119-13 アメリカンな人達
そんなこんなで、俺が姿を消して空へ舞い上がったり転移魔法で離れた場所に移動したりで気配を消し、なんとか魔物を寄せる事が出来て、魔物観察ツアーは無事に目的を果たした。
「いやあ、凄いな異世界。
こんな豆鉄砲ではなくて対物ライフルを持ってくるんだった」
「いや、ここは二十四ミリライフルとかでもよくなかった?
あの手持ち最強ライフルって、なかなか実際に使うシーンが無くってさあ」
「何を言う。
ここはロケットランチャーとか火炎放射器の出番じゃないかな」
この連中、こんな事を言っているのだが、アメリカという国は戦車や航空機まで個人で所有出来るのだ。
米軍を引退した戦闘機でも、普通に民間機として、交換部品さえ共食い整備をして飛んでいるはずだ。
多分、さすがにミサイルや機関砲などの武装は許可されないだろうが。
国際的に民間の船舶や航空機は武装出来ないルールになっている。
アレな国の連中の場合だと、中には守っていない連中もいそうなのだが。
広大な土地も安く持てるから、戦車マニアも実際に自分の土地で戦車を好き放題に走らせられる。
むしろ犯罪に使用されやすい、拳銃のような隠し持てる小型火器が一番所持や運搬が厳しい。
州によって購入・所持や運搬の条件などの許可の厳しさは異なるが、大都会では違法に購入した犯罪者以外はまず持ち歩いていないだろう。
拳銃を車のダッシュボードの中に置く場合の、薬室への弾薬の装填の可否までもルールで決まっているくらいだ。
映画の中でさえも一般人が普通に持ち出してくるのは、大概が拳銃ではなく狩猟用のライフルや散弾銃なのだ。
火炎放射器も国によっては所持しているだけでも牢屋行きになるはずだ。
あれは結構所持が厳しいから、英国あたりだと確か所持しているだけで懲役十年くらい食らうんじゃなかったか?
庭の雑草を焼く強力なバーナーなんかは普通に持てるけど。
あれだって中国製の奴なんかは物凄い威力があったはず。
中国なんかだと、電力会社がカラスの巣を除去するためにドローン搭載の火炎放射器で焼き払うくらいだからな。
日本だと戦車は、大砲やエンジンなども完全に使用不可能にして絶対に動かせないようにしておかないと所持できない。
それでも本当に飾っている人がいるのが俺には信じられない。
日頃は場所を取って邪魔でしょうがないのに、本人が亡くなった後で片付ける時にも、とんでもない手間と費用がかかるのだから。
遺産として残された人が必ず可哀想な事になる代物なのだ。
骨董品の戦車なんて、買う時はとても安いんだけどな。
下手な国で安く買って日本に持ち込むと、重量があって図体もでかいから輸送費の方が高くつきそうだ。
日本で、アメリカのようにスペクタクルな映画が作れないのは予算や規制などのせいだけではないのだろう。
国民レベルで圧倒的にスケールが違い過ぎるのだから。
だがなんとか無事に二十七匹の魔物さんに遊んでいただいて、客人には満足してもらえたらしい。
そのために俺が姿を隠したりして、色々と魔物に配慮してやったのだからな。
特に半数近くが爬虫類系魔物だったので、バルが騒ぐ騒ぐ。
「ねえ、ママ。
あれを生け捕りにして御土産にしちゃあ駄目かな」
「御兄ちゃんさあ、魔物は魔素がないと死んじゃうから、ここは剥製で我慢しなさいよ」
「何を~。
お前のところの魔物犬は大丈夫らしいじゃないか」
「あの子達は特別待遇なのよ!」
似た者兄妹だな、こいつら。
「勝手に変な生き物を持ち帰るのは止めにしてくれ。
政府から怒られても知らんぞ。
いくら天下のハンボルト家だからって、適応した外来生物に大繁殖されて被害が出たりすると困るだろうが」
アフリカ産外来種の巨大カタツムリとかなあ。
あれ、日本にもいる!
あいつは素手で触ると絶対にヤバい奴。
妙なウイルスを持っているらしい。
まあ見かけたら思わず捕まえてみたくなるような超大物だけどな。
カタツムリって気を付けないと、這った後の粘液にさえ妙なウイルスや寄生虫を持っていかねない。
その辺にいる鳩だって触るとウイルスとかがヤバい。
鳩の糞だってビニール手袋無しにテイッシュだけで片付けちゃ駄目なのだ。
俺は知らないでやっちゃっていたけどな!
