136-4 アルバトロス王国大魔法鬼大会(一応は節分行事)
「さあて!
それではアルバトロス王国大魔法鬼大会を開催いたします」
あれから節分の日を迎えて、様子を見に行った王宮では王妃様がそんな事を言っていた。
エミリオからの情報で、不穏な動きを耳にしていたので見に行ったのだ。
やっぱり何か違う催しになってしまっているようだ。
まあ、けしかけたのはこの俺なのだが。
「おい、フランネル。
これは一体、何の催しになっているんだ?」
「ええ。
これはもう、あれだわ。
一種のヒナダムね。
あれの魔法版になる、いわばオニダムとでもいうものかしら。
トーヤ君の御希望だったので、そういう物を作ってみたのよ」
なるほど、あいつらは自分でもあれをやってみたかったのか。
小学生の冬の工作にしては手が込んでいるな。
スタッフとして大学教授まで参加させているし。
教授というか本物の魔女なんだがな。
「それで、そいつはどういう理屈で動くんだ?」
俺は、怪しげな仮面を装着し、これまた怪しげなラメ入りの黒いタイトな変態チックなスーツを着込んでいる王妃様を見ながら訊いてみた。
何か怪盗のような恰好だが、怪盗にしては派手すぎる。
キンキラキンにもほどがあるぜ。
そして、その隣にいる陛下ときたら。
髭もじゃ王が魔法使いのような杖をつき、何かこう派手な同じ黒系のローブを着込んでいらっしゃる。
その下に着ている白い服は、何かのファンタジー映画に出てくる魔法使いの爺さんのようだ。
魔法なんて使えないくせになあ。
これはまた来ちゃっているねえ。
王太子夫妻も、なんというか日本神話の素戔嗚尊と奇稲田姫みたいな感じになっていらっしゃる。
日本の行事なんだから、それで合っていないというわけではないのだが、これは違う感でいっぱいだ。
まあそれでも、彼らの親よりは随分マシと言えるのだが。
王太子妃殿下の方は黒髪黒目だからまだいいとして、旦那の方は金髪青い眼の貴公子然とした風体なので、これはまたアカンといった有様だ。
本人達はいずれも御気に入りのようだったが。
特に王妃様がね。
トーヤが精霊を呼んで化けさせているのだろうが、八岐大蛇が会場にいて王太子妃殿下が首の一つに腰かけて愛でている。
この人も元は草原の国の王女様だから動物が好きなんだよね。
しかし雰囲気が高貴なアルバトロス王太子殿下に、暴れん坊として名を馳せた素戔嗚尊は似合わないな。
そういや、あの暴れん坊の中の暴れん坊の神様たる素戔嗚尊が出雲のあたりへ行って、いわば始祖神のようなものになったのだった。
日本初の宮殿なんかをこしらえて、その子孫が日本を創ったとか言われているのだから。
案外とあの出雲でも、八百万の神々がこういう武闘派の催しを開いているのかもしれない。
飲兵衛な神々が酔った勢いで暴れていそう。
「ふふ。
あんたが作ってくれた魔法インクでキャラクターをインプットしているのよ。
七夕怪獣のような物に、一種の物理的な筐体を与えて長時間駆動できるように改良された、地球製ミスマギコン魔法人形とでもいうのかしら。
主にこういう催しに使えるようにしたものよ。
キャラクター原案はトーヤ君で、造形はエディ君ね。
一部注文生産にも応じたわ。
デザインはこの前の映画屋の連中にもちょっと手伝わせたし。
この世界って、こういう御遊びに拘る人が多いわねえ。
特に偉い人達が。
ポール君っていう子も手伝ってくれてたわ。
あの子はケモミミっ子じゃないのね。
凄い美少年だけど」
「いつの間に、そんな事になっていたのか。
俺のお株が奪われちまったな」
「まあいいじゃないの。
そっちは日本の伝統行事として、幼稚園で正当な節分をやっているんでしょ」
「まあ、そうなんだけどさ」
よく見たら山本さんの字で、特大の『アルバトロス大魔法鬼大会』の墨字が掲げられていた。
飾りつけもしっかりと節分風に行われており、雰囲気だけなら確かに節分だ。
何故か王国騎士団が赤鬼と青鬼の格好に扮している。
鬼の着ぐるみを着てね。
ケインズの野郎も同じ格好だ。
そして織原とベル君も当然のように着せられていた。
「お前ら、そんな格好で何をやっているんだ」
「えー、いきなり騎士団長に連れてこられたんですよ。
デートの途中だったのに。
園長先生、これ何の催しっすか。
節分? 節分なの?
ちょっと違いますよね」
「これって稀人の国の催しなんですかねえ。
そこはかとなく、これ違う感があるのですが」
よく見ると、隅っこの方で西田ちゃんが楽しそうにしている。
沖田ちゃんと斎藤ちゃんも一緒にいるな。
あの二人がこのイベントを見逃すはずはないか。
「いや、王妃様と陛下が何か勘違いしていたみたいでな。
まあ『王国騎士団員』の務めだと思って頑張れや。
織原、赤鬼の格好がよく似合っているぞ。
来年はうちの方にも来てくれよ」
「どうせなら、今すぐに行きたい気分なんですがね!」
「何を言っているか、お前ら。
特に織原は、節分の大元である稀人の国を代表してその御役目を拝しているのだからな。
心して務めよ」
もうケインズったら。
その考え方はどうだろうか。
まあ、どうせこいつらも、やらないじゃ済まされないんだろうがな。
「まあまあ、織原。
せっかくの、いい鬼っぷりなんだ。
後でその格好のままケモミミ園の方にも顔を見せてくれや。
織原組の子達が喜ぶぞ」
「はあ、そうしますか」
ちょっと項垂れ気味の純日本産赤鬼と、もはや達観した様子の男爵青鬼が、騎士団長鬼の隣に控え(させられ)ていた。
騎士団長鬼というか、鬼の騎士団長が鬼の格好をしているだけというか。
どっちみち鬼だな。
もはや、こいつらって騎士団の重鎮扱いだな。
それを見て他の騎士団員連中も実に楽しそうにしている。
これがまた「俺が騎士団の幹部だ!」みたいに勘違いをしているような奴だったら嫌われてしまうのだろうが、そうではないからなあ。
むしろその逆というか。
しかも国王陛下の肝煎りで見習いとして強制的に入団? させられているだけなのだし。
この二人は他の騎士団の連中からも大いに楽しまれていた。
なんていうんだろうなあ。
厳しい訓練に明け暮れる誇り高き騎士団員にも、御楽しみっていうものは必要なのだから。
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