18話 ゴーレム
初めての防衛戦に見事勝利した俺達はまだ腹に余裕を残していたという事もあって再び朝食を挟んでからそれぞれの仕事に分かれていた。
朝食を終えた後の俺は人間達からスキル:アクアボールlv1、剣術lv3、剣術lv2、硬皮、鍛冶lv1、氷耐性【小】、火耐性【小】×2を取得、その内剣術と火耐性【小】は重複 して【二刀剣術】、火耐性【極大】に変化。
それにイートリンクlv1の効果でゴブトの火耐性【小】 が火耐性【大】に。
ハンタースパイダー達も全員火耐性【小】を取得。
更にその内の1匹ヒィは鍛冶lv1も取得してくれた。
戦力強化としてこの鍛冶lv1をヒィが取得してくれたのは大きい。
矢と槍があればゴブトの遠い敵への攻撃手段が増えるし、大量生産したこれらで罠にかかった相手への追撃も可能になるはず。
今日のところはこの槍と矢の大量生産に向けて俺とヒィが外へ素材探し、ゴブト、フゥ、ミィには留守番と罠の修理を任せてある。
洞窟だから仕方ないが巣の中の光が松明頼みなのも気になるという事で、光を通すような穴、つまりは窓の設置も出来たらいいって話もしたから手が空いたらそっちに取りかかる可能性もある。
本当はレベルアップに前向きなゴブトをこっちに連れてきたかったけど、巣をハンタースパイダーのヒィ達だけで守らせるのは流石に不安すぎたからこの分け方をしたっていう訳だ。
こういう時の為の門番的な存在はやっぱり必要――
「ギギッ!」
「おっ。またあったか」
そんな事を考えながら歩いているとヒィが黒い石を見つけて鳴き声を上げた。
「黒曜石は研磨して矢じりなるから、一杯持ち帰るぞ」
「ギギッ!」
この森を歩き続けていると斜面がきつくなっていて、上る程に視界が良くなり始めた。すると地面に茸や山菜の他に黒い石が現れるようになった。
黒い石の名前は黒曜石。
今は鉄や銅といった素材から武器を作るのが主流だが、大分昔にはこれで狩りをしてたっていう話を聞いた事がある。
人間の古い文明をなぞる形になるけど、鉄鉱石を採取、更には加工場が出来る様になるまではこれで我慢というところかな。
「ギギッ!」
「おっまた見つけたか! ……あれ? でもこれちょっと色が違くないか?」
ヒィが再び声を上げたから俺はヒィのいる場所に移動して足元を見た。
でもそこには黒曜石ではなく茶色の違う石が地面から顔を出していた。
これって鉄鉱石かな?
俺が知ってる鉄鉱石の採掘場所はもっと木々の少ない山を掘り進めたところにあるんだけど、こんな場所でも採掘出来るのか。
アナウンスによると鍛冶lv1の効果はあくまでその素材の形状変化のみ。
決して製鉄が出来る訳じゃない。だからこのままの鉄鉱石にスキルを使っても出来るのは茶色い不純物の混じった微妙な武器だけ。
どうしようかな?
荷物が重くなると帰るの大変そうだし、一応場所だけ何か目印付けておこうかな?
「目印目印……まぁこれで分かるか」
俺は持ち歩いていた冒険者の落とした剣を目印としてその場に突き刺す。
しかし抜けない為に深めに差し込もうとしても剣の先が硬いものに当たって先に進まない。
もしかしてデカい鉄鉱石にでも当たったのかな――
「うおっ!」
「ギギッ!」
グリグリと剣をねじ込もうとするとぐらりと地面が揺れ、俺とヒィは思わず声を上げた。
地震か? でも、少し先の木は揺れてないような――
「オーン……」
地面の揺れに違和感を感じていると、低く呻く様な声が響き、足元の地面からゆっくりと何かがせり上がる。
ゴツゴツとした見た目のそれは、頭の部分だけで俺と同じ大きさがあり、目玉は黄色く光って不気味。
何よりも気になるのはその身体の一部を覆っている銀色の輝き。
これってもしかして鉄か?それだとしてこのモンスターは一体……。
『鑑定lv3』
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種族:ゴーレム
名前:無し
レベル:34
進化回数:0
状態:良好
スキル:火耐性【大】、氷耐性【大】、雷耐性【大】、毒耐性【大】、補食製鉄lv1、アースウェイブlv1
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ゴーレム、聞いた事のないモンスターな上になんかレベルがやたらと高いな。
火耐性【大】もあるからファイアブレスはあまり効果がないかも……。
なら剣術と爪で戦うしかないけど、あの銀色に製鉄のスキル、間違いなくあれは鉄。
俺の今のレベルとスキルで切り裂けるか?
