139-6 ロボット組み立て工場稼働中
広大な拡張空間に立ち並ぶ、大型ロボット組み立て工場群。
そこでヒナダムGを熱心に組み立てている子供達がいる。
なんだか幼稚園の課外授業みたいになってしまった。
こんな奇天烈な課外授業をやる幼稚園は、両世界において他のどこにも存在しないだろうがな。
例によって、トーヤやエディが他の子の間を見回っている。
連中も今回は広すぎる会場なのでゲートの魔法で移動しないと間に合わない。
もう子供の数が圧倒的に多いからな。
ほぼ日本の小学校並みの数がいる。
昔はチビ達の数も二桁で収まっていたものだが。
どこかの御姉さんが張り切り過ぎた結果だろう。
各工場ではマジック・クレーンでパーツを組み上げている。
今回は大型筐体使用で、ともすれば機体が殺風景になり加減なので、ヒナダムの装飾にも気を使っているのだ。
なんというか、それはボディに張り付けるデカールなどがメインだな。
トーヤがヒナダムにプラモデル用の塗料を塗り、その上からプラモデル用のデカールで仕上げていたのを見て思いついた。
子供はこういうのが大好きなので、シール感覚で愛機の表面に張りまくっている。
ついでに組み立て工場にも張られてしまった。
まあ各自一人宛てで工場一つ持ちだから別にいいけどな。
日本でも昔は、こういうデカールみたいなシールが流行っていて、ガムのおまけや学習雑誌の付録についていた。
表から爪でこすって裏側に塗料のような物で描かれている絵柄を転写するもので、これが柱なんかにやられるとまず上手に剥がせないので、大概は母親も諦めてそのままになっているというアレだ。
あれで賃貸だと致命的だ。
引越しの際に汚損と言う事で、一体幾ら追加料金を取られるものやら。
敷金の範囲内で収まれば御の字だろう。
俺の家も例に漏れず、柱とかにシールが貼られていた。
もちろん、俺と姉貴の仕業だ。
たぶん、あれの主犯は俺だな。
うちは持ち家だったので、まだ良かったのだが。
それも最終的に解体されるまで他人の手に渡る事はなかった。
もう古かったので、あの家は売らずに最終的に俺が業者に頼んで取り壊したのだ。
最後までシールが残っていたかどうかは記憶にない。
当時はそれどころじゃなかったしな。
建て増し部分ではない古い区画にあった子供部屋の柱には最後まで残っていたかもしれない。
壊される前に見ておけばよかった。
手回し式のエンピツ削り(シャープナー)にも転写しまくった。
その後は粘着剤式のシールが流行って、以下略の有様だった。
これらのシール類は全国の御母様の天敵だったのだ。
まだ粘着シールタイプの方が剥がしやすいけどね。
転写式シールは表面のデコボコや細かい隙間にまで入り込んでしまうから厳しい。
あれは塗料みたいなものが付着して、時間の経過と共に定着して余計に取れなくなっていくからねえ。
洗濯物の頑固な汚れみたいなものだな。
化学変化みたいなものを起こしていれば二度と取れまい。
せっかくの御洋服が同じように残念な感じになってしまう、男の子のどろんこ遊びも御母様方の敵だな。
粘着シールタイプとて時間が経てば、もうほとんど剥がせなくなってしまう。
ケモミミ園の壁や柱も酷い有様だ。
だが俺の超強力な収納にかかれば、そんなものはいつでも消せるので、そのまま全部残してある。
そういう物も消してしまうと寂しいからな。
いつか卒業生の子がやってきて、それを見て懐かしく思う事などもあるのだろうか。
もう全身タトゥーみたいに、ヒナダムに隈無くデカールを重ねて張りまくっている子や、まるでF1マシンの広告塔のような感じに上手に格好良く仕上げている子もいる。
うちのレミちゃんの機体は、当然の如くに全身タトゥーシールされていた。
