第131章 『魔女サミー 巨大生物の島へ行く』 131-1 試写会
そう言えば、うっかりしていたのだが、ジョゼママの映画の方はどうなったかな。
ちょっと電話してみようか。
あれから、ちょくちょくこっちへ撮影に来ていたみたいだけど、撮影隊の連中もすっかり異世界に馴染んでしまっているようだ。
「お前ら、馴染み過ぎなんだよ」とは口が裂けても言えない。
俺なんか、こんな異世界で幼稚園なんていう物までこさえて、しかも王女様を嫁にもらってしまって離宮などを建てて暮らし、ビール三昧で寛いでいるのだからな。
その前に、だいぶ暴れてしまったのだがね。
俺も撮影隊の連中にはあまり構ってはいなかった。
セットを創ったり、小道具大道具関係では協力していたのだが。
うちの連中も護衛についているので、この世界で連中がそう困る事も無い。
時折、トーヤ達も足繁く出かけていたようだし。
連中は出演者として、また見学者としても参加していたようなのだが。
「園長先生~」
おや、噂をすれば。
最近は園長室の方にはあまりいなくて離宮にいる方が多いので、奴も迷わずこちらにやってくる。
幼稚園や小学校の方に直通のゲートがあるしな。
そういうのはセキュリティ的にはどうかと思ったりもするのだが、最近は利便性を追求しているのだ。
今ではもう、この世界で俺に余計なちょっかいをかけたがる奴も少ないのだから。
もちろん有事となればゲートは閉鎖される。
「どうしたい、トーヤ」
「例の魔女サミーの島で撮影した映画、いよいよ完成なの。
予定が早まって年末年始にロードショーだってさ」
「ほお」
やれやれ。
早く完成したから上映を前倒しにしやがったのかな。
他にも上映するはずだった映画もあるだろうに。
そっちの関係者達に同情するね。
いや、彼らにとってもそれは幸運なのか。
おそらく、その見返りとして資金提供とか、その他でもいろいろとハンボルト家から便宜を図ってもらえそうだよな。
そういや、撮影隊の世話はゴーレム達に一任してあるので少し心配になってきたな。
この間も任せっきりにしておいたら、地下帝国の前身が豪い事になっていたのだし。
俺が作っておいたセットは結構雄大な物なので、油断すると裏庭の渓谷のようにダンジョン化していそうだ。
しかも思いっきり広大な。
何しろ今の俺は『神をティム出来るほどの膨大な魔力』の持ち主なので、そういう面では洒落にならない。
造物主の口から言うのもなんなのだが、あいつらうちのゴーレム達って、何かにつけ『面白い』を優先するところがある。
一体誰に似たものやら。
「つきましては内々で試写会をやりたい、だって!」
「そうか。
じゃあ、御邪魔するとしよう。
それでいつだい?」
「いつでもいいって!」
世界的な女優は忙しいんじゃなかったのか?
まあ、どうせやりたい放題なんだろうが。
「じゃあ、今日でもいいぞ。
どうせならブルーアイランドの映画館でどうだい?」
「わかった。
じゃあ伝えてくる」
そして彼らは仕事をほったらかして試写会を実施するわけだな。
その場で異世界転移して、すぐにスタッフ達を連れてくるトーヤ。
「速攻だな、おい。
ハリウッドっていうところは、そんなに暇なのかい?」
こっちはディナーも兼ねてと思って誘ったつもりなのだがな。
「いやあね、園長先生。
そんな訳がないじゃないの。
だって、御楽しみの異世界での試写会なのよ?」
あっさりと、そんな事を言うジョゼママ、ヘルメス・サンダーキャット。
「そうか、この人って誰かに似ていると思っていたら……」
「はい?」
「ああ、なんでもない。
なんでも」
そうそう。
うちの御義母様にだったわ。
あの二人の主な違いは、犬派か猫派かというその一点においてのみだな。
片や異世界における大国の現役高ランク冒険者である自由奔放な王妃様、片や地球最強の支配者たる家の「大蔵大臣」だ。
どちらも各々の世界で甲乙付け難いほどヤバイわ。
「シル。
今から映画の試写会があるから」
「試写会?」
「ああ、この前からジョゼママの撮っていた奴だよ」
「そうか、トーヤ君達が熱中していた奴ね」
「そうそう。
ブルーアイランドの映画館でやるよ。
せっかくだから、みんなで社会見学といくか。
何しろ、ハリウッドの大女優が出演する全世界公開の大作映画だからな。
成功する事は最初から決まっているのだし」
何しろ、『あの家』がやる行事だからな。
たとえヤラセでも成功するのに違いない。
その上彼女はその道においては、あの家へ嫁に入る前からとびきりの実力者だったのだから。
その御蔭でジョゼパパが彼女に夢中になり、今ジョゼママがあの家の大蔵大臣を務めているのだからな。
そして今作品の監督もスタッフも超一流で、そこへ莫大な資金が惜しみなく注ぎ込まれているのだ。
もっとも、それでも十分割に合う見入りも計算されてはいるのだろうが。
あの家に対して物凄く親近感が沸くのは何故なんだろうな。
俺は幼稚園や小学校を回って、子供達に御触れを出した。
「みんな、集まれ~。
試写会へ行くよ~」
ケモミミ園の運動場や遊具などで遊んでいた子達も、わらわらと集まってきて訊いてくる。
「ししゃかい、ってなに?」
「それって、おいしい?」
「まあ、ある意味ではな」
無論、トーヤがチビ達の可愛い頭をぐりぐりしながら言うのだ。
「もちろん、美味しいのに決まっているじゃないか。
それに映画を見ながら食べるポップコーンやコーラの美味しさは格別さ。
でも食べると大きな音がする御煎餅とかはダメなんだぜ」
御煎餅か、懐かしいな。
コテージを改造した縁側のある建物で、あいつらに食われてしまっていたっけ。
今でも、あそこは子供達のいい遊び場だ。
「あ、そうだ。
うちの御義母様を呼んでおかないと、また拗ねるな。
ミニョン、ロッテ様を呼んできておくれ」
「はーい」
そしてミニョンはポンっと犬体系になると、ドッグゲートを王宮に繋いで駆け出していった。
このプリティドッグどもは、この手の神出鬼没系の魔法を好んで使う。
転移系魔法を首輪に仕込んでやったら、一瞬にして、まるで生まれついての転移系魔法の使い手の如くに使いこなしていたしな。
「おっと、御父さん達も呼んでこなくっちゃ。
それっ、忍!」
両手で印を結び、ドロンっと消えるトーヤ。
どうしてこう子供っていうのは忍者が好きなのかね。
この特殊効果付きの転移魔法は、忍者好きなトーヤの要望により俺が開発したものだ。
もっとも、今からやる試写会のメインキャストであるアメリカ人の方が、そういう忍者ネタは好きなんだろうけど。
「おっさんリメイク」コミカライズ8話、公開中です。
http://denshi-birz.com/ossanremake/




