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120-5 可愛い物!?

「いやあ、やられちまったぜ~」


 俺はベッドの上で暗黒面からの脱出に何とか成功し、布団の上で寝そべったまま、付き添いの奥さんの前で頭をかきかき笑っていた。

 娘が俺の掛布団の上にダイビングして遊んでいる。

 いやあ、ほっこりするなあ。


「もう、あなたってば。

 もふもふの事になると、すぐに我を忘れちゃうんだから」


「いやあ面目ない」


 えへっ。

 でもやっぱり、うちの娘の可愛いミミが一番さ。

 それを優しくもふりながら訊いてみた。


「それで奴はその後、現れたのかい?」


「ええ、エドが生魚を出すように指示して様子見をして見張っていたのよ。

 でもいつ間にか、それが無くなっちゃうんですって」


 あらまあ。

 そいつはまた凄腕の泥棒猫だこと。


「パパ、ネコのおばさん、まだつかまらないんだ」

「ああ、今のところはね」


「レミもいっしょに、つかまえにいってもいい?」


 その手に、しっかりと採集網を握り締めた愛娘が、オッドアイの可愛いお目目をくりくりさせ布団の上で訊いてくる。


「いいけど、あの猫さんはまず捕まらないよ?

 世界最高峰のSSSランク冒険者たるパパにも無理だったしさあ」


「それでもいいの。

 ぜったいいくの。

 ファルちゃんもいっしょだよー」


 もうドヤ顔の可愛いネコミミ娘が満面の笑顔を貼り付けていて、俺もベッドの上でほっこりする。

 ああ、その発想は無かったな。

 ファルか。


 あと織原を呼んでみるのも吉だ。

 グスタフなんかもどうだろう。


 ダンジョン・チームの再結成か?

 そういや、あのチームには真理もいたんじゃないか。


 というか、あいつ最近あまり見かけないな。

 何か手こずっている子供とかがいるのかな?

 あいつにしては珍しい。



 そして、すっかり回復した俺は準備体操をしながら声を張り上げた。


「よーし、諸君。

 怪盗を逮捕しにいくぜ。

 準備はいいかあ~」


「「「おーっ」」」


 昆虫網を持って、探検隊スタイルをしたうちの娘。

 そして、それと御揃いの格好をした神の御使い。

 同じく御狐王子が約二名、その他に犬の子が十二匹と、大型犬猫のハーフが六匹ほど。


 水○スペシャルの始まりだった。

 井上隆裕探検隊の御時間である。


「ジョニー、お前は?」


「遠慮しておくよ。

 じゃあ俺達はドッグハウスへ行っているから」


 珍しく、イベントなのに顰めっ面をしているジョニーは、ママの肩を抱くと首輪の魔法を起動してゆらあっと溶け込むように空(くう)へ消えていった。


「やれやれ、よっぽどあいつと相性が悪いと見えるな」

「パパ、はやくはやく~」


 大興奮気味の愛娘が、同じく探検隊風の格好をした俺の上着を可愛い御手手で引っ張った。

 レミはここ数日、必死で網を持って追いかけたらしいのだが、小馬鹿にされるだけで当然成果はない。

 毎日、電池が切れるまで走り回ったらしい。


「絶対に捕まえるぞ」という気概に、顔を真っ赤にしているところが可愛いな。

 まあ、その気持ちは俺も一緒なんだが。


「出てこい、おばはん!」


 俺は叫んだのだが、今度は奴も小馬鹿にしたように出てこない。

 うぬう。


「じゃあさ、御刺身パーティにしようよ」

「なるほどな」


 俺はトーヤの意見を採用し、山本さんに御願いして、おやつとしては少々微妙なセレクトである御刺身タイムにした。


 広いリビングに置かれた、ちゃぶ台の真ん中には大皿に載せられた艶々と輝く刺身がびっしりと並べられている。

 むろんファルの前には、がっつりと御飯が丼飯で置かれている。

 正確には御櫃も一緒に。


「相変わらず、よく食うな」

「いやあ、それほどでもー」


 丼によそうのが面倒なのか、もう二杯目は御櫃(おひつ)から直接御飯をかき込みながらファルが言った。

 こいつが本気なら、こんな皿の刺身など一飲みだ。

 どれだけ育っているものか、本体を測るのが恐いな。


 レインは十メートルサイズだが、はたしてファルは成体に成長した暁にはその範囲に収まるものだろうか。


 キメルはそれぞれの御皿に刺し身を出してもらって、もう夢中だ。

 フェメラは微妙な感じに臭いを嗅いでいたので、ハムを大盛りで出してやった。

 こいつらは塩分を気にしないでいいので結構グルメだ。


 魔物の子だから成長が早く、もう普通に御飯を食べている。

 いや、実にまったりタイムだ。


「いやあ、やっぱり御刺身は最高ですよね」


「そうそう。

 って、お前!」


 なんと件の化け猫本人が、俺の隣に堂々と座って御刺身を堪能していた。

 き、気付かなかったぜ。


「しまった。

 自分達の方が、御刺身に夢中になってしまっていた!」


「ほっほっほっほ」


 猫は笑いながら刺し身を取り分けた御皿を持ち、箸で挟んだ御刺身をちょいと掲げながら虚空に消えていった。

 俺は胡坐をかいてレミを御膝の上に乗せていたので、すっと動けなかった。

 いやあ、すっかり親子団欒ムードになってしまっていたな。



「よし、やっぱり猫ならこれだぜ!」


 俺が用意した物はマタタビ。

 キメルにやったが、さほど興味は示さない。

 まだ子供だからな。

 メルには効いていたようなのでOKだ。


 雄猫のショーは御機嫌トリップだった。

 マタタビの与え過ぎ注意。


 鉢植えの物、ステイック、粉末状の物、実のままの物、それらを各種置いて見張っていたのだが、肝心要の奴が現われない。


 ショーが欲しがってしょうがないので、危ないからマタタビはもう仕舞っておく事にした。

 やっぱり化け猫には、行燈(あんどん)の油でないと駄目だったろうか?


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