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102-6 皆それぞれ

「じゃあ、私どもはこれで」

「ああ、いってらっしゃい」


 山本さんが声をかけてくれたので、御見送りの挨拶をしておいた。


「おや、山本達はどこかへ行くのかね」


 国王陛下が不思議そうに訊いてくる。

 まだまだ祭りは、宴酣(えんたけなわ)なのだから。


「ああ、彼らは両家の家族と一緒に顔合わせも兼ねて、合同で御花見をやるそうです。

 主役はあの赤ん坊ですね」


 そう、やっと御互いの両親と顔を合わせるのだ。

 もっとも、向こうが楽しみにしているのは孫の顔なのであるが。


 そう気の張るような集まりではない。

 大体、あの二人を見ていると、どんな家族親族なのか想像がつく気もするしね。

 両家の集まりも、のんびりしたものだろう。

 特に山本さん一族の方が。


「おお、そうかそうか。

 彼らも帰国は初めてなんじゃったのう」


「まあ子供がいるので、どうしてもそっちが優先になりますからね。

 普通に日本で暮らしていても、かなり遠くに住んでいたらこんなものですよ」


 二人、いや三人は周辺の人に挨拶を終えたので、転移魔法ですっと消えていった。

 向こうで両家の人達を転移魔法で連れていって、どこかで顔合わせをするのだ。

 転移はうちのゴーレムがサポートするから安心だ。


 ああ、レオンが一緒にくっついていっちまった。

 相変わらず油断も隙も無い。

 まあよく知っている人と一緒だからいいか。


 まだ子供だしな。

 まったく人見知りしない子だし。

 何しろ、『赤ん暴君』だった奴なのだ。


 そもそも、あの子は瑠衣の傍から離れないだろう。

 葵ちゃんがしっかりと見てくれているし。


 万が一はぐれたって、自力でなんとでもするほど賢い。

 アイテムボックスに御飯をいっぱい持っているし、困った時は自分で『首相官邸』まで行く事さえ出来るのだ。

 ちゃんと首相官邸への連絡先や住所も教えてあるし、日本円のお小遣いも持たせてあるのだ。

 あらかじめ首相にも、いざという時の保護を御願いしてあるし。


 それに地球には俺のゴーレムだの精霊だのが大量にいる。

 そいつらはあの子が呼べばすぐ来てくれるし、異世界に通じるスマホがあるので親父がすぐに迎えに行くだろう。

 親馬鹿アントニオにも、そのためだけに異世界転移の魔法を渡してあるのだ。


 それよりも、好奇心に負けて一人で地球探険に行ってしまって、しばらく帰って来ないような事態の方が心配だわ。

 ここ地球では魔素が無いので、この俺とて行方不明者を捜すのに苦労するからな。


 まあそれでどうにかなってしまうような柔な奴ではないので心配は要らないのだが。

 象・河馬・ライオン・ホッキョクグマ程度なら幼馴染にされてしまいそうだ。

 ワシントン条約って異世界にも適用されるのか?

 その手の奴を見つけたら連れて帰ってきそうで困るのだが、あれらは魔物じゃないからな。


「こういう時に魔法って便利ですよね」


 普段は、あまり魔法に関心のない山本さんも思わずそう言っていた。

 俺にとっては物作りや戦闘が主体となるスキルや魔法も、山本さん達にかかっては只の便利機能でしかないようだ。

 電子レンジやエアコンなんかと、そう変わらない認識なのかもしれない。


 元々クリエイティブな分野のカップルなので、物作りにユニークスキル(日本で積み重ねてきた物含む)を使用しても、魔法はあまり使わないものな。


 彼らの帰省先で、あのおかしな連中とかが出てもいけないので、新撰組が念のために護衛についていっている。

 いざとなったらルイが出てきて自分で〆るだろう。

 なるべく活〆、いや『生け〆』にしておいてくれるといいのだが。

 子供は一切遠慮がないからな。

 あの年頃の子に虫なんかが捕まったら、あっという間にバラバラにされるわ。


 ふっと見ると、プリティドッグ達も楽しんでいるのが見えた。

 屋台を冷やかしにいったり、食えそうな肉抜きメニューの食い物を仕入れてきたり、うちのブルーシートの上で御馳走に手を付けたりと、思いっきり楽しんでいる今年生まれたばかりの子犬達。

