119-14 人なればこそ
俺の作った傑作どもは見事な動きを披露してくれた。
博物館に展示してある恐竜なんかの復元模型が動き出すようなものだ。
昨今は映像関係もCG使用全開で、最早こんな物をわざわざ金をかけて作ろうという動きも殆どない。
恐竜などは、むしろロボット関係の方面が盛んだ。
飛行タイプの恐竜まで再現して、実際に飛ばしてみせるデモンストレーションをやって発表している。
本物の飛行恐竜は滑空しないと飛べない種類もいるので、種類によっては本物を越えたというか、本物と構造が違う物もあるのだろう。
だが、うちの物はまた別物だ。
まさに生きた本物を狩って、その資料を展示している者達の協力で作り上げたのだ。
本物よりも更に完成された造形に作り変えられ、より美しく豊かに彩られた。
先ほど生で大型魔物達を見る事が出来た観客は、その動きに賞賛をくれた。
「素晴らしい。
まるで本当に生きているかのようだよ」
「あはは。
もしかして生きているのかもしれませんね。
うちのゴーレム達は魂といっていいような物を持っています。
もし魂のままに活動する事を生きると称するのであれば、うちのゴーレム達はまさしく生きているのです」
美術監督も総監督も、その話に感銘を受けたように頷いてくれたが、次が見たいと促がしてきた。
(ははあ、本当はちょっと満足していないんだな。
そいつは俺もわかる気もするのだが)
「それじゃ、沖田ちゃん斉藤ちゃん。
スタンバイ」
「「ラジャー!」」
そして彼女達の披露した見事な魔物操縦に、一同が一斉に拍手してくれた。
それは、まるで本物の魔物が生を謳歌するかのような、そんな命を吹き込まれたような素晴らしい生き生きとした動きであったのだ。
「ブラボー!」
「これが見たかったのだ」
やっぱりか。
そして監督は言った。
「確かにさっきの無人の状態の動きでも素晴らしかったが、やはり人が動かしているのには敵わない動きだ。
CGだろうがロボットだろうが、自動の動きでは人を感動させるのは難しい。
さっきの方式しかないのであれば、それを使うしかないが、こちらの方がずっといいのだ」
乗っているのは人じゃなくって連中だってゴーレムなんだけど。
おまけに乗られている方もな。
まあいいか。
人型のゴーレムの方が、やはり何かにつけて人間臭いのだから。
その辺りはどうしても人型以外との差が出る。
建設機械風のロボットと人間そっくりのアンドロイドの差みたいなものだ。
残りの魔物ゴーレムにも人型ゴーレム達を乗せて一斉に動かしてみた。
脚本家も創作意欲を刺激されたと見えて、ノートPCのキーボードを叩きまくっている。
「さて、ところでゴーレム魔物はこれだけのタイプで足りるのかな。
他に希望の造形は?
追加注文にも応じられるし。
それと今の物に何かリテイクはある?」
「そうですね、今のところこれだけあればいいでしょう。
追加が必要であれば、またその都度御願いします。
では細かい仕様の変更を御願いしたいですね。
カメラテストを入れながら」
そうして俺は美術監督や動画監督の指示に従って、細かい形や色合いの修正、追加の造形変更や素材の質感の拘りなどの作業に入った。
美術監督は実際に見て触って、その場でこれだけの数の動く実物大道具の修正をやっていけるという有り得ない状況に感激していた。
「いやあ、異世界の技術は素晴らしい。
こんなものは地球では有り得ない」
隣で動画監督も満足そうに頷いていた。
「まあこの世界でもこんな事をやれるのは、その地球から来た俺だけなんですけど。
ただし、真に芸術的な造形についてはエルフやドワーフにはまったく及ばないから、うちも彼らとは大いに取引させてもらっていますよ。
地球にも一部製品は流通していますが、その値段は馬鹿高い。
ああいう物は安く出したところで、どうせ転売されて高値で取引されてしまいますからね」
「そうなのですか。
ドワーフには会わせてもらいましたが、エルフさんはどこに?
いるのでしょう?
是非とも一度は拝んでみたいものです」
「では、後でエルフ新町へ行って見学しますか。
今日は離宮で歓迎パーティでもと思ったのですが、そういう事ならエルフ新町へ行くのもいいかな」
それを聞いて皆が大変喜んでくれたので、その方向で決まった。
さっそくエルフ新町の代官に御願いして、六十人は入れるくらいの会場を用意してもらう事にした。
そして、これだけのリアルな機材を用意したからといってCGが無くていいわけじゃない。
宣伝やオープニングなどで映像に色々な加工は必要なのだ。
またポスター用などの場合にも。
そっちの作業者は、さっそく宣伝に必要なプロモーションビデオやポスター、マスコミ配布用の画像などの処理に入っているようだ。
机仕事組のために電源完備の大型テントが建てられているが、まるで楽しいキャンプに来たかのような雰囲気がある。
御遊び感覚の、うちのゴーレム達に仕度させたからな。
なんやかや言って、御試し撮影に俳優のインタビュー映像、その他に後で使えそうな素材を作っているようだった。
そうこうするうちに、もう夕方になり、サミー島が茜に染まる。
この熱帯の島も、やや過ごし易い気温になり、間もなく夜の帳が下りるだろう。
そして夜行性魔物達の饗宴が始まる。
御邪魔な俺達は、早々に魔物の楽園から撤収する事にした。
テントも含めて一切の機材を収納してエルフ新町へゲートを開いた。
それから俺はにっこりと笑い、少し気取った挨拶をする。
俺もこういう事を一度やってみたかったんだよね。
「エルフ新町へようこそ、地球からの御客人方。
ここは俺が作った、俺が領主を務める街なのさ。
治安は最高で飯は美味いし、綺麗どころも沢山いるぞ。
どうぞ、御堪能あれ」
そしてスタッフ達は、その雅やかで、その上趣のある街の佇まいに周りをキョロキョロと見渡すのであった。
「おっさんのリメイク冒険日記」コミカライズ第5話公開中です。
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