97-2 もふもふはやっぱり正義です
「おーっ」
更に奥へと進み、今度子供達が嵌まっているのは、いわゆる体験ゾーンだ。
色々な製品が置いてあり、訪問者が好きに弄り回せるようになっている。
まさにトーヤパラダイス的なゾーンだ。
さっきの環境ゾーンは、ちらちら見ただけで通り過ぎてしまった。
あっちの世界では、まだ特に気にするほどの環境破壊は起きていないせいでトーヤ達も関心は薄いようだ。
俺も環境には充分に気を使っているし。
一応、環境保護の必要性については授業で教えてある。
トーヤも一応チェックするだけはしていたようだ。
今奴らが取り付いているのはカッティングマシンだ。
こいつは布やプラシートなどをカットする機械だ。
ここで切り抜いた素材を家に持ち帰って縫い合わせたりもできるようだ。
アプリなんかを使って好きなデザインを作る事もできる。
素材は好きな物を出してやった。
薄手で簡単に切れるものなら何でも切れるようだ。
他にもレーザーマーカーだの、工作機械だのプリンターだの、弄り回していい機械が目白押しだ。
「お前ら、これらは好きなだけ弄っていいけど、分解するのだけは絶対に駄目だ」
慌てて日本規格の分解道具を後ろ手に隠す御狐コンビ。
この子達も、もう小学生なのだ。
下手な大人なんかよりもよっぽど頼りになるし、体もそれなりに大きくなったのだが、まだまだ油断大敵なのだ。
そして奴らのピコピコと動く可愛いミミが、周りの子供達から注目の的だった。
一応尻尾は仕舞わせておいたのだがな。
やはり帽子も被せておくべきだったか。
どうせ興奮してすぐに帽子もずれてしまうと思ったので、そのままにしておいたのだが。
近くにいた小学生の女の子と御母さんがケモチビどもに見惚れている。
「お母さん。
あの子達のミミ、とっても可愛い~」
「そうねー、上手に作ってあるわねえ」
確かに最近は、こういう物も作ろうと思えば簡単に作れちゃうからな。
電子制御で動くような物も市販品として出回っている。
誰も本物のケモミミとは思っていないようだ。
案外とチョロイな。
俺は辺りを見回したが、以前に現れたような敵は見当たらない。
もしかするとゴーレム達が自主清掃に励んだ結果かもしれない。
奴らも『ロボット三原則』なんていう糞な物の制限は受けないが、無闇に相手を殺したりはしない。
元はあの船橋武が作った物であり、この俺が産みの親なのだ。
『殺さず』とまでは言わないが、俺が無闇な殺生を嫌うのはうちのゴーレム連中もよく承知している。
ただし、ゲルスの奴らがドランを襲撃した時みたいに、俺の身内に手を出した奴は『問答無用で殺れ』と申し付けてあるが。
公安には、今日ここへ来る事は言ってあるので、彼らは外で待っているようだ。
米英諜報機関の連中は今日見かけていない。
もしかして土曜日なので、あの外国の公務員連中は休みなのか?
別に荒事に参加している訳ではないし、必要ならそこの休日返上で俺達を監視している公安から情報は貰えるだろうしな。
しかし、このカッティングマシンの機械は悪くないな。
カミラとかへの御土産にしてもいいか。
買いたくても御土産用に売っていないので、とりあえずコピーしておいた。
今日はミシン屋さんとの初顔合わせだったので、最小限の人数にしたのだ。
また団体だと申し込みをしておかないといけないかもしれない。
平日のケモミミ学園の社会見学として考えておこうかな。
おっと、小さな男の子が近づいてきて、うちの子達のミミに触ろうとしている。
そして、その子が選んだのは可愛らしいネコミミだった。
ちょうど簡単に手が届く場所だしな。
「にぎゃあ~」
いきなりミミをギュッとされて、うちの娘がミミを押さえて凄い声を上げた。
不意討ちするとこうなるのか。
普通なら獣人の子に対して、ここまで綺麗に襲撃が決まる事はないのだが。
今日は我が公爵令嬢も目新しい玩具に夢中だったらしい。
「だれにゃあ~」
あ、何か凄く可愛い喋り方になってしまっている。
ミミを押さえたまま、若干涙目だ。
俺も、ちょっとだけ、ほっこりしてしまった。
「わあ~、びっくりした~」
「びっくりしたのは、こっちにゃあ」
まだ語尾が可愛くなったまんまだ。
もちろん、このあまりにも可愛らしい様子は空中撮影ユニットにより記録されている。
奥さん達へのいい御土産だな。
「ママー、あの子のおミミ、凄くもふもふなの~」
「へえ、どれどれ」
おチビのミミがあっという間もなく、手慣れた感じにもっしゃもっしゃとされてしまっている。
さすがはプロの御母さんだぜ。
手際がいい事この上ない。
気持ちがよかったのか、おチビもちょっと甘えるような感じになってしまっている。
そして御母さんの次なる標的は御稲荷コンビだった。
「あ、そーれ。
もっしゃもっしゃ~」
御母さんも楽しそうにもふっておられる。
狐っ子どもは、もう大きいので騒がない。
大人しくもふられている。
相手に敵意が無い事がよくわかっているのだ。
目をギュッと瞑って気持ち良さそうにしている。
「あたしも、もふもふする~」
「私も~」
他の子達もいっぱい寄ってきた。
特に女の子に人気だ。
ふふ、もてているな、お前ら。
みんなからもふもふされて、コートの下に隠れていた狐尻尾まで外に出てしまった。
「わあ、凄い尻尾!」
「まあまあ。
御父さんってば凝り性ね~」
おやおや、こいつらがもふもふなのは俺のせいになってしまっているようだ。
「あはは、いいでしょう。
みんな、もふもふなのですよ~」
俺は適当な事を言って誤魔化しておく。
まあいつもの事だった。
いつの間にか、おチビも猫尻尾を出して輪の中に混ざっている。
そんな様子を見て、ファルも何を思ったのかぴょこっと頭に可愛いファルスミミを出した。
ぷりんっと尻尾も出しているようだ。
「お前、そんな器用な事が出来たの?」
「出来たの、っていうか今初めてやってみた」
どうやら、もふもふの輪の中へファルも一緒に混ざりたかったようだ。
さすがにいきなりアムール虎サイズのファルス形態に転身したら、ここではパニックになりそうだから人化状態で部分的に変身しているようだ。
「あら、この子も可愛いわ」
「これ、何のミミかしら?」
「ファルスだよ」
「ファルス?」
「うーん。
神獣、霊獣になるのかな?」
「いいわねえ。
ファンタジー、好きよ」
ファンタジー小説に毒されているらしい御母さんが何故か納得してくれたようだ。
この子の正体を御見せ出来なくて本当に残念ですわ。
この子の図体だと、ここじゃ狭いしね。
だが触ってみて、その感触に驚いたようだ。
「うわ、なんだろ。
この子を撫でると物凄く気持ちいいわ」
「どれどれ?
うお、本当だわ。
なんかジーンとしちゃう」
「僕も僕も~」
かくしてレインボーファルスも、所縁の稀人である船橋武や俺の生まれ故郷である日本の人達に愛され、もふもふされまくったのであった。




