内、壁はひび割れ調度品等何もない、コーデルリングは朽ちた玉座に座って静かに過ごす事を気に入っていた。
最上位の魔人としてこんな生活を送っているのは果たして正しいのかどうかは別として、コーデルリングはこの生活に特に不満は無い、懐から出した革袋を宝石を抜いて玉座の後ろに放るとヂャリと重い音と同じような革袋にぶつかる音、金が必要な時はそこから金を持ち出す。
コーデルリングは宝石に魔力を注ぎ形を変える、平たく穴が2つある菱形のボタンが出来上がった。
それを指先で弄ぶ、良い形良い出来だと満足していた。
そうして幾年月、紆余曲折を経て加わった4名の最上位の少年達、コーデルリングを勝手にリーダーだと仰ぎ朽ちた城を勝手に住み易くし勝手に居座り勝手に生活をし、勝手にコーデルリングが集めて来た金を使っているラビリンド、ジークニキア、ニーベルゲイン、ソーレラース、コーデルリングは自分の邪魔さえしなければいいと放って置いていた。
「リーダーって服とか布が好きなのー?」
「うるさい」
「似合う」
「うん」
「うるさい」
「皆、これは所謂趣味と言う物です。リーダーは服を作ったり宝石を加工し宝飾品を作るのが好きなのでしょう。我々魔人はそういった事に長けているんです。私は数や会話が好きです、ジキニは木彫り、ニルは採取や掃除や片付け、ソカは……」
「生き物好き」
「それと無駄遣いー」
「私の金を勝手に使っての無駄遣いだ」
コーデルリングは玉座で針と糸で布を縫う、見事な刺繍を施した布に小さな宝石を縫い付けていた、それを見たジキニが首を傾げ、ニルとソカがそうやって縫っている姿が似合うと褒め、コーデルリングは何処かイライラとそっぽを向き、ラビが咳払いしぞれぞれの好きな事を告げる。
そうやってラビ達が笑う、コーデルリングは針と糸で見事な鳥の刺繍に目の部分に赤い宝石を縫い付け完成させた。
ジキニがすごーいと言いニルとソカも褒め、ラビもお見事ですと笑う。
うるさくて煩わしいが、悪くはない、悪くは無かった…あの化け物共に遭うまでは……。
「《アタラクシア》は我々を駆除するつもりか、これが驕った我々への《アタラクシア》からの報復か……」




