悪いのは王太子たちだよね。
「うぉぉぉぉ、我の娘が、我の愛する娘がぁぁぁ」
マイ・エンジェルのポヤン発言で力が抜けたのか、公爵がわんわんと泣き出した。
「お父さまぁ、この方どうなさったの?」
大丈夫ですかぁと、首コテン攻撃。
公爵のHPがゴリゴリ削られてゆくのが見えるようだ。
「こ、こんな小娘にぃぃぃ」
ホロホロと流れる涙は真珠のよう。きもっ。
「公爵。うちの娘はいつもこんなです。ごらんの通り、かなりのアホであります」
「お父さま、ひど~い!」
親の欲目を盛々加えても、残念ながら事実なんだ……マイ・エンジェル。
「自慢じゃありませんが(自慢だけど)娘は超絶美少女です。しかし救いようのないアホなので「もぉ~」このアホ娘が「いや~ん」王太子たちを篭絡するなぞ出来ようはずもございません」
「う……うむ」
うむって頷いた。うむも初めて聞いた。妻に自慢しよう。
「俺が持つ情報ですが、最近の王太子と側近候補たちは悪い遊びに夢中になっています。えぇ、金と女ですよ。被害にあった者たちが泣き寝入りしているので表面化はしていませんが、学園に入学したら彼らの遊びの対象は令息令嬢に移行していくかと……」
公爵が口を挟まないように、一気に影情報をぶち込んどこう。近くの噴水に誘導しながらね。俺たち注目の的だし……「お父さまぁ」はいはい、ちょっと待ってね「ねぇったら~」はいはいはい、後でね。
「公爵のお嬢さんが王太子に苦言を呈している姿を近頃よくお見かけします。疎ましく思っている彼の口から『婚約破棄』の言葉は、冗談半分ですが既に口に出されているようで……あと、人間が死ぬところを見てみたいと、側近候補たちと酒の席で盛り上がっていたとも聞いております。
恐らく、うちの娘は言葉巧みに……いや、チョロっと持ち上げられてゲームの駒にされたのでしょうね。アホッ娘は弄ばれて仕舞ですよ」
「そなた、いったい……」
そこは追及しないでくれ。ふっ。
……ん? 影の同僚がいる。
監視対象は……あぁ、あの高笑いしている連中か。
「………ねぇ、公爵。あいつら、潰しませんか?」
側近候補を引き連れた王太子が、通りすがりの女性を脇道に引きずり込もうとしている。
公爵令嬢を蔑ろにするなら、男爵令嬢なんて歯牙にもひっかけねぇよな。
いらねぇだろ、あんなクズ。娘のほうが大事。影の忠誠なんてクソくらえ。
でも、忠誠は王家にであって、王族にではない……念のため。この違いわかるかな?
「我にまかせよ……」
脱力していた公爵の背がピンと伸びた。
「はぁぁぁぁっ!!」
えっ? いきなり魔法弾ですか? もうちょっと暗躍とかしません?
うわーっ! 直撃ーっ! 無関係な通行人も吹き飛ばされてまーす!
はっ、影の同僚は? 飛んで回避済み! こっちに気付いて『イエイ』とサインを送ってくる。
俺も娘を抱えて回避! ついでに『姿消しの術』でとんずら!
さらば、公爵……また逢う日まで。
…………数日後。
「お父さまぁ。新しい王さまって、このあいだ泣いていらしたおじさまに似てません? 気のせいかしら」
気のせいじゃないよ、マイ・エンジェル。
あのヒゲのひと……お父さまの、今の上司なんだ。
fin.





