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96-9 フィアの世界、再び

 その一方で、ミレーナはダンジョンの御供にするべく、可愛いゴーレム騎士を作っていた。

 デザインはデフォルメされた『ベル御兄ちゃん』である。


 ちょっと趣旨が違うような気がせんでもないのだが。

 案外と、これも本当は夜一緒に抱いて寝る用なのかもしれない。



 そして目玉となるフィアのペットダムが問題だ。

 なんかデザインが御釈迦様っぽい感じの奴が出てきた。


 いや、大仏っぽいのか。

 頭があのパンチパーマみたいな感じになっている。

 可愛い物を作れと言っておいたのに。

 職業柄、感覚が少々アレなんだろうか。


 額には何故か魔石が嵌め込まれている。

 それを眼にした瞬間に何か嫌な予感がした。

 ヤバイ。


 そいつは座禅を組むようなスタイルで静かに佇んでいたが、突然静かに目を開けた。

 あ、いかん。

 こいつは!


「フィア、そいつの起動を今すぐ中止しろ!」


 だが全ては手後れで、その場にいた、いや離宮にいた人間全員が奴のフィア時空に吸い込まれていった。


「いかん、みんなの魂が溶ける!

 織原~」


 だが織原はその場にいなかったようなので、一緒には来ていないはずだ。

 いや、いるのか?

 広間にいなかったはずの使用人や侍女達も、何故かこの空間を彷徨っている。


 織原がこっちへ来てしまっているとなると脱出は困難かもな。

 この前も、かなり苦労して戻ったらしいので。


 俺は急ぎ片手でレミを抱き締め、シルの手を引いた。

 いや?

 しかし危ない感じはまったくしない。

 うちの家族もキョトンとしている。


 何か様子がおかしいぞ。

 これは織原に聞いた、あの危険そうな世界ではないようだ。


 一緒に来た子供達もみんな、とても楽しそうだ。

 まるで宇宙遊泳のような感じで宙を泳いでいる。

 ファルも大燥ぎだった。


 はあ?


「なんだい、こりゃあ」


 隣に来てくれた沖田ちゃんが教えてくれる。


「ああ、この前の物とは確かに何かが違いますね。

 この前のはかなり破滅的な代物でしたが、今回のこれはフィアちゃんがペットダムのコアに何かを付与したのでは?

 本人が意識してやったわけではなくて。

 この人形達も、なんといっても魔王様が作ったコアを持っているのですから」


 う、この怪しげな空間は、俺とフィアの合作だったのか。


「くっ。

 今日のところは大人しく負けを認めておいてあげるわ。

 狂乱の冒険者め、次は絶対に負けないからね。

 勝負は次回に持ち越しよ。

 御兄ちゃんは絶対に渡さないわ。

 なんたって、こっちはベル御兄ちゃんと一つ屋根の下で暮らす仲なんだから!」


 この世界のあまりの楽しさに陥落し、悔しそうに負けを認めるミレーナ本人。

 彼女のペットダムはもうこの楽しい世界に夢中だ。

 本人も今日はもう諦めて一緒に楽しむ事にしたらしい。


 まあ、この前はフィアの方が凹まされていたらしいから、これで御相子という事だな。

 そもそも、もはやペットダム勝負ですらないが。


 ペットダム達も凄く楽しそうだ。

 めくるめく夢の世界。

 子供達と一緒に燥いで、燥いで、燥ぎ疲れて。


 気が付いたら元の世界の離宮の広間に戻っていて、子供達もみんな幸せそうな寝顔だ。

 ペットダム達は皆、子供達に寄り添うようにしている。


 トーヤとエディは、大神官見習いが製作した謎のフィア時空にて浄化されたものか、険の無くなった顔で微笑んでいるゾンビ雛に囲まれて可愛い寝息を立てている。


 いつのまにか、目の前に織原が立っていた。


「また変な時空が開発されてますね」

「ああ、今度は俺の作ったコアとフィアの無意識の力が合わさったんで、また変な物が出来たらしいな」


「あはは。

 せっかくの楽しい世界でしたが、俺達はもうそろそろ帰らないとマズイですからね。

 子供達もみんな寝てしまったし」


 こいつもスキルの腕を上げたな。

 内部から一発でレスキューされたぜ。


「先輩、今の何何?

 すっごく楽しかった!」


「なんだかよくわからないものさ。

 まあ、ここじゃいつもの事だよ」


 そうか、新たな御客様にも楽しんでいただけたようで、それは何よりだな。

 西田ちゃんが、その割と大きめの胸を押し付けて織原の腕に抱きついていたので、織原本人も結構幸せそうだ。


 フィア自身はボーッとした感じでペタンと女の子座りで床に座り込んでいて、「今何かありましたか?」みたいな顔をしていた。


 また本人に自覚が無いのか。

 コントロールが出来ていない分、やっぱりルイよりもこっちの方が危険だな。


「うーん、それにしても今のは一体なんだったのだ」


 俺の呟きも何も意味をなさなかった。

 フィアの謎時空には、まだまだ計り知れない秘密があるようだ。


 あのペットダム釈迦は俺が預かって封印しておくか。

 もう王国の裏宝物庫に封印しておいてもいいくらいの案件だ。

 その件はミハエルに相談してみるかな。


 そして、ファルは作りかけだったペットダムを完成させた。


「また豪くじっくりと作っていたな」

「うん、この子はファル2号だから」


「ん? どういう意味だい?」

「出来てからのー、御っ楽しみ~」


 ファルが珍しく勿体をつけた。

 やがて出来上がったファルのペットダムは、起動されると不思議な霊光を放った。


「こりゃあまた!」


 そう、いわば『祝福のペットダム』だ。

 それを見て殺到するプリティドッグの子犬の群れ。


「あ、待って~」

「行ってしまうのか」


 御膝の上で可愛がっていた子犬達が一斉にいなくなってしまったので、悲鳴に近い声を上げる王妃様と犬公爵。


 子犬達は『祝福のペットダム』に頭を撫でられて思いっきりデレた。

 いや子犬達だけでなく、子犬型ペットダム達も駆けつけた。


 他のペットダム達も起き上がってファル2号に殺到したので、この大会はファルの優勝で幕を閉じる事になった。

 もう各一回ずつ対戦したら、あとは人気投票にしようと思っていたので丁度いいか。


 ペットダムの魅力の神髄は、対戦して御披露目したら、その後で楽しく一緒にペットダムと触れ合えるところにあるのだから。


 だが子供達の人気をファル2号に取られてしまい、うちのゴーレム御雛様達がちょっと拗ね顔だ。

 また来年箱から出した時に、髪が伸びていなければいいんだけどな。


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