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96-7 我儘な人形達

 とにかく子供達は新しい御遊びを楽しむ事に決めたらしい。

 まず何を作るのか、どんな仕様にするのか。

 スケッチブックに絵を書いて色々と書き込んでいる。


 うちの娘は?

 ああ、立派な芋虫の絵だった。

 まあ俺が芋虫を食わされるわけではないのでいいか。

 来年は是非、芋虫じゃないチョコを御願いね。


 ん?

 トーヤ、エディ。

 そ、それは!


「お前ら、それで勝負なのか?」


「うん。

 素材持込はOKのルールだよね」


「あ、ああ。

 それはまあ、別にいいんだけどな。

 頑張れよ」


 どうも、あいつらは玄人好みで困るな。

 よりにもよって、あれでペットダムを戦うとは。


 そういえば、エディも国家特級技師試験にあっさりと合格したようだ。

 だが周りの人間は誰も驚かずに納得したらしい。

 まあそうだろうな。

 あの子のレベルはもうトーヤとそう変わらない。


 あいつらが拾ってきた御狐のチビどもも、二人からあれこれと仕込まれてるらしいし。

 そういやあの子達の事はミハエルが目を付けていたみたいだな。


「ケモミミ園出身の狐獣人はヤバイな。

 出来れば、彼らはアルバトロス王国で雇えるように押さえておいてくれ」


「ははは、子供達は進路なんか自分で決めるさ。

 欲しいのなら、ちゃんと今からスカウトしとけ。

 そんなものは待遇次第だよ」


 俺はそう言って、渋い顔をするミハエルを宥めておいたものだ。

 御狐様達は勝手に進路がどんどん決まっていくな。



 そこから、わいわいやりながら、みんなでペットダムを組み立てていく。

 だが、何かおかしい。

 ペットダム自身が組み立てている最中に、あれこれと文句を付けてくる。


「おい、そこ。

 何故そんな風にするんだ。

 もっとこうさあ、なんとかならない?」


「えー、そんなのヤダ。

 センス無いなあ、もう」


「この毛皮の色とかイマイチ。

 作り直して」


 まるでドライアドのように文句が多い。

 全部が全部じゃないのだが。


 おかしいな。

 うちのゴーレムで、こんなに性格が悪い我儘な奴はいないのだが。

 何か開発する上で製造上の品質の問題でもあっただろうか。

 コアに不良品でも混じっているのか?


 子供達は、組み立てているペットダム自身の厳しい指導を受けながら、必死に頑張って作っている。

 うん、確かに組み立てられている本人自らの指導により品質や出来栄えは極めて向上している気はするのだが。

 俺は首を捻りながらも、まあこれも教育の一環という事で、とりあえず静観し見守る事にした。



 御昼時になったので、今日は山本さん特製の雛祭用散らし寿司を並べてみた。

 これには日本から輸入したプレミアム卵を用いた錦糸卵や甘いでんぷ、この世界で取れた新鮮な魚介類や野菜なども奢られていた。


 それを頬張る子供達の瞳も酢飯の艶に負けないくらいに輝いていた。

 俺も美味しい散らし寿司を家族で堪能し終え、チビどもは御昼寝タイムに入った。


 ルイも瑠衣の姿に戻って、おっぱいタイムを終えて寝ている。

 この子なんかは、御昼寝どころか寝るのが仕事みたいな年頃のはずなのだが。

 隣にはレオンも寝かされている。

 この子も大人しく寝ているのなら、本当に可愛いだけの子供なのだがなあ。


「いやあ、もう娘の成長が楽しみで楽しみで。

 寝顔を見ているだけで幸せいっぱいです」


 山本さんは、もうだらしない笑顔を浮べて、やに下がりっぱなしだ。


 そのうち成長して自由に歩き回りだした時に、この子なんか絶対に何か強烈なオイタをやらかすと思うのだが。

 しかも、そこで寝ている元祖スーパーベビーのレオンとコンビでな。


 この瑠衣、いやルイはある意味で大変な危険人物なのだ。

 俺と同系統の能力を持っているといっても過言ではない。


 セブンスセンスたるイコマの力及び、魔王と呼ばれるほどのチート能力を持つ俺と。

 それと同レベルの力を持ち合わせた者なのだ。


 しかも両親が共に地球人なので、地球へ行く権利を向こうの法律的には誰にも止められないというおまけ付きなんだぜ!

