113-3 僕の私のグリモワール
「さて、諸君。
まず、どんなグリモワールを製作したいのか。
そのイメージをきちんと掴むために、この教材に添付の『グリモワール作成ワークシート』へ順に沿って書き込んでいこう」
さすがは大学教授だけの事はある。
素人が比較的容易に作っていけるように教材を用意してくれていた。
無論、受講料は大枚ポンド建てで払ってあるのだが。
知り合いだからって、別にタダでやらせたりはしないさ。
わざわざ店を閉めてまで来てくれているんだからな。
そんな事は当然の話だ。
どれどれ。
「まずはイメージワーク。
どんなグリモワールを作りたいのか、それを文章や絵で書いてごらん。
このスペースは雑記帳のような物だから、遠慮なく好きに書いていいよ」
うん、さすがプロフェッサーだけの事はある。
幼稚園の子達に、のびのびとやらせてくれている。
離宮の畳大広間に職員を合わせて三百人以上いる人間が夢を書き付けていた。
レオンも来ていて、ルイと一緒に夢中で書き込んでいる。
こいつらの分は内容をチェックしておいた方がいいのかもな~。
トーヤ達の方は今更なのだが。
「ばくれつ・お裁縫まほう」
難しい字なのに、何故か裁縫の二文字だけは漢字で書けるカミラ。
日本語で書いたら平仮名だらけのグリモワールが出来そうだ。
トーヤの『分解魔法大全』。
きた!
まさかの、今更のように分解魔法が~。
これはマズイかもしれん。
思わず俺の台詞の語尾に草が生えそうだ。
エディの方は『親孝行なグリモワール』だった。
もちろん孝行する相手は女親の方だろう。
御隠居の物は『離宮の主・大魔王シェルミナの御小言を回避するグリモワール』だと⁉
いや別にいいんだけどね……。
そのグリモワールの存在がバレた瞬間に、以前の十倍の御小言が飛んできそうな気がするのは俺の気のせいなのだろうか。
何かバルドスがドヤ顔をしているので見にいった。
そこに書かれていた物は。
『ドラゴン魔法大全・五千年の叡智』
今日作るのかよ、それ!
ジェニーちゃんの物はっと。
『ドラゴンハーフの可愛い魔法シリーズ』
うん、本人も益々可愛くなったのだけれどね。
もっと可愛くなるための魔法なのか??
そして、うちのおチビの物はっと。
あうう!
『美味しい芋虫大全』だと~!?
それって果たしてグリモワールと呼べるような物なのか!?
シルが爆笑しながら書いてやっている。
やめろよな、シル。
多分、そのグリモワールの犠牲になるのは間違いなくこの俺なんだから!
他にも、『盗み食いの秘術』『鯉のぼりを攻めるグリモワール』とか。
欲望の限りを尽くしたグリモワールの構想が書き連ねられていった。
鯉のぼりの奴は、五月武者争奪戦に負けたのがよほど悔しかったとみえる。
だが、対抗して『鯉のぼりを守るグリモワール』も作られていた。
子供の日グリモワール攻防戦が執り行なわれるのだろうか。
来年の鯉のぼり争奪戦は、魔法番長にでも仕切りを任せておくかな。
『唐揚げのグリモワール』って一体なんだ。
もしかして唐揚げが美味しく食べられるグリモワールなのか!?
それには俺もちょっと興味がないではない。
『子供を寝かしつけるためのグリモワール』
それ、只の読み聞かせ用の絵本なのでは。
エリーンには不要な物だな。
しかしストーリーが気になるな。
『ケモチビ必殺捕獲術』
もはや実用書の世界だな。
毎朝、毎朝、子供相手に大戦争だからね。
こいつは買い上げて量産し、職員全員に配ってもいいかもなあ。
職員さん達の方が案外と必死になって作っていた。
子供達がグリモワールを持つとなると対抗手段が欲しいんだな。
まあ子供達が生きていく術の一つとして始めた側面もあるので、その辺は勘弁してくれ。
『ショーのお嫁さんになるためのグリモワール』
『どんな時にも食いっぱぐれないグリモワール』
『イワネズミ・必殺ハンティング』
『イワトカゲ完璧捕獲術』
地球出身の子達の奴は、また更に切実な物が多いな。
あの苦しかった岩山での陣地生活が忘れられないものらしい。
だが、その積極姿勢は高く評価しよう。
『冒険者になるためのグリモワール』
いや、どうせなら冒険者になってから使う奴を作らないか?
まあ次回作に期待しよう。
『異世界を逞しく生き抜くためのレシピ』
うーん、サバイバル本なのか料理本なのかよくわからないものだった。
だが以外と役に立ちそうな内容なのかもしれん。
案外とこういう物の写本とかが出回るようになるのかもな。
頑張って作れよ。
みんな、それぞれ結構頑張っているようだ。
一体どんなグリモワールが出来る事やら。