俺の異世界転移系の魔法には検疫機能を付与してあるので、ウイルスや細菌は大丈夫だけど。
人間が一人立ち入っただけで、持っているウイルスなんかのせいで生命や進化に対して劇的にマズイ環境変化を引き起こしてしまうような未開の原始惑星じゃないんだから、そこまで神経質にならなくてもいいけどね。
とにかく迫力ある魔物をたっぷりと見学できて客も満足そうだったので、今度は撮影用のゴーレム機材や、うちの『撮影参加スタッフ』を紹介する事にした。
前回はプロデューサーに意見を貰ったが、実際に映画を作製する監督やスタッフに見てもらうわけだ。
「まず、うちの子達を紹介しよう。
ゴン太とゴン美とドラ子、出ておいで~」
大きく開いたゲートから凄い迫力を持って登場するドラゴン達。
サービス精神満点な連中の咆哮が響き渡った。
ヤベエ、この島の魔物達が震え上がってしまって、しばらく人前には出てこないかもしれない。
こいつはちょっと失敗したかな。
迂闊に吠えるなって先に言っておかないと。
だが客は大喜びだった。
特にバル。
「可愛い、可愛いよ。
魔王様酷いよ、こんなに可愛い子達を今まで隠していただなんて。
ソーキュート~」
大体思ったとおりの反応だったが、当のドラゴン達はちょっと微妙な顔をしている。
まあ、せっかくサービスして大迫力で登場してやったのに、可愛いときちゃあな。
バルが突撃して足元で踊り狂っていたので、踏まないようにと微動だに出来ないゴン太達。
尻尾にも纏わりつくので、危なくてピクリとも動けないのだ。
この男、やはりジョゼの兄妹だけの事はある。
あの残念な表情は、まさに瓜二つ。
これは是非、宣伝用の映像に採用すべきだ。
監督も俺と同じ意見だったようで、もうカメラを回していた。
続けてフェルド一家をゲートから呼んだ。
無論彼らの子供達も一緒だ。
「凄い。
伝説のキメラだ。
そっちは、フェンリルか!」
名前だけなら幾多の映画やアニメに出演してきただろう魔物達の登場に、それの実物を目の当たりにして大興奮のスタッフ達。
だが、あっという間にフェメラとキメルどもの毒尻尾甘噛みの餌食になった。
「ひゃあ、この尻尾は毒があるんじゃないか?」
「これも可愛いね。
何、この子達はハーフなの?」
「こりゃあ」っと、メルが一匹ずつ咥えて集めて回っている。
集めたってすぐ逃げ出すのだが、フェルドの電光のフットワークの前に再回収されて、仰向けにされて両親から足でうりゃうりゃされていた。
「あっはっは。
済まんね、そいつらはまだ生まれたばかりでヤンチャなんだ。
ああ、蛇尻尾にはまだ毒が無いみたいだから安心してくれ」
俺は暴れん坊のアズールを肩に担いで笑って誤魔化した。
ちなみに、こいつらも風魔法を使っての『高い高い』は大好物で、時々織原が強請られて奴らの下敷きにされている。
この手の技能は一回子供に見せたら終わりだよな。
とことん満足するまで遊ばせられる。
そして、お次はジョリーの出番だ。
こんな子供を呼びつけたのでスタッフが不思議がっている。
「あー、やっぱりやるのですか」
「往生際悪いな。
とっとと変身しろや。
それっ、魔力の大盤振る舞いだ」
抗えず、みるみるうちに膨れ上がり、エターナルドラゴン形態になり代わるジョリー。
「おお、これは美しい」
「なんという造形か」
「よし、君。
レギュラー出演決定だ!」
「こっちのドラゴンも実にいいねえ。
まるで美を司る神様が創りたもうた芸術作品のようだ。
しかし、少し小ぶりだな」
そう言いながら、ジョリーも触りまくるバル。
背中にもよじ登っているし。
やはりアメリカン。
何もかも巨大な方がいいというのか。
その後、サービスでゴン太に掌で持ち上げてもらって発狂しているバルはその場に置いておき、操縦タイプのゴーレムの造形と動きを見てもらう事になった。
天然の広場になっている場所で展示されたそれらは、まるで屋外博物館と言っていいような趣があった。
「どうだい、本職から見てこいつは。
一応、プロデューサーに見てもらって手直ししたんだけれど」
美術監督はしばらく、あれこれと色々な角度から眺めていた。
撮影スタッフも指でカメラフレームを作って見て回っている。
メイキングの映像の撮影も始まっていた。
「そうだな。
これは映画用としては悪くない出来なのだが、どちらかというと宣伝用かな。
プロデューサーは、どちらかというとビジネスサイドの意見を出してくれたと思うんだ。
映画本編ではリアルなスタイルに振ったほうがいいと思う。
せっかくリアルで動くんだからね」
なるほど。
CGじゃないのだから、この映画に関してはリアルっぽい感じに仕上げたほうがいいという訳か。
せっかく異世界のゴーレムという売りがあるんだからな。
「次は動きを見せてもらえないかな」
「オーケー。
じゃあ最初は無人の魔核任せの動きで。
それから、次にうちの子達の操縦で見てもらおう」




