17話 火力と耐性
「まさかこんなところにドラゴンがいるなんて……。成竜だったらヤバかったが奴はまだ小せえ。必ず殺してあの皮を剥ぐぞ!」
「分かってるっすよ!! くくく……興奮して手が震えてきた」
俺の後ろをついてくる冒険者達は物騒な事を言いながら、腰に提げていた剣を抜いて並々ならぬ殺気を放つ。
もう冒険者達の意識は俺を殺す事、追いかける事だけしかないようだ。
そろそろ落とし穴の場所になるけど、最高の状態でお迎え出来そうだ。
取り敢えず、俺まで落とし穴に引っかかる訳にはいかないからこの辺から飛んで移動させてもらうとしよう。
――バサ!
「あいつ飛ぶつもりか!?」
「落ち着け! 外で飛ばれたらもうどうにも出来ないが、ここは洞窟。飛んだところで逃げられやしない。それどころか奴の移動速度が下がった。一気に攻撃するぞ!」
「了解っす!!」
馬鹿だなこいつら。
飛ぶ速さが遅いのはより罠に引っ掛けやすくする為、勢いよく飛び込んで来させる為の演技。よくよく考えればこのタイミングで飛ぶなんて行為がおかしいって事に気付くはずなんだけどな。
――ドシャ!
あからさまに罠だと分かる落とし穴の蓋が冒険者達の重みで綺麗に崩れた。
落とし穴の深さは5メートル程。冒険者の身体能力が相当高くない限り上がってくるのは困難なはず。
しかも掛かったばかりは絶対に混乱している。今のうちに念には念で速攻で追撃を仕掛ける。
「ゴブト! ヒィ、フゥ、ミィ!」
「了解! 全員ビリビリ液! 発射!!」
「「プぺッ!!」」
落とし穴に向かって毒液が放たれる。
さっき飯を食っておいたお蔭で毒液が絶え間なく吐き出され、冒険者達の顔面にびしゃびしゃと降りかかる。
冒険者達は案の定動く事が出来なくなり、剣を握る事も難しいのかその手は空。
まだスキルによる攻撃が残っているかもしれないが、ここまでくれば大体安全だろう。
「くそ!! 身体がろくに動かねない! 動いてもねばねばしたのが底にあって……」
「狼狽えるな! 焦れば焦る程思考は鈍る! ……。とはいえこの状況を打開するには……ちょおっと苦しいかもしれないが我慢しろよ。……【アクアボール】」
穴の中を覗くと年上の冒険者の手から水色の光と丸い水の塊が。
おそらくだけど穴の中を水でいっぱいにして浮力で抜け出そうとしている。
麻痺の毒は動きを止める事は出来るけど、スキルを封じられるわけじゃないからこういう打開策までは対策出来ない。
同じ策を思いつく、或いはスキルを持っている冒険者は限られているだろうから今回は特別運が無かったって事になるな。
「ネイル様! あいつ何か始めた! 俺、遠距離攻撃出来ない!」
手持無沙汰になったゴブトが口に手を当てながら、慌て始めた。
落とし穴にはめたはいいけど、矢とか槍の準備は必須だったか。
ふぅ、仕方ない。今回は俺のファイアブレスで体を焼いてしまおう。人間の肉はレアで食べるのが美味いと思っていたけど、そんな贅沢を言っている暇はない。
「……。があああああああああっ!」
俺は思い切り息を吸い込んだ後喉に力を溜めると、それを一気に吐き出した。
さっき放ったファイアブレスよりも間違いなく火力はある。もしこれで駄目だったらちょっとヤバいかもな。
「ぐあっちっ!! あいつさっきより強い炎を……。低い火耐性じゃ防ぎきれねえ! おい! お前があの炎の球の壁になれ! 俺に覆いかぶさる程度には動けるだろ!」
「それじゃあ俺が死んじまいますよ!」
効いてないわけじゃない。だけど、一撃でもない。
水は徐々に水位を上げている。
奴らが死ぬのが先か、浮かんでくるのが先か……。
「もう1回溜め――」
「うらあああああああっ!!」
「「プぺぺッ!!」」
俺がもう1度ファイアブレスの溜めに入るとゴブトが砂や石を、ヒィ達が毒液と糸を落とし穴に向けて放つ。