またそのドヤ顔がなんとも言えない。
猫族の子はデコするのが大好きだからな。
御姫様の娘である事が発覚し、なおかつ現役公爵家令嬢となった今でもマイ段ボールは大好きなのだ。
俺も段ボールは手放せないぜ。
もっぱら敷布団として。
アトリエにおいて作業途中で仮眠するのに最高なのだ。
今では高級なタイプの御引越し用や大型商品配送用の厚めの新品段ボールを、わざわざ日本からいただいてきて贅沢に使っている。
親方の機体は、なんだかよくわからないのだが大変にゴツイ奴だ。
何かの魔物デザインらしい。
頼まれたので、俺が特注という事で急遽作ったものなのだ。
全身毛むくじゃら人型をした凄い迫力の奴なのだが。
目は真っ赤で、耳まで裂けた口が不気味だ。
日本で会社帰りの夜道とかに出会ってしまったら、激しくズボンを濡らしてしまうのは確実なタイプだな。
「親方、こいつは一体何なんだい?」
「ああ、こいつは魔物大陸にいる魔物シャブラーだ。
これがまた手強くてな」
「そりゃまた、捕まったら骨までしゃぶられそうな、いい名前だなあ」
これは武が名付けたといっても信じるぜ。
だが、あの親方達が苦戦するのだと?
あのくそでかい海の覇者クラーケンをガツンと余裕で倒し、図体が百メートルにもなるジャイアントトレントを手にした自作の武器で刈り倒すドワーフ軍団が、手強いと言う魔物なのか。
連中、この前は超巨大なクーラもやっつけていたしなあ。
そいつは俺も一回勝負してみたいものだな。
「これ、うちに立派な剥製が飾ってあるよ。
エディの御気に入りなの」
そういう自分も、結構気に入っていそうな口ぶりで笑顔のトーヤ。
まあ確かに見栄えはするんだけどな。
「こいつは凄く狂暴な奴でな。
しかも試し切りの邪魔をしにくるので閉口するのよ」
「いやいや、試し切りなんだから、そいつと戦えばいいんじゃ」
「いや、なんというかな。
また面倒くさい戦い方をする奴でな」
そしてトーヤがくすくすと笑って、こう言った。
「園長先生、そいつは【ゲリラ戦専門】の魔物なんだよ。
神出鬼没で現れて、みんなの狩りの邪魔をするんだ。
以前、メントドラスニ狩りの最中に、あと一歩のところを邪魔されてさ」
苦笑いしながら頷く親方。
「それはまた」
メントドラスニは魔物大陸における親方達のメインターゲットみたいなものだからな。
それを逃がしたのなら、試し切りも成功とは言えないのだろう。
あれの上等な革は、うちのおばはんの超御気に入りだからな。
次回の戦果で、うちの奥さんのバッグも作ってもらえる約束になっている。
親方以外のドワーフ連中にも転移の腕輪を授けてあるので、また新しい武器を作ったら暇を見て行ってくれるだろう。
「まあ、御蔭で怒髪天を突いたドワーフ達に追い回されて終に仕留められ、うちのミュージアムに剥製として飾られる羽目になったんだけどさ。
あれは一番目立つ場所に飾られているよ」
トーヤが嬉しそうに言いながら両手を思いっきり上に伸ばして組み、爪先立ちでくるくるとバレリーナのように踊る。
エディは張り切って自分の機体をマニアックに、ああでもないこうでもないと言いながら組んでいるようだ。
「あれも中々の勇者だった。
最大の敬意を込めて丹念に剥製として仕上げて飾ってあるのだ」
アニキも腕組みしたまま、うんうんと頷いている。
今回、アニキはネタパーツシリーズに目を付けていた。
ふふ、一生懸命に作った甲斐があったぜ。
「魔王様よ、これが凄く面白そうじゃないか」
「あっはっは、それに目を付けるとは。
さすがはアニキだな。
ある意味で、そいつが今回のステージを一番楽しめる機体なんだぜ」
その動きを披露するシーンを思い浮かべて目を細めるアニキ。
まあ楽しんでくれよ。