 うちの陣地には、ちゃんとプリティドッグ向けのベジタリアンなメニューが専用で用意されているのだが、それも山本さん謹製の素晴らしい代物であった。


 人間形態のままで王妃様や、やっぱり付いてきちゃいましたの犬公爵に抱っこされて、あれこれと楽しんでいる。

 どこからどう見ても、ただの外人の家族連れにしか見えない。

 だが、やっぱり今年生まれた子達は落ち着きが無い。

 そして我慢が出来ずに、ポンっと子犬体形になって走りだしていく。


「あ」

「いってしまった」


 ガックリと肩を落とす犬王族二人組。


 プリティドッグの事だから大丈夫だとは思うのだが、うっかりとどこかで捕まってしまうといけないので、チビ犬達もちゃんと首輪はつけてある。

 これはサイズ調整機能が付いているので大きくなっても使える物だ。


 まだ子犬のうちは割と普通に犬っぽい感じだ。

 もうミニョン達は親に近いような感じの生き物になっている。 

 まあプリティドッグは大人になっても非常に可愛らしい感じのするスタイルなのだが、子犬達はまだまだ子犬体形なのだ。


 性格は犬種でいえば、子犬時代の柴犬に近いんじゃないかな。

 無駄に吼えないし頭も良くて愛らしいのだ。

 悪戯好きなところだけは玉に瑕かもしれないけど。

 やや難儀な性格も柴犬的と言えない事もない。


 桜祭に遊びに来ていた街の子供達が、連中のあまりの可愛らしさに寄ってくる。


「わあ、可愛いなあ」


「これ、なんていう犬なの?

 見た事ないや」


「ははは、これはプリティドッグって言うのさ。

 この子達はまだ子犬だな」


「へえ、名前の通りに可愛い子達だなあ。

 よしよし」


「わあ、凄く撫で心地がいいなあ」


 おチビ達が子供から人気なので、ミニョン達もにこにこしている。

 何かあるといけないので、付き添いで一緒にいる大きい方の兄弟は人化したままだ。


 子供達の中には、スマホからSNSに写真を上げている子達もいた。


 プリティドッグ達を取り巻く人垣は段々大きくなり、何か凄い事になってきていて、市役所の係の人や巡回の警官が何事かとやってくるほどの盛況となった。

 やはり、この辺の事情は世界が変われども同じ有様だった。


 これほどの騒ぎの元が只の可愛い犬だとわかって警官もちょっと面食らっていたのだが、特に事件ではないので帰っていった。

 職務中なのだが、ついつい頭を撫でていく人もいて市民の笑いを誘った。

 笑顔の警官と可愛いワンコのツーショットは悪い絵ではない。


「相変わらず、あの可愛らしさは破壊力があるなあ」


 何かの集客イベントがあれば出演してもらうといいかもな。

 案外とアル・グランドでは王妃様の飼い犬が活躍しているかもしれない。

 呼べば兄弟達もすぐに集まるしな。


 後ろで突然太鼓の大きな音がしたので何事かと思って振り返れば、ドワーフの連中が芸を始めたので、御狐王子達も混じって太鼓を叩きだしたのだ。

 反対岸でも、元々の街本来の祭りの参加者がジャグリングとかやっているのだが。


「まさか、これを自分の故郷の街で見る日が来ようとはな」

「きゃはははは」


 火吹き芸に始まり、あの図体からは信じられないような体の柔らかさで凄まじいリンボーダンスをクリヤし、ついには人間ピラミッドを演じ始めた。

 俺も、大喜びのおチビを抱いてありがたく見学する事にした。


 本当はこんなところで勝手に火を使うのは禁止なんだが、国王陛下も一緒になって火吹き芸をやっていたし。


 何しろドワーフどもと来た日には、あの図体と赤銅色の迫力のある筋肉達磨の団体であるので、とにかく目立つ。


 おまけに大ハシゴを持ち出して消防出初式みたいな真似も始めたので、遠くからもよく見えるので人が集まっている。

 その中には、苦笑している仕事中の公安の人間(東京から西三河まで急遽出張中)の姿も見られた。


 やがて腕を、まるで天を突くかのように突き上げながら、全身を反らせ、首や手足もくねらせる激しいダンスを踊り出すドワーフの戦士は拍手喝采で賛辞され、調子に乗った街の若者も一緒になって踊り出した。

 だが、さすがに無理があったようで、一分どころか三十秒も持たずに大の字になって彼らは地面にへたりこんだ。


 あれも本来なら普通の人間が踊れるようなダンスじゃないからな。

 リズムからして無理があるわ。

 全然真似しきれていない。


「パパはやらないの?」


 愛娘が当たり前のようにそう訊いて来る。

 娘から見て、パパは当然あの集団と一緒にプレーすべき人だったらしい。


「ん? ああ、やってもいいんだけど今日は遠慮しておこう。

 俺は苦労して帰れた故郷の街で、御花見をゆっくりと楽しみたいな」


「そうかあ」


 そんな若干残念そうな娘の頭を撫でて宥めながら、俺は家族を引き連れて故郷の街に帰ってこれた幸せを噛み締めるのであった。


アルス「そういえば、僕のキャラもまた無いんだねえ。まあいつもチョイ役だし」

アル 「いい加減出しておきたいんだがな。枠の関係があるんで、後が苦しくなるし」

アルス「お山のシーン無かったのが残念さ」

アル 「王族の登場シーンが軒並み無くなったからな」

アルス「今回はファルちゃんがメインみたいなもんだからね~」

アル 「ただでさえ影の薄い王太子殿下の影が完全に薄くなっちゃったな。そのうちに出る予定のお見合いシーンは、どうしようか」

アルス「いっそ、そのシーンも削ってしまおうか~」


 アルス君の参考画像や基本データはイラストレーター様に渡してあるのですが、枠の都合でまだキャラにはなっていません。


 彼がキャラになる日は果たしてやって来るのでしょうか。


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