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139-8 匠の兄

 お次はマリーの御雛様戦士、ビューティーマリーの出番だ。

 これは【随伴騎士】を連れる事が許されている唯一といってもいい特権を持つ特殊な機体なのだ。


 もちろん、それに対応したペナルティはある。

 そうでないと不公平になっちゃうからな。

 ゲームバランスは崩さないのが肝さ。


 だが対戦選手のカミラが大スクリーンで喚いていた。


「にゃあー、そんなのありー?

 ずっこい、えこひいきだー。

 いぎありー」


「ふふ、カミラよ。

 説明書は、隈なく読んだのか?

 あの御雛様ナイト操縦者は、この競技に参加出来ないという鬼ルールでな。

 勝負に勝ったとしても、大会では正式にそれを認められないのだ。

 ついでに言えば、お前にそこまでして随伴して戦ってくれる騎士がいるとでも?」


「う、うぐう!」


 みんな、自分が出て遊びたいからね。

 こんな機体を選ぶ子なんて、このポールくらいのものさ。


「まあ、御雛様自体に戦闘力はないからな。

 御雛様は御姫様なので戦わない。

 代わりに騎士が戦うのさ。


 お前は騎士の後ろで見ているビューティーマリーをバラさない限り、絶対に勝てないのだ。

 逆に騎士を飛び越えて姫に直接アタック出来るほど俊足な機体であれば、防御力ゼロであるビューティーマリーは為す術もなくバラされて、向こうの態勢が裏目に出る。

 これぞ、まさしく勝敗は相性によりけりという、ヒナダム的な面白要素なのさ。

 レッツトライ!」


 本式にヒナダムのような格闘人形大会に初めて参加するカミラには、少し厳しいルールだったろうか。


「御兄ちゃん、頑張れー」


 カミラより一つ年下だが、既に台詞が漢字になっているマリー。

 カミラも学力では既にあの兄妹との勝負はついていたか。


「それでは、ファイっ」


「ふふ。

 かかっておいで、カミラ。

 僕の機体は超絶にスペシャルなんだぜ」


「ええい、ちょこざいな。

 このカミラさまのカミラ・ザ・ウルフ、このこうきどうせいを、そのふしあなにやきつけるがいい」


 なかなか素晴らしい台詞だったが、ひらがなばっかりでどうにも迫力がないな。

 もう小学生なんだから、勉強の方は今度からもう少しスパルタにいくか。


「御託の時間はもう終わりさ。

 言葉ではなく実力でわからせてあげるよ、カミラ。

 カモン」


「おのれ。

 だいおんあるリサせんせいのむすことはいえ、ただじゃおかねえぞ」


 スクリーンの中、挑発するかのようにウインクで会話を締めた年上の美少年(が操縦するロボ)に、狼少女の機体は猛然と突撃していった。


 一方、ポールは余裕の笑みを浮かべている。

 突撃一番のカミラの攻撃などは、ほぼ読み切っている感じだな。


 そして狼の機動で迫りくるカミラ・ザ・ウルフのどてっぱらに、些かの遠慮もなく、御雛様ナイトの厳しめのキックが決まった。

 この機体はトーナメントに出ないため、敢えて無銘なんだよな。

 さすがはポール、渋い趣味だ。


「ぐべぼ!」


 本人には一切ダメージがないにも関わらず、激しく苦鳴を上げるカミラ。

 まあ気分でそうなっちゃうよね。

 というか、そこを狙っての遊び道具なわけだが。


 モニターも臨場感があって大迫力だし。

 そこがまたいいのだ。


 ごろごろごろごろと、思いっきり「芋虫ごろごろ」を堪能した狼っぽい造形のメカは、勢いが落ちたところで、そのまますっくと起き上がるとパイロットが呻いた。


「バ、バカな。

 なにかのマチガイだ。

 こんなのはイカサマだ~」


「違うぞ、カミラ」


 俺は親切に解説を入れてやった。


「ポールはな、ありとあらゆるデータに対処できるように、あれをセッティングしているのさ。

 そこが、あの機体の強さなのだ。

 お前がどういう具合に攻めてくるのかなんて、そのパターンの中に全て入っているのだよ。


 それにお前はジグザグに攻めているが、ポールはお前の性格を読んだデータのパターンを引き出して対応しているのだ。

 きっちりとシミュレーションをしておいてな。

 音声入力で機体と語り合うヒナダムGならではの、僅かな時間の間に十分に整えられた事前準備だ。


 常に最新技術へ前向きに立ち向かう技術者としての気構え。

 まるで騎士というよりは武士に近いような、その隙のない日頃の鍛錬の成果を今見せる時。

 そして仮にとはいえ父を失って、僕がしっかりしなくっちゃと頑張ってきた男の妹への思い。

 見事だ、ポール。


 さあ、カミラ。

 お前も負けずに頑張ってみなさい」


 だが、カミラはその場で負け犬の遠吠えをした。

 狼ロボなので、リアル過ぎるほど臨場感があるな。

 あっさりと心が折れたらしい。

 この子は、もうちょっとしぶとさを磨いてほしいな。


「勝負ありっ!」


 トーヤが、じゃら~んと銅鑼を鳴らした。


「カミラ。

 ついでにトーヤ先生から補習を命じます」


「なんで~~」


「やかましい。

 お前、一年生の大将格だろ。

 もうすぐ新入生も入ってくるんだからな。

 あの成績はなんだ。

 気合を入れていくぞー!」


「げげっ」


 あ、カミラが日和っている。

 こうやってトーヤの気合が入る時は、もっぱらカミラが机に座らされまくる方向のパターンなのだ。


 今年も駄目だったので、運動会の方もまったく敵わないようなのであるが。

 まあ、目指す進路である御裁縫関連は真面目に頑張っているようだからいいかな。


おっさんリメイク・コミック最新話、第11話。本日までです~。

第1火曜日更新のようです。

紹介遅くてすいません。

https://comic-boost.com/series/95

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