118-6 ドッグハウスへ
とりあえず、新プリティベビー共も少し落ち着いたようだった。
また名前で一頻り揉めたが、犬はミニョン達や下の兄弟のようにフランス語でどうかという事になった。
最近、日本ではそういうブームみたいなのがあるそうだし。
一番愛想のいい男の子は、愛想がいいを意味するエマーブル。
略称はエマ。
ちょっと女の子みたいな名前だが、まあ可愛いのでよしとした。
いかにも犬らしい名前ではある。
ちょっと青みがかかった銀色の毛色の男の子は青色を意味するアズール。
一頭だけ女の子のフェメラは女神を表すベヌス。
この子もまた、なかなか器量がいいのだ。
キメルの方は女の子が二頭だ。
ちょっと気取った感じの子はレーヌ、女王の意味だ。
確か、かつて存在したフランスの王女様は母親の事をママン・レーヌと呼んでいたのではなかっただろうか。
もう一頭の可愛らしい感じの女の子はミミ。
これも「可愛い~」の意味だ。
一匹だけ何故か色合いが黒い子がいて、この男の子は定番のノワールとなった。
プリティドッグの子犬連中も、奴らの背中に乗って一緒に走り回っている。
新しい乗り物が手に入ったので、プリティドッグの大チビと小チビがワンセットになって乗り回していた。
「ねえ、この子達をドッグハウスへ連れていってもいい?」
ミニョンに聞かれて少し思案したが、まああそこならいいだろう。
「いいけど、とりあえず最初は俺も一緒に行くからな」
「わあい」
先にジョゼに連絡してから行く事にした。
「そういう訳で今から行くんで」
「あら、あの子達がうちへ遊びに来てくれるの?
じゃ待ってる」
ついでに織原達も呼んでおいた。
「あ、もう生まれたっすか。
じゃ見にいきますー」
「赤ちゃん、もうだいぶ大きくなっちゃったけどな」
そして俺達はドッグハウスへ移動した。
「ジョゼー」
ミニョンが『馬上』から声をかける。
「あらあら、赤ちゃんなのに、もうそんなに大きいのね!」
「ははは。
何せ親がどっちも十メートルサイズだからな」
ミニョンが騎乗するアズールは、とことことジョゼに近寄っていくなり、体を捻ってカプっと『尻尾』で甘噛みした。
「ひゃあ、その尻尾の蛇って毒尻尾じゃなかった!?」
「ははは、まだ毒はないよ」
さすがのジョゼも、ちょっとドキドキしたようだ。
いや実をいうと俺もなんだけどさ。
即死じゃなかったら俺の回復魔法により余裕で回復できるし、エリクサーならきっと死んでいても復活させられるはずなのだが、それは最後の手段なので、なるべくそれには頼りたくないものだ。
今度一回エリクサーによる死者蘇生を試しておくかな。
最近は荒事も随分と減ったので、そういう機会もとんと無くなった。
被検体はダンジョンの奥地で死にかかっている冒険者でも探すかなー。
「あっはっは。
ジョゼったら、もうその子達に懐かれているじゃない」
「うーん、毒蛇尻尾甘噛みは微妙な歓迎だなあ」
異世界帰りの魔法番長は、ちょっとばかり微妙な表情だった。
あっちでは色々あったようだしな。
そして六匹共ジョゼに寄ってきて、カプカプカプと噛み付く。
もちろん全員が尻尾で。
「うはあ~」
ジョゼは、どういう反応をしたらいいのかわからなくて微妙な表情をしていた。
「あっはっは。
よかったな、ジョゼ。
だいぶ気に入られたみたいじゃないか。
気に入らないと構ってくれないぞ。
フンっていう感じにそっぽを向いちゃうからなあ」
「そ、そうなの。
まあいいけどね。
でもドキドキしたわ~」
御嬢様の御邪魔にならぬよう遠巻きにして見ていたジョゼの護衛のおっさん達も、ちょっとドキドキしていたようだ。
「まさか、よりにもよってこの家がこんなにモンスターだらけになるとは」
護衛リーダーのロバートも微妙な顔をしている。
まあ俺がついていて滅多な事があるわけではないのは彼らもよく知っているのだが。
それでも仕事柄ドキドキはするわね。
犬や猫達も、ちょっとおっかなびっくりといった感じの対応だ。
別にフェンリルやキメラの類がどうというのではない。
そんなものは今更なので。
ただ相手が子供というか、まだ赤ちゃんなので警戒しているだけなのだ。
図体の大きな赤ん坊ほど怖いものはあるまい。
チワワなんか一飲みサイズだし。
犬神様二世の御来館は大歓迎なのだが、彼らが思いのほかヤンチャなのが動物的本能で理解出来るらしい。
子供が碌な事をしないのは人間に限らない。
それでいて自分達よりも遥かに大きな体付きをしているので、結構ドキドキものなのだろう。
人間でいえば、図体が五メートルくらいある赤ちゃんの相手をするようなもんか。
しかも、もう半分歩き出しているくらいの子だ。
迂闊な事をしていると甘えられて下敷きにされる。
ちょっと燥いで振り回した手が当たったって、大の大人が吹き飛んでいくだろうし。
何しろ迫力のある顔立ちに『蛇状の毒尻尾』付きだ。
まあ、あれもデフォルメされたような感じで、まだまだ可愛いんだけどな。
彼らも大きくなったら、きっと親と同じような迫力のある姿になるだろう。
長老チワワは、おっかなびっくりで彼らを出迎えた。
「これは、これは。
犬神様二世に御訪問いただけるとは何とも光栄な……」
「「「カプっ」」」
早速猫系魔物キメル三頭に尻尾甘噛みの洗礼を受けた長老。
小さなチワワが相手なので、傍から見た構図が結構ヤバい。
奴らの親達もちょっと慌てていた。
「あいやっ、これは~。
ね、猫神様もいらしたのでしたな。
いや、大変失礼をばいたしました」
それを聞いて満足そうにしているキメル達。
人間や犬などの言葉はちゃんとわかるようだ。
俺もファルからルーター機能で翻訳してもらっている。
キメル三頭の頭の上でプリティドッグ達が、撫でながら連中を宥めていた。