 それに関しては、日本の法務省だって正式に在住を認めざるを得ないのだからな。

 入管だってフリーパスさ。


 まだ御子様だから、何をするかわからないしな~。

 もし地球へ行かせたら、うちのフィアとどっちが危険なのかなあ。


 まあ、フィアを地球へ行かせたら宗教絡みの世界全面戦争のネタになるのかもしれないが、瑠衣は下手をすれば戦争そのものすら粉砕してしまうような能力がある。


 しかも、あの子に加護を付けまくった精霊軍団が山盛り味方をするしな。

 フィアの場合は身分的に渋々と精霊が味方してくれるくらいかな。

 あの辺の事も精進させないとなあ。

 とりあえずフィアには御菓子作りの才能もなさそうだから、そっちの方はエリと山本さん頼みだ。


 多分、ルイはこのアスベータと地球を上手く繋ぐ事が出来るはずだ。

 俺の腕輪がなくても、地球でも魔素を好きなだけ使う事が出来るだろう。

 あの能力はきっと父親譲り!

 親父の方はあれだけ高い基礎能力を持ちながら、ほぼ和菓子作りや料理に能力を使うしか興味のない人だというのに。


 そうなると、あとは葵ちゃんのアグレシッブな性格が遺伝的にどう出るかだな。

 何しろルイは、御付き合いしている友達がアレだしなー。



 御昼寝タイムも終わり、いよいよペットダムを起動する事にした。

 まず第一試合はプリー君対ウオッカ姫の対決だ。

 いやクジで決めたんじゃなくて、絶対に対戦したいという本人達の熱い要望でそうしたまでだが。

 こんなものは只の雛祭りの御遊びだから、そのチビ姫様からの要望はあっさりと聞き届けられた。


 プリー君は自分の御気に入りで勝負だ。

 例のデパートの屋上の乗り物を作ったようだ。

 確かに可愛いかな。


 愛らしい子豚で、その場でバネの上下運動で動いて「ビヨヨヨーン」としか言わない奴だった。

 

 だが、その(乗っているプリー君本人の)あまりの可愛さに、対戦相手のウオッカ姫の作った可愛らしいデフォルメ人形『プリー君2号』は大人しく負けを認めた。

 この組み合わせでちゃんと決着がついたのは初めてだな。


「いやあ、さすがは俺のモデル、元祖プリー君だぜ。

 まあ、あのピンクの子豚野郎と単体で比べたら俺様の勝ちなんだろうけど?

 本人をセットにされちゃあな。

 俺様の完敗だぜ!」


 何か偉そうな奴だな。


 その後はプリー君のビヨヨヨーン号とプリー君2号を合体させて、二人で仲良く雛アラレを食べながら「ビヨヨヨーン」しているのを眺めている。



 うちのおチビはやっぱり「芋虫」で勝負のようだった。

 もこもこで、若干毛虫っぽい感じはするが立派な芋虫だ。

 確かに可愛らしいキャタピラなんだが。


 シルと一緒に頑張って作っていた。

 レミだけに作らせると、やたらとリアルなキャタピラに仕上がるからな。


 そしてまた見事に勝っていた。

 相手はまたドワーフ三賢人の一人である婆様だ。


 今回は何故か、あの筋肉大王をモデルにしたらしきペットダムを持ち出してきたのだ。

 その出来は子供が見たら、ちょっと泣き出しそうな按配だ。

 もう試合が始まる前から勝負はついていた。


 おかしいな。

 そんなパーツは作った覚えが無いのだが!?


「なあ、マリア導師。そいつの材料はどこから持ち込んだんだ?」


「何を言う。

 苟もドワーフ三賢人なのじゃからの。

 これくらい晩酌前よ」


 ドワーフの世界じゃ、朝飯前と言わずに晩酌前って言うんだな。

 どうやら催促されたようなので、俺は差し出された杯に白酒を注いだ。


 しかし可愛い物という御題で、これは無理があり過ぎるのではないか。

 さすがに顔が怖すぎるぞ。

 これは確か親方が仕事に真剣に取り組んでいる時の顔だわ。

 俺が適当に何かを作っても楽勝で勝てそうな相手だ。


「何故、そんな物を作ったんだよ」


「ふはは。

 幾つになっても孫は可愛いものよ」


「ぶふう!」


 婆さん、実は親方の血縁だったのかよ。

 確かもう百七十歳くらいだったよな。

 これこそ、まさに一族の大御婆様だわ。


 いや親方はまだ五十歳なんだから、孫どころじゃなくて、もっとたくさん代を重ねているよね?


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