「ぐっ! こざかし――。あーっ!! 腹が立つ!!」
「早く! 早く水を!!」
「わーってるよ!!」
冒険者の手が止まる。
致命傷にはならないけど、間違いなく効果があったんだ。
「ネイル様溜めてる間、俺達が攻撃する!」
「「ギギッ!!」」
ゴブトは親指を立て、ヒィ達は片足を上げた。
そうだ。俺だけが何とかすればいいんじゃない。俺には絶対裏切らないモンスターの仲間がいる。
戦闘の時だってもっとこいつらの事を頼ってかないと駄目なんだ。
「……があああああああっ!」
「あ、あっじぃぃいいいいい!!! 駄目だ、俺、なんだか息が……」
「もう少し粘れ馬鹿野――」
「うらあああああああっ!!」
「「プぺぺッ!!」」
「……あーっ!!! 雑魚共が!! いい加減に――」
『スキル:ファイアブレスlv1のレベルが上がりました。使用方法は変わりません。威力、範囲が強化されました。貴方に神のご加護が有らんことを』
3発目のファイアブレスを撃ち出す寸前、ゴブト達の攻撃で年上の冒険者が発狂した瞬間アナウンスが流れた。
アナウンスに対して威力にどれくらいの差があるのか聞きたかったのだけど、このタイミングだとそれを聞くのは無理。だって、もうこれを撃ち出したくてしょうがないのだから。
「がああああああああああっ!!」
「なっ!! でか――」
放たれたファイアブレスlv2は落とし穴に蓋をする様に冒険者の元へ。
すると焼けつく土の匂いや蒸発した毒液のきつい匂い、それに人間の焦げた匂いが辺りに広がる。
しかもファイアブレスの火はしばらく続き、俺達はただただそれが消えるのを待つばかり。
lv1とlv2でこんなにも威力に差が出るもんなのか。
「――終わ……った?」
バチバチという火の音が消えると、ゴブトがそっと顔を出して落とし穴の底を見る。
「真っ黒け……。でも、人間生きてる、かも」
「今ので死んでないのか?」
ゴブトのその報告を受けて俺も急いで落とし穴を覗いた。
2人の冒険者は確かに黒く燃えてるが、息をしている様で微かに動いて見えた。
火の耐性があるって言っていたから、それが上手く機能したのだろう。
耐性か……あ、そういえばこいつらの【鑑定】まだだった。
『鑑定lv3』
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種族:人間
名前:エリオ
レベル:32
進化回数:0
状態:瀕死、火傷
スキル:剣術lv2、アクアボールlv1、火耐性【小】、氷耐性【小】
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種族:人間
名前:ダドリー
レベル:22
進化回数:0
状態:瀕死、火傷
スキル:剣術lv3、火耐性【小】、硬皮、鍛冶lv1
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危機から脱した俺はのんびりと2人を鑑定する。
やっぱり2人とも生きてはいるみたいだな。
それにしても今ので32レベルと25レベルか。
モンスターと比べて進化が無い分、人間は全体的にレベルが高いのかもしれない。
「生きてた?」
「ああ。でも、こいつらはもう瀕死。もう反撃する事はないさ。……。みんな、初めてにしてはよくやったよ」
「あ、りがとうっ!! やった、やったぞおまえら!!」
「「ギギギッ!!」」
ゴブト達は勝った事が相当嬉しかったのか、それとも褒められたのが嬉しかったのか、小躍りを始めた。
俺も嬉しい気持ちはあるけど、今回の事で課題も見えた。
罠や遠距離攻撃の出来る武器の作成をしないとな。
都合よくそれらしいスキルを持ってたやつもいたようだから弓の1つや2つは余裕だよな?
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