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92-4 家族の絆

 プリティドッグ・ベビー誕生の報は王都を駆け巡り、連日御祝いの品が届いてきた。

 むろん、それは俺宛ではなく『グランバースト公爵様方 プリティドッグ御一家様へ』という感じに届く。

 俺宛に『プリティドッグを寄越せ』的なものを送りつけたが最後、御家断絶になるのは目に見えているので。


 それらの品物をチェックする専門のゴーレムを置いて、完全に危険がないのを判断してからママに渡した。

 むろん、我が家にテロを仕掛けるようなアホな貴族は、この国にはもう一人もいやしないはずなのだが念のため。

 世の中は油断も隙もあったものではないのは、この世界へ来てからもしっかりと学んだ。


 ママも一通り部屋に飾ってから収納に入れていた。


「カワイイの~」

「そーれそれ。あははは」

「おいで~」


 ミニョン他の子犬達も、ケモミミを生やした小さな生き物の誕生は嬉しいのか、生まれたばかりの子犬達とじゃれまくっている。


 子犬はみんな早くも目が開いている。

 魔物の子は成長が早いな~。


 プリティドッグも、プリティなスキルを発揮するために可愛らしい子犬時代は長いんだけど、目が明いて走り出すまでの時間は短い。

 まるで馬の子か、サバンナのガゼルの赤ちゃんか何かのようだ。


 目の開いていない、本当の赤ちゃん姿の映像だけはしっかりと撮っておいた。

 こいつはうちの家宝にするかな。

 もちろんこの俺も、魔力を与えるついでに、きっちりと心行くまでもふっておいたのは言うまでもない。


 そして何故か、レミのところへ通っているケモミミハイムの爺が子犬達から懐かれていた!


「ほーれほれ、いや可愛いの~」


 かなり上手にじゃらしている。

 何か知らないが、生まれたばかりの子犬どもが爺に夢中だ。

 やはりケモミミの王は魔物の子(ケモミミ付き)から見ても一味違うのか!?


 そういやミニョン達も、あの爺の方をいつもチラチラと見ているんだよな。


「わーい、おじいちゃん。

 ワンちゃんがかわいいのー」


 まあ、一緒に子犬塗れになっているレミも喜んでいるようだからいいかな。


 美味しいおっぱいをいっぱい飲んだ後は、可愛いヌイグルミにむしゃぶりついたり、御気に入りのクッションの上に丸くなったりで、可愛い寝姿を披露してくれる。

 既にネット掲示板にも写真と動画は投稿済みで、多くのアースケモナーどもを魅了した。

 感想は世界中の犬好き達から届き、その数は一億件を遥かに超えた。


 もちろん、あの二人は泊り込みの態勢だ。


「ねえ王妃様ってば。

 政務の方はいいのですか?」


 いいはずがないのを承知の上で、敢えて聞いてみる。


 犬公爵には聞かない。

 どうせ家宰がなんとかしているのだろう。

 公爵本人は非常に優秀な人なのだから、きっと相応の人物を家宰として置いているはずなのだ。


「まあ、アルったら何を言っているの。

 可愛いプリティドッグの赤ちゃんが生まれたのよ?

 この私が王宮なんかにいるわけがないじゃないのよ」


 あ、この人ったら完全に言い切ったぞ。

 本当にいいのかなあ~。

 どうでもいいけど、うちに責が及ぶような事はやめてくださいね。

 離宮の真の主(シェルミナ様)から俺が怒られてしまうわ。


「あなた。

 御母さまにそんな事を言っても無駄よ~。

 これだけはねえ」


「いや、それは知っているんだがなあ。

 国王陛下が大変じゃないのか」


 そこはほら、一応は言うだけは言っておかないとさ。

 後で俺のせいにされても困るじゃないか。



「旦那様。

 あちこちから貴族の御使いの方が館を訪れておられますが、いかがいたしましょう」


 そんなやり取りの中で、シェルミナさんが報告に来た。

 それはまた面倒な奴らが来たな。

 まあそいつは予想出来ていた事態なのだが。

 対策は既に決まっているのだ。


「そうか。

 じゃあ『竜舎』の方に御通ししてくれ。

 ファル、一緒においで~」


 俺の無慈悲な宣告は客人達の元へ速やかに伝えられ衝撃をもたらしたようであったが、彼らも主人の命令でやってきているのだ。

 御通しされたからには従うしかない。

 あ、何か遺書を書いている奴がいるな。


「ああ、使者の皆様。

 御使い、大変に御苦労様です。

 今回のプリティドッグの件につきましては、受付はうちの番竜であるゴン太さんに一任いたしましたので、どうぞよろしく御願いいたします」


 俺は馬鹿丁寧に挨拶した上で、素敵な笑顔で優雅に一礼して、客達の前から転移魔法で御暇させていただいた。

 真面にやっていられるか、こんな事。

 というわけで、俺は物陰からのんびりとその一幕を見物していた。


 並みいる貴族の使いの前で、神聖エリオンたるファルが全長五十メートルのドラゴンの咆哮を通訳する。

 全員例外なくチビっていた。

 所詮は只の使用人には荷が勝ちる相手だった。

 こういう時にこそ冒険者を使えよ。


「プリティドッグの子犬達は俺の家族だ。

 家族は絶対に守る。

 それがグランバースト公爵家の『血の掟』だから」


 そして、ぐっと前屈みになり連中に顔を近づけ、にいっと歯を剥いて笑う巨大なドラゴンの前で、誰も逆らうことが出来なかった。

 こういう事って笑ってやった方が効果が高いよな。

 別に逆らってもいいのだが、その次に出てくるのがこの館の主である魔王という絶望。

 全員しおしおと重い足取りで自分の主の元へと帰っていったのだった。



 そしてゴン太さんの次の御仕事は、恐れを知らずドラゴンに向かってくる子犬達の子守だった。

 子犬どもは何の遠慮もなく、もうやりたい放題だ。

 まさに忍の一字だったが、ファルに通訳されて彼は言った。


「あのまま、あの管理者の下で迷宮にいるよりも、この方が絶対になんぼかマシだ」


 すると次の瞬間に俺の中で、アドミンの野郎のけたたましい哄笑が響き渡るのであった。 


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