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82-5 諜報犬ジョニー

「へへえ。

 これが独裁国家という奴なのかあ。

 この辺りはまだ来た事がないなあ」


 完全に物見遊山な(いぬ)がいた。

 ちゃっかりと人型体形でぶらぶらしている。


 ジョニーは何か面白そうだからついてきただけなのであって、本来ならば人間の戦争なんか端から興味はない。

 今回は園長先生が人材不足に悩んでいたので前足を上げただけだ。

 危なくなったら家族を連れて、速攻で安全な場所へ逃げるまでである。


 通りすがりに、あちこちを覗いてみたのだが、なんというかパッとしないにもほどがある。

 国中がこうなのか?


 なんだか家々は見窄(みすぼ)らしいし。

 村というか集落というか、それも柵一つない粗末なバラックのような家の集まり。


 小屋というよりも、木の棒を立ててボロや葉っぱなどで屋根を葺いたかのような完全に掘っ立て小屋だ。

 この比較的大国揃いのロス大陸では、こんな様子はジョニーも今まで見た事がない。

 ここは国境からそう離れていない過疎な地域ではあるのだが、それにしても貧しさが目立つ。


 出会う人も激しくボロい格好をしているので、自分も外観は調整して外見をそれに合わせておく。

 このあたりがプリティドッグの小器用なところだ。

 顔もいつもとは完全に変えてある。

 どうりでこの連中、長年見つからないわけだ。


 ジョニーはちょいとゴーレム馬を出してみて、次の街まで駆ける事にした。

 園長先生からは色々と持たされている。


 いつもは首輪になっていて、人型になると腕輪になる凝ったスタイルのアイテムボックスはジョニーの大の御気に入りだ。

 しっかりと首輪を付けられている事に気付かないのは、所詮どこまでいっても犬なのであったが。


 ゴーレムが使えない事が危惧されていたが、ここまでは使えているようだ。

 ジョニーは元々収納の能力を持っているのだが、今回はテストのためにアイテムボックスを試している。


 ゴーレム馬は速いので相当な速度が確保されているが、ゲルスは用心深いようで首都は国のほぼ真ん中にあり、こちら側の国境からはかなり遠い。


 海から攻められるのも嫌なので、首都は若干海寄りの真ん中あたりだ。

 それはアル・グランド王国時代の昔からそうであるものらしい。


 ゲルス共和国は、やや丸い感じの長方形をしたロス大陸の南西の角地にある国で、国土が横長の形になっている。

 その北方にあるエルトミアは、ゲルスの首都にやや近いせいもあって、より連中と親しい。


 バルミアの方がより中立的なので園長先生は拠点としてこちら側を選んだらしいが、その分首都は国境から遠い。

 撤収が必要になると、国境から遠い場所は不利だ。


 相手が相手だけに何があるのかわからない。

 ジョニーも、まずは国境に近い都市から様子を見る事にした。


 プリティドッグは用心深い生き物だ。

 その割には、こういう事にはやたらと首を突っ込みたがるのだが。

 そういう要素が色々と混ざった生き物なのだろう。


「プリティドッグに退屈の二文字は似合わないぜ」


 特に雄のプリティドッグには、妙に単独で放浪する習性がある。

 現在ジョニーがケモミミ園に居坐っているのは、単にあそこが一番面白そうだからである。


 待遇も悪くない。

 というか今までの中でダントツに一位だ。

 特に堂々と占領出来る、王様や王妃様の御膝の上とかは絶対に止められないのだ。

 王家にあの犬王妃や犬公爵のような人物がいるのもポイントの一つだ。


 国境には馬車がいたので、そこの荷台に乗り込んで国境を越えて潜り込んだ。

 人間が乗っていないかは調べられるが、小さな犬が隠れて乗っているかどうかなんて気にされない。


 国境を越えてからは再びゴーレム馬に乗っていたが、街が見えてきたので馬の速度を落とし用心深く進む。

 高速移動していたのもあって、魔物なんかの襲撃は受けていない。


 そこは国境から三十キロといったあたりか。

 門の前は、なかなかに厳しい雰囲気だ。

 頑丈な木の扉にゴツイ鉄の補強が縦横に厳重に入っている。


 他の国よりもかなり物々しい。

 帝国でさえ、ここまではやらない。

 ここの門はコスト度外視で作られているようだ。


「こりゃあ、気楽に出入りが出来そうにないな」


 しばらく気配を消して観察していたが、門のチェックで撥ねられた人間が兵士によって連れていかれるのが見えた。

 生憎な事に馬車はいないので、さっきの手は使えない。


「おっと、中々退屈しない感じのところだな。

 ならば、こうしてみるか」


 ジョニーはポンっと『犬』に化けた。

 もちろんプリティドッグではない只の犬である。

 なかなか変幻自在な能力だ。


 一応気配を消して、そーっと近寄っていくと、いきなり警報が鳴り響いた。

 思わず飛び上がるジョニー!


「なんだ、何者だ!」


 ドヤドヤと衛兵が飛び出してきた。


「ドッキーン!」


 だがジョニーは慌てずに、きちんと姿を見せながら座り込んで足で首をかきまくった。

 ちょうど本当に痒かったんで、都合がいいなと思いながら。


「なんだ犬か、はっはっは」

「犬じゃしょうがねえなあ」


(ふっ。チョロイな、こいつら)


 だが、次の瞬間には足を掴まれて宙吊りにされていた。

 普段ならば絶対にない醜態なのだが、今回は油断しまくっていたものか非常に珍しい事になってしまった。

 普通の犬を演じていたせいもある。


(な、なんだ~)


「やった。

 今日は久々に肉が食えるぜ!」


「前回は鼠肉だったよな」

「その前はミミズだぜ、ミミズ!」


(うわあ、冗談じゃねえぜー。

 こんな可愛い犬を捕まえて!)


 高笑いして油断しまくる男達。

 だが次の瞬間、ジョニーは筋力のみで体をグイっと持ち上げて、自分をぶら下げていた男に対してボクシングのような強烈ワンパンチを食らわせた。


「うおう!」


 仰け反って、思わずジョニーを取り落とす男。

 プリティドッグを只の犬だなんて思ったら大間違い。

 只の犬にも人間にも出来ない芸当を山ほど心得ているのだから。


 すかさず気配を消して街中へ脱兎の如く逃走するジョニー。


「おい、逃がすな!

 久し振りの肉が」


「畜生、どこへ行った、この犬め!」

「俺の肉はどこだ」


 まんまと逃走し終えたジョニーは独り言ちた。


「ふう、危なかったぜ。

 なんて飢えた奴らなんだ。

 それにしてもプリティドッグがいるのを見破る仕掛けがあるとはな。

 こんな技術を拡散されたら堪らないな。

 あの魔王に言って、戦争終結後には御禁制の技術にしてもらおう。

 これだけでも、遥々やって来た甲斐があったっていうもんだぜ」 


 今日はもう一部の書店様には、おっさんリメイク2巻が並び始めた頃合でありましょうか。


http://books.tugikuru.jp/detail_ossan.html


「ブルードラゴンの日常―ドラゴン? だってスローライフしたいんです―」


またタイトルを長くしてしまった。


https://ncode.syosetu.com/n9104ei/

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