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100-4 気合満点

「という訳なんだけど。

 どうしようか、アル御兄ちゃん」


 結局、困ったエミリオが俺に相談してきた。


「なんだと?

 エリの奴ときたら、事もあろうに、あのミハエルに懸想しているというのかい」


「そうみたいだね~」


 エミリオは、御手上げポーズでそう答える。

 この子も、もう日本でいえば小学校三年生に上がるのだ。

 そういう仕草も少し大人びてきた感じがする。


「それはまた」


 ちょっと想像してみた。

 あのイケメン王子の隣に、小学生相当のエリが売り子スタイルやパティシエ・スタイルで澄まして立っているシーンを。


「ぷふっ」


 ちょっと笑ってしまった。

 いやエリも、もうすぐ日本でいえば中学生に上がる歳なんだけど。


「いやいやアル御兄ちゃん、笑っている場合じゃないんだけどな。

 その件で婿入り先からの僕に対する追求が無茶苦茶に厳しいんだから」


「ははは、悪い悪い。

 いや、エリの想い人があのミハエルだとはなあ」


 まあ、薄幸の美少女が王子様に憧れるのは物語の定番だからな。

 とはいえ、あまりに身近過ぎて今更感が半端ない。

 さてどうしたもんかね。

 身分違いの恋ですか。


 思案してみたが、特に良い考えも浮かばないので、ちょっとエリ本人のところへ行ってみた。

 今彼女はキッチンエリで、御機嫌に見回りをしている最中だった。


「ヤホー」

「あら、アル御兄ちゃん。どうし」


 エリが全部の台詞を言い終わらないうちに、一緒にいたエリーンに手で軽く合図をしてから、ささっと転移魔法で拉致してガラスの園へとやってきた。


 エリは目を瞠って、突然に連れてこられた、この雄大というか壮烈な風景に見惚れていた。

 そういや、ここへ連れてきたのは初めてだな。

 この前、あのロレンスの馬鹿の御蔭で風景も更にパワーアップしたし。

 うむ、我が作品ながら美しい。


「それで、いきなりこんな所に連れてきて何の話?」


 不思議がるエリに、俺はにっこりと素晴らしい笑顔でストレートパンチをくれてやる。


「お前、ミハエルの事が好きなんだって?」

「な、な、な、どうしてそれを~」


 真っ赤な顔で、可愛い拳を口元に寄せてどもるエリ。


「エミリオ達がそう言っていたぞ。

 周りからはお前の様子を見ただけで完全にもろバレだったそうだが」


「え“」


 自分ではまったく気付いていなかったようだった。

 あんなチビどもにバレているとは思っていなかったのだろう。


「で、本当のところはどうなの」


「う、好きです。

 だって私、ああいう縁の下の力持ちみたいな人が大好きなの。

 この街には、自分の事ばかり考えて悪事を働いていた碌でもない人も多かった。

 そういう大人は沢山見てきたわ。

 でも、あの人は違うの。

 感じられる天上の魂。

 どうせ結婚するなら、あんな人がいいわ。

 それに」


 ああ、わかるわかる。

 あいつは格好いいものなあ。

 もう絵に描いたような色男ぶりなんだから。

 特にシンデレラのような薄幸の少女を演じてきたエリから見たら、それはもうグッとくるだろうよ。


 そうか、こいつは中身から惚れていたか。

 さすがは俺の自慢の妹だけはあるな。

 そこは大いに褒めるところだ。


「そうかあ、じゃあ頑張れよ~」

「え、こんな事を人から強引に聞き出しておいて、それだけ?」


 エリは、信じられないというような顔で見返してくる。


「ああ、何か問題のある相手だとマズイなあとか思っていたから確認しにきただけなんで。

 なんだ、俺に恋愛成就を手伝ってほしかったのか?」


「あ、いや別にそういう訳じゃないんだけどさ。

 何かこう、もっとさ。

 あっさりと軽く流すんじゃなくて」


 なんともし難い、もどかしいとでも言いたいような感じで、無為に両手を宙に泳がせているエリ。


「鯉は自分自身の手で掴み取れ!」

「御兄ちゃん、それはちょっと字が違うよ~」


 ああ、いけねえ。

 幼稚園の企画で魚の掴み取りとかどうかなと考えていたもんで。


「まあ、とにかく頑張れ。

 じゃ、帰るぞ」


「ぶう~」


 餅のように膨れているエリを連れて、俺は王宮へ飛んだ。

 キッチンエリへ戻るのではないので不思議そうにしているエリ。


「まあ。

 一応、訊いてみるだけは訊いてみるか」


「え、誰に?」


 エリは怪訝そうな表情を俺に向ける。


「そりゃ、ミハエル本人にだろう」

「ええーっ」


 目を真ん丸にするエリに遠慮なく言っておく。


「いや、あれでも大国の王子様なのだからな。

 今から唾をつけておかないと間に合わないぞ」


「ええっ」


 だが、エリも少し考え込んでからこう言った。


「そうだね。

 そうかもしれない。

 でも、あたしなんかが王子様にそんな事を言っちゃってもいいのかな。

 それに、あたしみたいな子供は相手にしてくれないんじゃないかな」


「まあ、その辺は訊いてみるだけだからさ。

 相手はまだ御相手も決まっていないんだ。

 言ってみるだけ言っておいたって構やしないさ」


「そうか、よっし。

 お兄ちゃん、あたし頑張る!」


 この糞度胸!

 もう気合満点だな。

 さすがはこの精霊魔王と呼ばれた俺の義妹だけの事はあるぜ。


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 なんと巻頭カラーでした~。

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