77-7 新メニュー
御昼のランチには、わざわざオルストン家が店を開いて「オルストンエッグの実演販売」をやってくれて大人気だ。
アントニオから見れば、国王陛下に献上の意味合いがあるんだろうな。
「御疲れ、アントニオ」
「おお、アル聞いてくれ。
うちの子やっぱり天才だ!」
また始まったよ、こいつの親馬鹿自慢が。
まあ、レオンの場合は一概にそうは言えないのであるが。
何せ生まれてすぐに、この魔王をさえキリキリ舞いさせた強者の中の強者なのだ。
レオンは借り物競争で、なんと自力で珍獣プチドラゴンの赤ちゃんをゲットしてきた。
まあ子供のやる事なので、特別に失格扱いにはしなかった。
卵から生まれて、すぐあの子に懐いたらしい。
生まれたて!
一体どこから持ってきたんだ。
この子も超マッハで移動できるしなあ。
いいんだけど、そいつの親は⁇
懐いちゃったから養子にした?
とんでもねえ赤ん坊だ。
見かけはファルとそう変わらないし。
さすがに転移魔法は持たせていないが。
もっともファルだってレオンとそう変わらない感じの歳で、中身はもっと凄いのであったが。
「いやあ、本当にこの子は将来が楽しみだよ。
なあ、アル。
俺って親馬鹿かなあ」
「自覚があるんだな、安心したよ」
昔、俺もこいつにそんなような台詞を言われた記憶が、脳裏にほんのりと蘇る。
この子にはスマホを持たせてあるので、一人でお出掛けするのもOKらしい。
なんという放任主義か。
まあ、何かあっても親父が転移魔法で迎えに行けばいいだけなのだが。
もう、おっぱいもオシメも卒業した事だしなあ。
さすがは竜を狩る一族だけの事はあるな。
だが今回に限っては『狩る』の範疇に収まっていないのでは。
もう子供達がミミを揺らしてプチドラゴン・ベビーに殺到した。
「かわいい~」
「だっこするー」
「あたしがさきよー」
ついでにレオンも抱っこされまくりだった。
こいつもまだ生後十か月なんだけどね。
プチドラゴンは人間より少し小柄なくらいの愛嬌のあるドラゴンだ。
その子は、まだ生まれたてだから、とても小さい。
貴族でもこれを飼っている人は滅多にいないらしい。
うちにも一頭欲しいぜ。
このドラゴンは子守が上手いという評判だし。
ちなみに名前はプッチーらしい。
もう、うちの子供達にも大人気だ。
うちのドラゴンも子守くらいなら平然とこなすが、いかんせん図体がでかいわ。
プチドラゴンは、いつかゲットするための、もふもふ? 予定リストに入れておこう。
幼稚園には必需品なのかもしれん。
キッチンエリは新メニューで勝負だ。
今回の目玉は、極上ダーチョハムの柔らか薄パンサンドだ。
何、普通に日本式のサンドイッチだな。
ただし、コンビニやスーパーで売っているようなペラペラの薄いハムじゃなくて、西洋風にたっぷりと挟まれている。
パンもしっとりとしていて最高だ。
高級ホテルの馬鹿高い値段のサンドイッチなんかに使われている奴だな。
こいつに目がないエリーンが、さっと狩ってきたらしい。
ダーチョはダチョウに似た魔物で、肉はあっさりしていて非常に美味い。
専用ソースの開発にはエリーンも噛んでいて、相当駄目出しを出してエリを苦笑させたらしい。
脂身が殆どないため、少々腹の肉を気にする貴族にも好評で、最近は冒険者ギルドで捕獲依頼も多いとの事だ。
あれは雑食ですぐに数が増えるから、簡単には獲り尽くされないからいいのだけれども。
狩るのが凄く難しい魔物だしな。
エリーンも以前は狩るのに難儀したらしいが、俺が獲り方を指南して魔法武器を持たせ、腕輪に魔法もたっぷりと仕込んでやったので、好きな時に狩ってくるらしい。
これはうちのハム小屋(エリーンのDIY)でエリーンが作っている奴で、離宮の食卓にも上る。
そのエリーンの食にかける情熱には、ただただ恐れ入るとしか言い様がない。
食に関する限りは、こいつに不可能など存在しないようだ。
転移魔法があるから仕事の合間を縫って、いつでも狩場に行ってこれる。
ハイパワーなゴーレムを御伴に狩りへ行くので血抜き作業も完璧だ。
そして俺が翻訳して渡したハム作りのレシピを血眼になって読み漁り、ついにハム作りも究極を極めたのだ。
歌う事と食べる事、この二つがこいつにとって生きている証なのだろう。
そのうちに独立支援して、カラオケレストランでもやらせるか。
マリーに監修してもらえば料理にハズレはないだろう。
こいつは山本さんやエバンス爺さんとも気が合っているので料理指導もしてもらえるだろう。
本日はポールがキッチンエリの支店を出している。
今回は沖縄のサーターアンダギーに挑戦した。
いわゆる沖縄風の球状ドーナツだ。
こいつは俺の好物なので勧めてみたのだ。
「はーい、美味しいよー。
キッチンエリの新メニューだよー」
「おいしいのー」
例の如くに、メルとフェルドが客引きをやっている。
マリーも、もうすっかり御手伝いが板についてきたようだ。
売り子の衣装が、また新しくなった。
シンプルデザインの白い爽やか衣装に、いかにも秋らしい栗色カラーをあしらったスタンド売り子スタイルだ。
「いや、これは美味いな」
「なかなか、いけますな」
アドロスと王都アルバの各商業ギルドのギルマスが舌鼓を打っている。
新メニューは大人気で、商業ギルドでも普及を考えているようだ。
ついに沖縄メニューが異世界に誕生した。
同じく俺の好物である沖縄のソーキソバとかも登場させたいぜ。
まあその辺は、また山本さん頼みで。
豚肉の代わりにオーク肉を使って、オーキソバとかにしてみるのはどうだろう。
豆腐餻は、さすがにマニアック過ぎるだろうか。
あれは発酵食品なので、人によって激しく好みが別れる食い物だ。
俺は好物なんだけどね。
材料の一つである泡盛も持ってきてあるので、作れない事はないとは思うのだが、はたして紅麹があるかな。
あれは俺にしては発酵食品の中でも食える方なのだ。
缶入りで持ってくればよかったぜ。
通販なら買えたのに持ってなかったんだよね。
とりあえず豆腐餻は、日本へ帰れたら買う品物リストには並べておいた。
運動会バザーは今年も盛況のうちに終わったようだ。
競技の中身が、だいぶ運動会から外れてきている気もするが、まあいいだろう。
そのうち異世界オリンピックでもやるかな。




