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106-2 プリティドッグとは!?

「あらあらあら、みんなどうしちゃったの?」


 ジョゼは困惑しつつも、とても嬉しそうな悲鳴を上げる。

 彼女の愛犬達、その中でもまだ若い犬達が、こぞって主にむしゃぶりついてくるのだ。


 彼女の最近のブームは、やや大型の犬に振られているので、纏めてかかってこられるとちょっと大変だったりするのだが、別にそれが嫌なわけじゃない。

 むしろ嬉しいのであるが。


「そういや、最近はプリティドッグの子達とばかり遊んでいたから、あまり貴方達と遊んでいなかったわよねー。

 今日は一緒に思いっきり遊ぼうか~」


 それを聞いて若犬達は千切れんばかりに尻尾を振って喜んだ。


「あ、こらこら。

 そう一遍にかかってこないのよ~」


 大勢の犬達の勢いに、床に敷かれた高級なマットの上に押し倒されてしまいながらもジョゼは幸せだった。

 家柄が家柄だっただけに、人間でこれだけ自分に対して心を開いてくれる存在には小さな頃から出会った事がない。

 だが犬だけは違ったのだ。


 物心がついた時、最初にいてくれたのは長老のチワワ。

 彼も最近は歳を取って寝ている事も多いのではあるが、まだまだ犬達の頼れるリーダーだ。


 だが犬達とその主人の仲睦まじい姿を見つめるプリティドッグの集団は何故かニヤニヤしていて、若犬達の心には些か不審に思う気持ちも湧いてきたのだが、そこは若さが勝った。


(ふっ、新参者めが。

 御嬢様は貴様らなどには渡さぬぞ!)


 嫉妬に燃える目で彼らを睨みつけながらも、御嬢様の方へ向いた時には媚び媚びな表情に見事に切り替わっている。

 二重犬格か。


 それを心配そうに見ていたアキレスは、すっとプリティドッグの一団に近寄ると話しかけた。


「こんにちは。

 ねえ、あいつらもああいうような不躾な態度で、あなた方には大変に申し訳ないのですが、出来れば穏便に済ませていただく訳にはいかないものでしょうか?

 長老達も心配しているんです。

 御嬢様にあまり心配をかけたくないのですよ」


「あら、あなたは随分殊勝な性格なのね。

 まだ若いくせに、中々のものよ」


 それを聞いてハッとしたアキレスは、その凛々しい面を上げてママを見た。


「あのう、あなた方って本当は犬ではないのですよね。

 美しい姿をしていますが、なんかアニメに出てくる魔獣のような雰囲気だし。

 あのう、もし差し支えがなかったら、年齢など御聞かせいただいても構わないでしょうか。

 あ、いや。

 女性に年齢を御伺いするのは失礼ですよね。

 私とした事が大変失礼いたしました」


 彼は少し恥じ入るような感じで俯いてしまったが、ママはコロコロと笑って言った。


「ほほほ。

 いいわよー、坊や。

 貴方達地球の犬の寿命は普通なら十三年くらいだったかしら。

 園長先生の知り合いの所の子は十六年生きたって言っていたわ。

 大事にされていたら犬だって寿命も延びるわよね。

 ここの犬達も長生きしそうね。

 私達プリティドッグはね……」


 それを聞いて目を丸くしたアキレスは、自分達犬には計り知れないような何かに対して畏れのような物を目に浮かべ固まってしまったが、なんとか体を後ろに向き直らせて、よろよろとあちこちの壁とかにぶつかりながら長老達の集まりへ報告に向かうのであった。


 それを見て微笑ましそうな笑顔で見守るミニョンママなのであったが、子供達はちょっと悪そうな顔をしている。

 もっと悪そうな顔をしている奴も約一匹いたのであるが。

 それはまさに彼らプリティドッグの本能ともいえるものなのだ。


 あのドワーフが仕事と酒に生きるように、プリティドッグもまた好奇心を満足させ、そして悪戯に命をかける生き物なのであった。


「おい、そこの悪魔共」


 そしてアキレスと入れ替わるかのようにしてやってきた、若手達の先頭を切ったゴールデンレトリバーのロナルドはそう悪態を吐いた。


「はて? 悪魔とは。

 悪魔的な可愛さを誇るプリティドッグという意味ならば、それは我々の事なのだが」


「抜かせ!

 お前ら、ここから出ていけよ。

 聞けば御嬢様のものになる事も拒んだそうじゃないか。

 ここには、そんな奴らがいる資格は無いんだ。

 とっとと出て失せろ、余所者め」


 歯を剥いて唸り声を上げる大型犬の群れを前にしても、ジョニーは微塵も揺るがない。

 首輪に仕込まれた魔法の力を用いれば、実力で犬っころの群など簡単に屈服させられる。

 だが、そんな生易しい刑で済ませてくれるほどプリティドッグは優しくない。


 あの異世界で遥かな強者達を相手にし、したたかに生き抜いてきた、ある意味での最高の強者なのだから。


 彼らのそんな様子を、さも可笑しいとばかりに高笑いしたジョニーは、いきなり人化して、すっと細目でロナルド達を睨んだ。

 急に身長が大きくなった相手に犬の本能でビクっとしながらも、震える声でロナルドは恫喝を続けた。


「ふ、ふん。

 そんな手品みたいな真似をしやがって。

 騙されないぞ。

 お前達は本当は犬なんかじゃない。

 異世界からやってきた魔物なのだ。

 このデビルめ、御嬢様には指一本触れさせやしないぞ!」


 またしてもカラカラと笑いながら腹を抱えて、わざと相手が頭に来るように挑発的なポーズをしながらジョニーは口を開く。


「その御嬢様とやらが我々を追い回し、指一本どころか滅多やたらと触りたがるんだが?」


「だ、黙れ。

 この痴れ者が~。

 よくも俺達の御嬢様を~。

 か、必ず追い出してやるからな!」


「へっ。

 出来る物ならやってみやがれ」


「ああ、やってやらあ!」


 だが、そんな事をしてもジョニーを喜ばせるだけという事が、若いロナルドにはわからないのであった。


 アキレスから話を聞いて、そっと様子を伺いにやってきていた長老チワワのヘルメスは、頭を振りつつ「これは駄目だ」と言わんばかりに、そそくさと自分の寝床へと戻っていくのであった。


おっさんリメイクのコミカライズ第2話27日公開の予定でございます~。

http://denshi-birz.com/ossanremake/

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