130-16 おっさん達の運動会
運動会に参加している地下帝国のおっさん達は、些か顔色が優れないというか気が重いというか。
そのような雰囲気を纏っていた。
何分にも今までが今までだけに、地上の人間に対する引け目のような物があるらしい。
まあ、それはわかるような気もするんだ。
俺も日本にいた頃は、そういう物があったのだ。
世間様からドロップアウトした引き篭もりのおっさんだったからな。
それでも今日は彼らにも楽しく遊んでもらうとしようか。
今日も、だいぶ子供達から小馬鹿にされていたようだが、その辺りは地上の人間も同じくそうなのだしな。
という訳で、さっそく成長ムカデ競争が始まった。
コースを周回する度に、ムカデ競争用の紐を足に通して、どんどんと人が増えていく。
あ、人だけじゃなかった。
ダンジョンから連れてきた愛嬌のある、俺が造物した魔物達は別にいいのだが、何故か観客席にいたはずのウサギどもが混じっているのだ。
しかも、でかいハイラビットが、それはもうみっちりと。
奴らも身長はそう人間と変わらないのだが、前後左右が広いからな。
かなりの密度になってしまている。
なにか、あの競技が奴らの心の琴線に触れてしまったようだ。
ウサギばっかりが並ぶと間隔が狭いので、強引に引き剥がした人間と順番を入れ替えて隊列を組んでいる。
「うお。
なんだ、このでかいウサギどもは」
「ちょっ、おまっ。
押すな、押すなってばさ」
「何なの、この筋肉は」
おっさん達はウサギ(筋)肉にギュウっと挟まれて、ちょっと大変そうだ。
まあネットではウサギ液体説も流れるくらいなんだし、大丈夫なんじゃないかな。
こいつらの場合は液体にしては、ちょっと筋肉質なんだけどね。
モフモフ液体筋肉!
ウサギ達は御機嫌で、歩く度に「もふっ、もふっ」と音がしそうだ。
これは見ていると、もう堪らんな。
これはいかん。
ちょっと、俺も行って参加してこようかな。
俺も混じって参加してきたのだが、またウサギどもがガンガンと進むので、おっさん達は強制的に引き摺られていってしまう。
転ぶ事さえ許されていないようだった。
俺は娘を肩に乗せて、もふもふ大行進をしっかりと楽しませてもらった。
やけくそになった織原も彼女と一緒に参加している。
織原の奴は、図体のでかい帝王アレクと四天王ミッドナイトの間に挟まっていたので大変そうだ。
まだゴッド・リジェネレートの効果がかかっているから体の方は大丈夫なんだろうけどなあ。
競技が終了した後で、おっさん達は死屍累々の有様だ。
「どうでした?
地球のモフモフな生き物の感触は」
「いや、それもう魔物でしょう」
「なんです、その巨大なウサギは」
おっさん達は、地下の人も地上の人も分け隔て無く、仲良くへこたれている。
少しは気まずさが減ったように感じるな。
単に、それどころじゃないという感じなのだが。
とりあえず、おっさん達には情け容赦なくリジェネを放っておき、次の競技へ進んでいく。
真理が嬉々としてリジェネをかけまくっていたので、そっちは積年のプロ? に任せておいた。
まあ明日あたりは、このアドロスも地下帝国も休日モードかしら。
とりあえず月曜日は運動会の代休という事で!
お次は「仲良しキャタピラ競走」だ。
もう作るのが面倒なので、地球の不用になった大型段ボールをもらってきてコピーしておいた。
何しろ人数が多い。
いろんな体形で使えるように、各種サイズを用意しておいたのだ。
元々、この世界における段ボールは、子供の運動会でキャタピラ競走をやるために開発したものだったのだが、アルフォンス商会では結構役に立っていたようだ。
最初に俺が作った段ボール箱の元になったのは、日本から持ち込んだ六本入りの水の外装箱だな。
一応、アドロス住人のおっさんと地下帝国のおっさんとを組ませている。
間に可愛い魔物達を置いて、それは連中が仲良くしてもらうためのキューピッドという事で。
だが、ここでもウサギ達が割り込んでくる。
ぐいぐいと体を捻じ込んで、おっさん達と密着している。
「あ、おい。
ちょっと、お前。
強引に入ってくるなよ。
入ってくるなというのに」
「うぐ、窮屈だ」
いいけど、その状態で走れるのか?
