第113章 ネオ・アースオリハルコン 118-1 万能・魔法の粉
魔法の粉、それはなんて神秘な響き。
子供の頃に誰もが夢に見た事だろう、有名な絵本の物語とかにも出てこなかったか?
だがネットで検索すると、今では足の臭いを消す商品の名称でもあるようだった。
なんて夢の無い時代なんだ。
しかし、今俺の目の前にはそいつがある。
といっても、元は太古の地球産魔法合金を特殊な魔法で分解して特殊な組成を構成し、通常の冶金では作れない魔法金属を創る材料に過ぎないのだが。
考えようによっては、もっと夢がない。
だが、この魔王にも最初はコピー出来なかったほど難解な物体、地球産オリハルコン。
そのアースオリハルコンを原料として好きなだけコピー出来るようにした物なのだ。
実に魔王心をそそる不思議な代物なのだ。
そいつに他の材料を混ぜて合成する事も出来た。
やはり金属の形状にした状態だとコピー出来ない特性なのだが、原料の粉である状態だと好きなだけコピーできる。
その原料と同じ魔法の粉を原料にすれば、材料置換でのコピーも可能だ。
異世界のオリハルコンとは異なり、一旦金属の形にしてしまえば後は普通に加工できる。
それらは通常の工業的な方法で各素材に分解すると、二度と元の魔法金属には戻らないのだが。
魔法物質としての組成の根幹が崩されてしまうのだろうか。
実に不思議な代物だなあ。
とりあえず普通の金属粉末を混ぜて、ドラゴンクリエイションの魔法でよく馴染ませてっと。
出来た。
コスト的には、こちらの方が優秀だ。
これが一番重要なんだよなあ。
鉄・クロム・モリブデン・アルミなど色んな金属を混ぜて、新魔法合金の地金を作っていく。
一旦金属としての形を整えたなら、そこからまた分解して専用の魔法合金粉を作る事も可能だし、アイテムボックスの機能で好きなだけコピーも出来た。
ここまでやっておけば、後はアイテムボックスに備わった開発指定の機能で自動的に各種素材を作成していける。
材料比率を微妙に変えた地金もそいつで作成可能だ。
この手の材料では、そういう事が非常に重要だったりするので、これを自動でやれてしまうのが俺の能力の強みだ。
もうアースオリハルコン製造加工のための専用魔法体系が出来つつある。
ドラゴン魔法を組み込んだ物であるので、普通に習得するのは難しい代物だ。
鍛冶王国王子の御狐どもにはその魔法を強請られたので、腕輪に付与する形で与えておいた。
今もそこで、わくわくしながら作業を見ている子供達。
彼らは俺が作り出した新地金群を夢中で解析している最中だ。
しばらくはドワーフどもも、この俺が与えた新素材に夢中になる事だろう。
ドワーフ・プロデュースの魔導製品が一大進化を遂げるはずだ。
うちも大いにその恩恵に与るとしよう。
そういうところ、親方は物凄く律儀だから期待出来る。
続けて、俺は二つの世界の魔法金属の融合へと取り組んだ。
その在り方が全く異なる物質であるので非常に面倒だが、案外とドラゴンクリエイションがいい仕事をしてくれている。
魔導技術関連にて欠かせない魔法金属であるミスリルは、廉価な材料と混ぜ合わせる事で純ミスリルと同等の効果を得られる『ミスリルベータ素材群』を生み出した。
また使用する地球製魔法金属粉に混合する素材によっては、精製したミスリル合金が圧倒的に強度を増す場合があり驚かされた。
一種の、世界を越えた魔法金属同士のハイブリッド化によるスーパーミスリルの誕生だな。
魔道具においては、電線やLSIのような基盤と同じ働きをする魔法回路を構成する必須素材でもあるミスリルだったが、純ミスリルをLSIとするならば、素材レベルで超LSIを実現できるような革命的な素材が出来上がった。
日本企業でなければ作れない高純度シリコン結晶やカーボンナノチューブ、また各種アースオリハルコンや異世界オリハルコンなどとも組み合わせて色々な適性のある『新導線ミスリル』シリーズが誕生した。
これは思いもかけない成果だった。
門外不出の品ではあるのだが、魔法粉をベースにした『ベスマギル新導線ミスリル』まで作ってしまったぜ。
これはオリハルコンでさえしんどいような特別な魔法による負荷にも余裕で耐えうる代物なのだ。
今は無理だろうが、いつかは製品化してみたいもんだ。
新導線ミスリルシリーズもまた、トーヤ達が夢中になるだろう。
またしてもミハエルの眉間の皺が増えそうだぜ。
俺は下手をすると『魔道具の歴史を変えた男』の称号を手にする事が可能かもしれない!
俺は試験用の極微細ミスリル線や、細長い形状をした試験用素材箔などを各種の素材で作り上げていった。
また各種の素材を試験用に自由な形に作り上げる、魔導式・試験用素材加工装置も作っていった。
新しい素材を作る端から御狐どもが弄り回していて、何時の間にか他の狐っ子達も来ていて、俺のアトリエにもふもふ大増殖の嵐が捲き起こっていた。
まあ俺のリビングに拡張空間の入り口を張ってあるだけなのだから、この中には簡単に入れてしまうのだが。
今、狐っ子どもが作成しているのは、地球式の『魔法の杖』だ。
地球の物の場合はルーンを刻み、更にパワーストーンを埋め込んであるのだが、彼らが作る物はドラゴン文字を刻み、こっちの魔石を埋め込んである。
そして回路の形成用の素材として、例のネオ・オリハルコンシリーズや新導線ミスリルも使用されている。
そのタイプは外装に回路を組みつけていき、表面を強度の高い保護素材で薄く覆っていく。
一応、魔石には呪文を唱えるとドラゴン文字に変換してくれる変換イメージの魔法を組んで、オートモードで使えるようにしてやった。
「頼むから、それはやたらとバラまかないようにな。
ミハエルから使用禁止令が出るかもしれんし」
「はーい」
返事だけはいいのだが、本当にわかっているのかいな。
そう言いつつ奴らを野放しにしている、子供には甘々な俺。
だが皆も楽しそうに呪文を唱えている。
「チチンプイプイ~」
すると空き缶にミミと尻尾が生えて、ネズミのように走り出した。
やれやれ。
「おい。
それに時間制限はちゃんと組み込んでいるんだろうな」
「うん。
試験用にとりあえず三分ほど~」
空き缶のネズミはカップ麺が出来る間の時間、アトリエ中を走り回っていたが、やがてホーミングするとトーヤの足元で元の姿に戻ってその効力を終えた。
キッチンタイマーの代わりに使うと退屈しないかもしれないな。
「でもその地球式の杖も案外と面白いな。
俺とファルにも一本ずつ頼むよ」
「ラジャー~」
熱心に魔法の杖を組んでいくトーヤ。
元になる杖に用いている枝は、庭にいるドライアドどもに強請ってきたのだろう。
植物系の精霊が作った木の枝だから、この種の用途に用いるには相性がバッチリだ。
庭園に生えている樫の木から取ったようだ。
最近ファルが持っている特別な木の棒、『ファル一文字』もあれが素材だな。
あれにドラゴン文字を刻んでみても面白いかもしれない。