一応冒険者を食べて俺もヒィもレベルが1上がってはいるけど。
「プペッ!」
のろのろと起き上がるゴーレムに対して俺が思考を巡らせていると、ヒィが麻痺の毒液を吐き出して早速戦い始めた。
相手はレベル34で強さ的に格上の可能性が高い。
考えるよりも手を出さないと駄目って事をまさかヒィから学ぶことになるなんて思いもしなかった。
「ヒィ! 毒は効き辛い! 俺が攻撃しやすいようにゴーレムを糸で拘束してくれ!」
「ギギッ!」
俺がジェスチャーを送りながら指示を出すとヒィは毒液を吐くのを止めてカサカサとゴーレムから距離をとった。
そんなにジェスチャーが上手かった訳ではないけど、こうして動いてくれたのは俺やゴブトが話し掛けていて、言語を少しずつ覚えているからなのかもしれない。
「オーン……」
距離をとった事でゴーレムは鳴きながらヒィを追う。
やはり麻痺の効果は薄い、というよりも効いていない。ただその足が遅すぎて、追いつかれる気はしない。
これならヒット&アウェイで楽勝――
「オー、ンッ!!」
――ドンッ!!
俺が攻撃に打って出ようとしたそのとき、ゴーレムが振り上げた腕を地面に思い切りぶつけた。
鈍い音と共に地面が揺れ、更にはそれが波のようにうねる程強い衝撃波が発生する。
俺は衝撃波によって飛ばされ、全身が木に打ちつけられた。しかも骨が振動しているのかと錯覚する程身体の芯まで衝撃波は届き、そこら中が痙攣。
麻痺とは違う効果で動く事を封じられてしまった。
「ギギ……」
「ヒィ、お前もか」
声のする方へなんとか視線を向けると、そこには俺と同じ状態であろうヒィが苦しそうに地面に伏していた。
相手の動きがいくら遅いといってもさっきのを何度も繰り出されたらたまったものじゃない。
俺はまだ粘れそうだが、ヒィは次で殺られる可能性だってある。
折角見つけた製鉄係だけど挑むにはまだ早いモンスターだったらしい。
「オーン……」
「幸い連発は出来ないか……。身体は……少しだけどもう動きそう」
俺はまだ正常に動かない身体を根性で動かし、翼を広げた。
ふらふらとしか飛べないが、それでもヒィを持ち上げることに成功。
爆速で溜まる疲労に耐えながら俺はとにかく上へ上へ飛んだ。
高い場所は衝撃波の範囲外。
逃げるなら上空からの一択。とはいえこれは流石に辛すぎ――。
「オーン……」
ヒィの重みと疲労と痙攣で逃げようと羽ばたかせた翼が段々と元気を失い始めた頃、ゴーレムは俺達に攻撃をする事を諦めたのか、ゆったりと地面の中に戻り始めた。
ゴーレムが姿を現すきっかけになったのは俺の剣。
という事は一度俺達から気を反らして、そして危害を加えなければ襲っては来ないはず……。
「はぁ。負けたのってなんだかんだ初めてだな。悔しい。悔しいけど……あ、もう限界」
「ギギッ!?」
安心して気が抜けた俺はヒィを抱えたまま地面に落ちていくのだった。