だがウサギ達は頑張った。
「うお~っ、潰れる~」
「おいこら、無茶をするなあ。
うげえ」
奴ら、もう身動き取れないので、そのまま転がっていやがる。
おっさん達は見事なくらいに、段ボールキャタピラが回る度、交互にウサギの下敷きになっている。
おっさん達にリジェネをかけておいて良かったな。
ウサギには必要なさそうだけど。
実に楽しそうにしているわ。
アレクの奴なんかは体が大き過ぎるから、強引に入ろうとして段ボールが弾けてしまっているな。
それを強引に手(前足)で繋いで転がっている。
無論、巻き添えになった不幸な人も一緒の運命だ。
ベルーナはミッドナイトとスペードに挟まって、結構頑張っていた。
ジョゼは愛犬五匹くらいと犬車で楽しんでいた。
そして、大トリの競技であるバトルロワイヤル・バブルサッカーを開始した。
バブルサッカーは海外で始まった競技だ。
こういう明後日の方向を目指したような競技って、割と日本が最初に始めていそうな印象があるんだけどね。
バブルボールという半透明のポリ塩化ビニルみたいな物の中に入り、十キロくらいあるそいつを中から背負い、足だけ出してプレーするフットサルみたいなもんだ。
確か自衛隊の戦闘服とかの戦時装備がそれくらいの重量だったはず。
相手に当たろうとするとバブルボール同士がくっついたりして足の動きとかが制限されるので技量差とかが無くなり、また『防護服』を纏っているために怪我もしにくいというものらしい。
まあ、殆んど押し競饅頭だな。
俺が作った『魔法のバブル』を装備しての戦いだ。
地球で買い込んできたバブルボールに魔法のサイズ調整機能が付けられており、また体表面に展開されるバリヤーで装着者を守る機能がある。
普通はフットサルみたいに少人数でやるらしいが、もう街を挙げてやっている御祭なので、みんなでやる事にしている。
とにかく参加者の体同士は当たらないので安心だ。
多分バブルボールで防がれるだろうから、足も蹴られないだろうし。
ただし、痛くはないのだが衝撃は軽減されないので派手に飛んでいったりする。
「うひょお」
「たのしい、さいこう~」
子供達は大喜びだ。
だが、ここにも乱入してきた『奴ら』がいる。
「あ、お前、ちょっと待て。
待てと言うのに」
「うわあ」
ウサギどもの突進を受けて、おっさん達が纏めて綺麗に吹き飛んでいく。
まるでウサギ玉でおっさんを吹き飛ばすボーリングのようだ。
フェメラとキメル、それに加えてその親達も参加しているし。
おまけに親方達も混じっているので中々強烈だ。
ゴン太達にも、御印という事で足元までかかるバブルボールを着せておいた。
奴らは分別があるので競技には参加しない。
もう誰も彼もが吹っ飛んでいき、ボールがどこへ行ってしまったかもよくわからない。
もはや厚手の大きなビニールを被って行う、ただの押し競饅頭だ。
俺は燃料となるボールを大量に追加してやりながら、おっさん達の様子を見ていた。
なんというか、雰囲気的に若干緩いというか、そういう空気を感じる。
まあ、そこそこ仲良くやっておくれ。
今はそれで十分さ。
それにしても、今日は楽しい一日になったもんだ。
「おっさんリメイク」コミカライズ8話、公開中です。
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