139-10 ここからが本番です
お次は王妃様の出番だった。
彼女の機体は、例の自分の若作り冒険者スタイルだ。
これは仕方がないから作っておいてやった機体なんだよね。
対するは、なんとミニョンの『プリティドッグ1号』だ。
こいつは人間には操縦出来ないプリティドッグ専用機体だな。
前は犬雛様になっていたのでヒナダムで遊んでいなかったのだが、今回は女の子も皆こっちへ来てしまったので、この子も参加している。
「う、なんていう破壊力なのかしら」
それと対峙した王妃様は、たじたじの有様だった。
さしものこの方も相手がプリティドッグでは相手が悪い。
そして、その機体はプリティドッグそのもの。
いや、メカなので本物とはまた違った可愛らしさなのだ。
なにせケモナーたるこの俺が丹精込めて作ったんだからな~。
モデルと一緒に暮らしているんだし。
おまけに犬体形の機体なので、ミニョン本人は当然犬体形で四つ足状態なのだ。
その方が上手く動かせるからな。
そもそもエリーンのように特殊な装置まで使って四つ足マシンを操る人間の方がおかしいのだ。
まあ、ネタみたいな感じで四つ足などのモンスターっぽいものを作って乗る奴もいるのだが、あれはまた操縦系統が異なるのだ。
あれは足回りは自動で動いてくれる半自動操縦なのだ。
今回は色々と操縦システムにも凝ってみたので。
基本は、四肢に繋いだマジックリングからワイヤーの動きを通して、またそれを伝った思考を通して人型を動かすのだ。
おまけに会話も可能で、それによりヒナダム・ジャイアントのテンションを上げる事さえ可能なのだ。
「行くよ~!」
恍惚とした感じで棒立ちになっている王妃様のヒナダム・ジャイアントに向かって、一目散に駆け寄って攻めるミニョン。
攻める、攻める、攻める。
子供なので、相手が王妃でもまったく遠慮がない。
いや日頃から遠慮はないし、他のプリティドッグの奴らもこの王妃様には昔から遠慮がない。
だがプリティドッグ相手に反撃などとても出来ないので、まさしくサンドバック状態の王妃シャルロット様。
せっかく特別に作ってやった機体だというのに、何一つ実力を見せる事無く終わるようだった。
あっというまにバラバラにされてしまっていたが、巨大プリティドッグと心行くまで遊べたので、満足そうな恍惚状態だった。
おまけに、何故だか知らないのだが自動回収機能でも戻ってこないし。
一体何がバグっているんだ!?
「おい、ゴーレム係員。
『あれ』、さっさと回収してきてくれ」
そして大会の方は、なんなく順当にファルの進撃の女神がプラザステージ部門で優勝していた。
みんな、ここは小手調べという感じで、本番のキャニオンコースでの調整といった感じだ。
ファルも全力を出していたわけではないので、機体は十分にもっていた。
前とは違い、今回は機体の限界を知りつつ能力を引き出しているのでいいのだが、それでどこまでやれるかが、この機体の課題なのだ。
そしてステージはキャニオンコースへと舞台を移した。
ここでなんと、レミとアンソニーの組合せだ。
しかも、どちらも壁面機動力を持たないタイプ同士の戦いなのだ。
このステージでは、あまり意味をなさない組み合わせで始まってしまったな。
敗退したマリア導師はもう大会を切り上げてきているので、じっくりと御酒タイムだ。
レミと戦えたので満足だったらしい。
虎獣人アンソニーの機体はイビルタイガーだ。
本物の魔物であるイビルタイガーは、剛毛に覆われていてなかなか手強い相手なのだが、ここではつるつるボディでデカールまで張られてしまっているので、そこまでの威厳はない。
アンソニーはレミの面倒を見ていたグループのリーダーをしていたし、今でもレミの面倒をよく見てくれている。
トーヤと双璧をなすレミの御兄ちゃんなのだ。
「ファイっ」
「それー、アンソニー」
これはもう、うちの小さい子達が大好きな、一番大きな御兄ちゃんであるアンソニーに向かって懸命にむしゃぶりついていくノリそのものだ。
回り込んで攻めるアンソニーを牽制し、じわりと壁際に追い詰めていくレミ。
そして全力の短距離ダッシュ。
とっさに回り込んで逃げようとするアンソニーの機体を抑え込んだ。
このくらいの距離ならば重量型でもダッシュも生きるのが、今回の改良点だ。
もっとも、当然の如くバッテリー残量を大幅に減らしてしまうので、極めて短期決戦的な作戦となるが。
重量級のレミ2号に押さえ込まれてしまえば、軽量機体のイビルタイガーでは逃れられない。
更にアンソニーの機体に這い上がるレミ2号の、新たに換装した全てが足の振りをしたフェイクパーツからなる多脚ハンドで見事に同時解体されていく、アンソニーのイビルタイガー。
「やれやれ、やられちまったな。
成長したね、レミ」
スクリーンの中で頭をかくアンソニー。
そして嬉しそうにミミと尻尾でそれに応えるレミだった。
続いては、トーヤとエディの組合せだ。
満面の笑顔を見せるトーヤ。
「ふふ。
ここはジェットブーツの独壇場さ。
このステージに特化したチューニングなんだからね」
「そいつはどうかな。
まあ、いざ尋常に勝負」
エディオムはキャニオンステージの谷底で、どっしりと中央に立つ。
何か考えがあるようだ。
両側に屹立した渓谷に囲まれ、トーヤは時間制限無しで使い放題のジェットブーツを使ってローラースケートのように壁を走り回る。
「へいへい、ピッチャー棒立ちだぜい」
何度もトーヤの強襲を受けながらも、軽く躱すに留めるエディ。
御互いにまだジャブなのだ。
エディはまたしてもタイプバハムートのスタイルなので、このよりにもよって立体機動の生きるキャニオンステージで機動力を捨てている。
それは有り得ない暴挙か、あるいは何かの策なのか。
静かに佇み、ジェットブーツを駆るエルシドを目で追うのみのエディオム。
そしてトーヤが頃合いとばかりに攻め込んできた時、それは起こった。
「展開、千手観音」
「な、なに~!」
いくつもの内蔵千手を繰り出し、エディオムがまるで襲撃してきたイーグルの首を咥えて大地に叩きつける四つ足の肉食獣のようにエルシドを捉え、トーヤの愛機エルシドは地面に叩きつけられた。
隠しギミックになっているんだな。
どうやらこれはヒナダムG建造基地の工作モードを使って、あれこれのパーツを流用してエディが自作したか。
そういう物もシステムには組み込んであるのだが、そこまでやっている子ってあんまりいないんだよね。
結構技術も要るし。
予想もしない攻撃に目を回すトーヤ。
中に衝撃は伝わらないのだが、違う意味で衝撃が走ったようだ。
「うーん、僕の十八番を取られた~」
「ふふ、これが御気に入りなのは、トーヤ、お前だけじゃないんだからな」
有無を言わせずに手足を奪われて、為す術もなくトーヤは降伏した。
プラットフォームで降りて戻った彼らは、こんな会話をしていた。
「いやあ、参ったな。
そろそろ僕の勝ち越しがヤバくない?」
「ふふ、あと一つで僕が追いつき、その後は逆転かな」
「うわあ、精進しなくっちゃあ」
少年達は切磋琢磨しながら、日々成長しているようだった。




